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1話
マグカップを受け取り、それを机に置いたむつはようやくパーカーを脱いだ。ロッカーに片付けるのは面倒くさいのか、鞄と共に隣の空いている机に置くと、ふぅふぅしながらコーヒーをすすった。
「…何だ、また寝不足か?」
むつが眼鏡を外して、しょぼしょぼと目を擦るのをめざとく見付けた山上は、苦笑いを浮かべている。
「うーん…何か夜中に起きる回数多くって」
「寒いからか?」
「かなぁ?」
眼鏡を掛け直す樹にもならないのか、むつは机に眼鏡を置くと、マグカップを片手に立ち上がると、簡易キッチンに入っていった。ぶぅんっと重たげな音と共に換気扇が回り始めると、むつはタバコをくわえた。