二人目の悪魔
「__見つけたぞゴラァ!」
どこかで聞いた声が響く。どこかで見たことがある人がそこにいる。
「……またお前か…」
人気が無いことに疑問を持っていたが納得がいった。このおっさんが人払いでもしていたのだろう。
「…下がってろ、バセット」
「でも…」
「いいから、下がっててくれ。」
「……分かりました。」
小声で話しすぐに解決してバセットは後ろに下がる。これで対等な一対一だ。
「…また挑むとか…正気か、おっさん?」
「……今の俺は無敵だ。あのお方の力を手に入れた今なら負ける気はしねぇ!」
おっさんの周りから黒いオーラが出ていた。
「あのお方…?それって…」
「__死ねぇっ!」
おっさんの攻撃は空を切ったが、その周囲が喰われた様に消えた。
「…なんの力をもらったんだ…」
「…アメミット…」
俺の独り言にバセットは忌々しく呟く。アメミットはエジプトの悪魔で、意味は貪り食うもの…だったはずだ。
「だから空間が消えたのか…」
「…アメミットは真実の羽よりも重かった死者の命を喰らうはずなのに…」
確かに伝承とは少し違った力を持っている。だが、敵対している以上倒さなければ倒されてしまう。
「…やるしかないよな…っ!」
とりあえず攻撃しないとどこが違うのかが分からない。その為におっさんに迫って回し蹴りをくらわせようとしたらおっさんは蹴りを片手で受け止めた。
「甘いぞ小僧っ!」
「……ぐっ…」
蹴りを受け止めると地面に俺を叩きつけた。体から血液が抜けていくのがわかる。凄く痛い。まだ死にたくない。好きな人を守りたい。力が欲しい。誰にも負けない力が欲しい。と思っているとバセットが近寄ってきた。
「……神様。この人に救いの手を差し伸べてください。私はどうなっても構いません…だから、どうかっ……」
バセットは泣いて懇願していた。…また、俺はこの娘を助けられないのか……けど、俺には一個道がある。かなりリスクのある賭けだがやってみるしかないだろう。
「……オールヒール…」
そう言うと俺の体が淡く光り、傷が癒えていった。だが血の量はあまり増えないのか貧血気味で頭がフラつくが、その状態でバセットに近寄り肩に触れる。
「……バセット…力を借りるぞ。」
「えっ…あ…わかりました…」
「__ドレイン」
そう呟くとバセットの周りが青く光り、俺の体が赤く光る。
「…力を借りるぜ、バステト様……っ」
「…期待してるにゃ、人間。」
短い会話だけ済ませると俺の体が少しずつ変化してい?く。体毛が濃くなり、獣の耳が生え、猫というよりは狼に近い姿になった。
「さぁ、行くぞおっさん!」
「……神の力を吸収した!?だが…負けんっ!」
体が軽い。さっきとは比べものにならないくらい力とスピードが上がっている。勢いよくおっさんに迫るとおっさんはビックリしたのか全力で跳んで逃げようとした。
「逃がすか…ッ!」
俺も負けじと脚に力を入れて跳ぶとおっさんより高く跳んだ。そのままかかと落としをするとおっさんは地面にめり込むように落ちていった。
「ぐっ…負けるかぁっ!!」
「…甘いよ、おっさん。」
我を忘れたのか、突進してくるおっさんの鳩尾を膝で蹴ると反動もあって壊れる勢いで建物に激突した。
「とどめだ、おっさん!」
「__そういつわけには行かないんだ。」
おっさんに向かって走ろうとした直後、俺の目の前に大きな黒い門が現れた。門が開くとおっさんを吸い込んでいき、そして消えた。
「__やあ、また会ったね。煌神 優人君?」
「……なんで、俺の名前を…」
門と共に突然現れた青年は蛇がモチーフであろうペンダントをつけていた。
『…あいつは……アポピス…!?』
バステトが驚きを隠せないように叫ぶ。アポピスと言えば闇と混沌の象徴で、大蛇がモチーフだったはずだ。
「…僕は君のことを知っている。主人公みたいに自己犠牲で他人を救えるところとか、ね。」
……こいつは誰なんだ。俺のことを知っているらしいが俺は全く思い出せない。だが、俺がここに来る前の記憶は思い出してきた……俺は誰かを助けたかった。強くなって、守れるようになりたかったのを覚えている。
「……今度は、ちゃんと助けてね。」
それだけを言うとアポピスは門と共に消えた。俺はリリースと呟くとバステトの力はバセットに戻っていった。
「…おかえり…で悪いけどさ。改めて、聞いていいか?」
「…はい。」
アポピスの騒動が終わり、俺はバセットに力を返すと、少し気が早いと思っても想いを伝えることにした。
「…俺は、バセットが好きだ。」
「……私も、ユートさんが好きです。」
……答えが聞けた安心からか、俺の意識はまた暗闇に沈んでいった__
たいっっっっへん申し訳ありません!
久しぶりの更新です、ゆいでございます。
いやー…久しぶりだぁ(白目)色々と忙しくてここまで溜めてしまいすいませんでした。
ってわけで少しは区切りついたかな。主人公の名前を即興で決めたり、神様の力を取り入れるのは如何だろうと考えたりしましたが、無事に出せました。
これからは少しずつ更新していくので楽しみにお待ちください。
それでは、次話で会いましょう。