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14話
「さ、むつ…他に言いたい事は?今なら誰も居ないんだ。言いたい事は今のうち話してごらん」
むつは冬四郎をみらっと見た。そんなむつの視線に気付いた冬四郎は、むつに気を遣ってか京井の行ってしまった。この機会に、思い付いた言いたい事は言っておいた方がいい気がした。
「…お父さんは、1人でいいの。だから、すぐるさんって名前で言ったの…後ね…」
意を決して言ったむつは顔を上げた。すると、すぐ目の前にあった父親の顔には満面の笑みが浮かんでいて、こちらが照れ臭くなる。
「後は?」
「…まだ、結婚は考えられないの。酒井さんはいい人だし、これからもお付き合いしていきたいけど…あ、その…人としてのお付き合いね。だから結婚とかは…それで、その…もう少し…」
「もう少し?」




