表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ

 始まりの春には早苗を植える早乙女が点々とした緑に映え、何かと忙しい夏にはアブラゼミやらがせわしなく鳴き声を上げ、その夕方にはひぐらしが奏でる夏の風物詩があちこちから聞こえ、実りの秋には黄金色に色づき、頭を垂れた稲を刈り、閉塞の冬には日本海で大量の湿気を含んだ雪雲が枯れ果てた田に時には静かに、時には荒々しく降り積もる。そして終わりの春を迎え、始まりの春を迎える。

 過疎が深刻になりつつある山形県鶴岡市は四季折々の風景を楽しむことが出来る。

 若者が鶴岡から出ていき、大都市に住むようになり、その子供もそこの学校に通うようになる。残された家庭は数少ない教育機関に子供を通わせなければならない。しかしそれは保育園までで、幼稚園に上がればあとは中学校までは安泰といったところだ。

 学校の供給は充分だが、需要が停滞している。それは、学校の閉校を意味しており3年に1校はこの鶴岡市から消えている。合併などではなく、本当の消滅。この街から消されるのだ。

 ここ市立しりつ晴田せいでん高校もその例外ではなく、2年後に閉校することが市議会で議決された。田んぼのど真ん中に位置するこの高校の生徒数は3学年全て合わせて18人。今年入学して来る1年生の卒業をもって閉校となる。

 木造の平屋で昇降口を入ると目の前には職員室。そして左右に木板で出来た廊下が伸びており、その脇に教室が並んでいる。校舎の老朽化も進んでいることから閉校の判断は正しかった。

 校門の脇に生える1本の立派な桜の木は今まさに満開を迎え、見頃だ。

 そんな穏やかな春のある日。晴田高校最後の1年生の入学式が執り行われようとしていた。


 ──自分たちが最後の生徒になるとは知らずに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ