1054/1084
14話
「…家に居たいかなって思うの…いい?」
首を傾げながらむつが言うと、父親はふうと息をついた。目尻にシワを寄せて微笑みながら頷くと、むつの頭をおざなりに撫でている。
「当たり前だろう、ずっと居なさい。うむ…嫁になんか行かなくていい。婿を取るのもありだからな。むつは、ずっとお父さんとお母さんの子供で居なさい」
「…うん」
むつが嬉しそうに笑うのを見ながら、冬四郎ははぁと溜め息を漏らしていた。京井にもはっきりと会話が聞こえていようで、くつくつと笑っている。
「むぅちゃんに敵う男は居ませんね」
「…全員甘いからいけないんですよ」
「宮前さんも例外無く、ですね」
「それも、そうですね…でも、良かった。むつが帰ってくるなら、私も一安心です」
「兄として、ですか?それとも…」
冬四郎は京井の方を見ると、ふっと笑っただけだった。そして、父親に頭を撫でられて照れているむつの元へと向かった。




