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14話
ころころと転がった狐は、地面がなくなる寸前の所で地面に爪を立てて何とか止まった。明るすぎる光を目の前で浴びたからか、ややふらついているが風に対しては身を低くして堪えている。
ようやく、その存在に気付いたとでも言いたげなむつは、風に耐えている狐を見た。そして、ゆっくりと腕を持ち上げて手のひらを狐の方に向けた。
妙な暖かさがあるというのに、冷気を浴びているかのように、ちりちりと肌が痛む。血まみれになり、土で汚れたむつは大きく息を吸い込むと、狐だけを見ていた。
向けられた手のひらから、炎が生まれたわけではない。だが、相変わらずの熱風はある。むつが能力を使い、炎が走っていく時に風が生まれる事はあっても、風だけがというのは、今までにはなかった。緊迫感と風の影響で誰もが身動き出来ない中、突如として生まれた炎があった。




