女神の再臨と邪魔の襲来
__バセットを連れて酒場を出た俺は明るいのに人気が少ないという異様な空間に歩いていった。
「…なぁ、バセット」
「ど、どうしたんですか?」
途中で手を離して振り向くと、少し怯えたような目で…真実を告げられるんじゃないか、という目で見つめてきていた。
「…お前は…ホントは何者なんだ…?」
「…私は、猫族ということを隠してこの街で生きてきました…」
バセットは渋々という感じで話し始めた。
「私は猫族の中でも特殊な能力を持っています。」
「特殊な能力…?」
予想通りだが、理解が出来なくて首をかしげているが、バセットは変わらず続けた。
「…私は…女神バステトの力を授かっているんです…」
「…やっぱりか…」
そう呟くと、バセットはびっくりした顔をしていた。多分記憶を引き継げないのだろう。
「……特定の条件下か突然来ない限りは大丈夫なんですけどね…」
「…俺が、バセットを助けるよ」
「…無理ですよ」
目の前で辛そうにするバセットを助けたいと思ったのだが、無理だ、と言われてしまった。
「…わからないじゃないか。」
「わかりますよ…私にだってどうしようもないんです…から…」
そう言うとバセットは倒れてしまったが、すぐに起き上がってきた。だが、雰囲気は明らかにバセットとは違っていた。
「……女神、バステト…」
「…覚えていたのかにゃ、人間」
バステトは警戒心をむき出しにして会話をしている。迂闊なことをすれば殺られると思ったが、それでも思いは変わらなかった。
「……俺は、お前を助けたい。」
「…人間が神を助けるにゃんて、おかしなことを言うにゃ。」
「確かに変かもしれないな…けど、俺は本気だ。」
そう言ってバステトに近づいていく。バステトは近づくなという殺意と何をするんだという恐怖の間に居るような感じだった。
「…俺は、お前が…バステトが…バセットが好きなんだ。」
「冗談を抜かすにゃ、人間…」
「俺は本気……だっ…」
前と同じようにバステトに回し蹴りをされたが、体を使って受け止めた。
「にゃんで…ホントなら避けられたのに…」
「なぁ……バステト…」
手を緩めていたのだろう、驚愕しているバステトの足を下げさせ、顔を近づけていく。
「にゃ…やめっ…」
照れてるのか、顔を赤くしているバステトにおもむろにキスをした。するとさっきまでの雰囲気は消え、いつものバセットに戻ったような気がした。
「あ、あああああああの…お客様…!?」
目が覚めたらキスされている。そりゃ処理できなくて動揺するだろうな、と苦笑いをしていたらバセットは涙目になっていた。
「…なぁ、バセット…」
「…は、はい…」
お互いに緊張した状態のまま時間がゆっくり過ぎていく。
「…お、俺は…バセットが好きだ。」
「……わ、私も__」
「__見つけたぞゴラァ!」
俺の告白の返答は、昼間見た山賊よりも馬鹿な奴の声によってかき消されてしまった__