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14話
熱風を頬に感じていると、見えはしないが、それでも誰かにしっかりと抱き締められている感じがした。暖かくて懐かしく、優しいく力強い。そんな抱擁にむつは目を閉じた。いつまでも続きはしない抱擁に、身も心も任せきっていた。
むつが目を開けるのを待っていたかのように、炎は花火のようにぱんっと弾けた。辺りを照らし、ぱらぱらと雪のように降る炎は、地面に落ちる前に消えていった。
「行っちゃった…」
はらはらと落ちてくる炎に触れようとしたが、その前に消えていった。だが、もしかしたら欠片でも触れる事があるかもと、むつは手を伸ばしたままだった。
「ん…?」
伸ばしたままの手のひらに、ことんっと何かが置かれた。それは大事な物を渡す時のように、とても慎重だった。




