15話
「むつはビール2本も持っていったわ…まさか、呑むつもりなのかしら?」
「まぁまぁ…」
片付けを終えたゆきのは、湯飲みを持って来て宏孝の隣に座った。あんなに怪我をしているのに、酒を呑むのはよくないとゆきのはこぼしていた。
「今日は大変だったんだ、むつも少しは呑みたいのかもしれないな。大目にみてやれ」
「宏孝さんは甘いのよ。だから、むつも言いたい事が言えないのよ」
「お、俺のせいか?まぁ確かに…でもなぁ…息子たちが手が離れた時にやってきたからか…どうにもなぁ」
「それは分からなくは無いわね。初めは可哀想な子だからと思っていたけど…」
「そうだな。可哀想な子ではあるが…強くなってきたな…あれなら、すぐるにも自慢が出来る」
「そうね。むつは…すぐるさんに少しでも会えたの?」
「あぁ、ちゃんと分かったみたいだったしな。そのうち、墓参りにも連れていかないとな」
「えぇ…でも今は身体を治させる事が先決だわ。女の子なのに傷が残ったら困るわ…それでも、西原さんは貰ってくれるかしら」
「おいおい…本当にむつの彼氏なのか?」
「まだ、みたいだったわ。あれよ、大学生の時にお付き合いしてたっていう先輩よ…むつも私と同じでまた同じ人を好きになるのかしら?それとも…」
「違う方を選んだとしたら…離縁の話をしに来るんだろうな。そんな時が来たら嫌だな」
「…そうね」
ゆきのは宏孝が呑んでいた焼酎の緑茶割りをこくっと呑んで、ほうっと息をついた。
「今夜は少し呑もうか?久しぶりに2人で」
宏孝がゆきのの手を包み込むように握ると、ゆきのはこくりと頷いた。




