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14話
「…お父さん?」
むつは最初から分かってたとでも、いうのか炎に向かって声をかけた。すると、炎は冬四郎に睨まれた時よりも激しくぶるぶると震えた。
「…ごめんなさい。何も出来なかった」
はぁと溜め息をつきながら、むつが言うと炎は本物の蛇のように頭を持ち上げて、ふるふると首を振っている。そして、さらにむつに近付くとぽっと勢いを取り戻すかのように燃え上がった。
「あの怨霊は…お父さんが跡形もなく消し去ったんだね。器として使われた人は、あたしが供養しておくから…そんな事しか出来ないけど」
再び深々と溜め息をつくと、にょろりとした炎はむつの膝に上ると、すりっとその身体を頬に押し付けた。めらめらと燃えているはずの炎だが、むつは熱いとも思わなかった。




