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14話
「むつ…」
火車は、狐に向けられているむつの手を掴んで下ろさせた。力は入っていなかったからか、むつの腕はすんなりと下ろされた。それと同時に、乱入してきた火車にむつは目を向けた。
「………」
ぞっとするような無機質な目は、火車という者を認識しているのか分からない。
「むつ、お前とその怨霊との因縁の決着に水を差すような事はしたくなかった。でもな、昔からの付き合いがあるのは、玉奥家とその怨霊だけじゃない。僕と酒井も付き合いが長い…その酒井が、今、お前のせいで死にかけてる。これ以上、力を使うのは止めてくれ。犬神だって、影響を受けてる…怨霊が消えるより先に、酒井が消える。僕には…僕はお前に協力すると言ったが、今は協力出来ない」
火車の真摯な言葉をむつは聞いているのかいないのか、火車をじっと見ているだけだった。だが、邪魔をされてからといって火車は何かしようとする気配もない。




