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14話
周りに心配されている事など、知ってか知らずかむつは顔にかかっている髪の毛をかきあげた。その動作はゆっくりというより、気だるそうだった。そして、そろっと辺りを見回すようにして首をめぐらせた。あちこちで、炎が揺らめいていて暖かいうえに明るい。
ちゃんと自分の意思はあるのだろうか。そんな不安を感じさせるほどに、むつはぼーっとしているように見える。
ぼんやりとしているようなむつは、おもむろに手を上げた。すると、ぱっと炎が小さくなった。だが、以前として消えそうな気配はない。
「…むつは敵にしたくないぞ」
「仲良くしていたいな」
火車が呟くと、酒井も頷いた。酒井はすでに、ぐったりとしているようで呼吸が荒くなっていた。炎が揺れるたびに酒井が弱っていくようで、火車はどうしようもない気持ちになっていた。




