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14話
あちこちで、ちろちろと炎が揺れている中、何も気にしていないかのようなむつは、ようやく立ち上がった。それと同時に、熱いくらいの風が吹いた。熱風に煽られるようにして、ちろちろと揺れたいた炎が、ごおっと音を立てて燃え上がった。夕方のように辺りが、オレンジ色の光に照らされて明るくなっている。
「僕の炎じゃないな…」
最初は火車が明かり用に灯した炎だったかもしれないが、すでに持ち主の手を離れている。
火車の手を離れた炎は、誰の影響を受けて大きくなっているのかは、一目瞭然だった。能力が使えなくなっているはずのむつの影響を受けて、むつの思うままに動いているのかもしれない。
「能力が戻ったのか?本当に…」
あれほど自分を役立たずだと言っていたはずのむつに、本当に能力が戻ったのか冬四郎には半信半疑だった。そもそも目の前で立っているのは、本当に自分の妹なのだろうか。それさえも疑ってしまいそうだった。




