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14話
「むぅちゃん…元に戻りましたね」
むつと火車の会話が聞こえている京井は、ほっとしたように息をついていた。酒井を抱き抱えている冬四郎も、良かったと呟いた。だが、酒井は依然として息も絶え絶えとしている。影響するものがなくなったからといって、すぐに回復するというわけでもないのだろう。
「酒井さんは…このままで大丈夫なんでしょうか?死んだりしたら…」
なんとなく困る、と冬四郎が言うと酒井は、しかめっ面をして見せた。喋るほどの気力はなくとも、表情は動かせるようだった。
「本体が傷付いたわけではありませんから…時間と共に元気を取り戻すかと思いますよ」
「…本体…?」
「酒井さんは…」
酒井が何者なのか話すか悩んだ京井は、むつに全てを話してからだと思い顔を上げた。




