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14話
妙な暖かさは、すっと引いて真冬の冷たい風が吹いてきた。むつの力が尽きたのか、それとも自分で抑え込んだのか。狐を焼き尽くそうと燃えていた炎も、いつの間にか消えていた。
「…むつ?」
しんと静まり返り、重圧のようにさえ感じた気配もすでに無かったかのように鳴りを潜めている。
「…ごめん」
無関心なようだったむつの目に、光が戻るかのように火車をしっかりと見た。それは、きちんと火車という存分を分かっての事だ。先程のように、ただ目に写していただけとは違う。
「ごめんね…」
「やっと、いつものむつに戻ったな」
「うん…火車がこんな役回りになるなんてね」
「僕だってしたかったわけじゃない」
「ん…酒井さんの事、大好きなんだね」
「うるさい」
むつが微笑みを浮かべると、火車はむつの手を離して照れ隠しするかのように、がりがりと頬をかいた。




