1046/1084
14話
手のひらに乗っていたチャームも木箱も、跡形もなく消えると炎も消えていった。むつは後にほんの少し残った灰に、ふっと息を吹き掛けて飛ばしてしまうと、はぁと息をついた。
「…終わり」
誰に言うでもなくむつは呟いた。手のひらには何もないが、確かにあった物を見るように、むつは自分の手を見ていた。そうしていると、自分の視界がゆらゆらと揺れてきた事に気付いた。まるで、水の中で目を開けている時のようだった。
くっと唇を噛んだむつはどうする事も出来ず、空を仰いだりうつ向いたりした。だが、目に溜まってきている水分が減る事はない。
ぽたっと目元から涙が落ちると、むつはさらに唇をきつく噛んだ。そして、八つ当たりするかのように握りしめた手で、ばしっと地面を叩いた。もう1度地面を叩いたむつは、身体を起こす事なくそのままの体勢で、はぁと息をついた。




