1036/1084
14話
地に足つく所まで引き上げられたむつは、腹に回されていた手をふりほどいて崖に近寄った。
「あ、こら待ちなさい!!」
「ばかっ‼むつ‼」
静止も聞かず、むつは身を乗り出して崖下を見た。だが、今度は落ちたくないようでぎりぎりまで、近寄ったりはしない。膝をついて、身を乗り出して下を見ていたむつは、あっと声をあげた。
ふわっとした暖かく、柔らかい風が下から吹き上がってきた。そして、それが止むとごおっと音を立てた風が吹き上げてきた。余程の強風だったのか、むつは引っくり返るようにして尻餅をついた。
「むつ…?」
急に尻餅をついたむつに駆け寄ってきた男は、何があったのかと聞こうとしたが、それは聞かずとも見て分かった。




