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2話
「………」
手をあげているむつは、コーヒーをすすりながら、ひらひらと手を振るようにしている。それを見ながら、颯介も山上も何も言えないでいる。だが、先に我に返ったのは山上だった。
「…お前が見合いか?何でまた急に」
「分かんないけど。お父さんが知り合った人に、あたしの事を話したみたいで…相手の人が興味を持ってくれて…それで…」
「それで、見合いに発展って事か…どんな人なんだ?」
「写真ないの。名前は…酒井さん?社長知ってる?」
「はぁっ!?知るわけないだろ…」
「警察関係らしいの。しろにぃと歳は近いらしいんだけど、立場はかなり上なのかな?しろにぃも知らないって」
「…何だよ、キャリア組か」
「たぶん」
ふぅんっと山上は呟くと、コーヒーをすすった。拗ねたように唇を尖らせて、どことなく面白くないという顔をしていた。