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14話
気温が上がった気がするからか、ふわっと吹いてきた風もどこか優しく暖かい。穏やかな春のような感じさえした。だが、そう思うのは冬四郎だけだった。
「…っ!?」
風吹いてくると、火車は驚いたような声を上げた。いまだに、むつの姿を取っているからか、しかめっ面をしているのがよく分かる。そんな火車が手にしていた、辺りを照らす用の炎が身をよじるようにして揺らめいている。そして、何の突然にぼんっと燃え上がった。その炎が熱かったのか、火車は慌てて手から落とした。ぱたぱたと手を振って、飛んできた火の粉を払っている。
「…むつのやつ…恐ろしすぎるぞ」
忌々しいかのように呟いた火車は、むつの姿をとるのを止めて本来の姿へと戻っていた。




