103/1084
2話
よろず屋の事務所の入っているビルに着いたむつは、寒そうに足早に事務所のドアを開けようと鍵を差し込んだ。だが、開いているようで回らなかった。
「おはよーございまーす」
むつが入っていくと、すでに颯介と山上が来ていた。2人の方が早いのは珍しく、むつはゆっくりし過ぎたかと壁掛けの時計に目を向けた。いつもよりは少し遅いが、まだ十分に早い。
「おはよう」
「よっ、昨日は寝れたか?」
「うん…大変だったからかな?疲れて寝て、朝までは起きなかったよ」
大変だったとむつは言いながらも、どこか嬉しそうに微笑んでいる。その表情を見て、颯介と山上は首を傾げている。ふふっと笑ったむつは、鞄とヘルメットを置いて上着を脱ぐと、キッチンでコーヒーをいれて戻ってきた。
「ねぇねぇ…」