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お薬って高い

馬車に乗車ナウ


あの時、俺の声に気付いて馬車から顔を出した女性ーーマイナ・O・ルデリアと名乗ったおばあさんに、立ちっぱなしも辛いでしょ? という優しい一言をいただいて俺とリューも乗せてもらうことになった。


見知らぬ相手に不用心すぎやしないか疑問に思ったのだが、マイナさん曰く、職業柄、人を見る目はあるとのこと。俺も一度言ってみたいものだ。


「なるほど、魔物に、ですか」


「ええ。追い払ったのはいいのだけれど、その時に手綱を切られて馬が逃げたのよ。仕方ないから御者さんに街まで馬を取りに行ってもらってるの」


何故こんなところでこのような状況に陥っているのか、という質問に対して、マイナさんは魔物に襲われたと答えた。

何でもマイナさん、所用で出掛けていたそうなのだが、運悪くその帰り道で事が起こったらしい。

肉食の魔物だったらしく、突然の襲撃に馬が大興奮。マイナさんが撃退したものの、不幸にも、魔物の爪が手綱を断ち切ってしまったとのこと。手綱が切られると同時に馬が逃げ出し、馬がいないと馬車が動かないため御者の人が代わりの馬を街へ借りに行ったところで、俺達と出会った、と。


「色々と聞きたいんですが、何で一人なんですか? 護衛とか付ければいいような気も……。それに、ここで一人で待つのも危ないような気が……」


「あら? ふふ、こんな老婆を心配してくれてありがとうね。でも心配はないわよ? こんな年寄りでも、実力は確かだもの」


上品に微笑む姿は、もう上流階級の人のそれだ。言い方は悪いが、どうやら俺は当たりを引いたようだった。


そして本人曰く実力もある、と。腕っぷしが強そうに見えないため、後衛職だと思うが、ステイタスの数字というのは決して見た目に表れない。

100を越えればすごいという世界で、俺は普通に100を越えているのだが、見た目がゴリマッチョに変化したわけではない。元の体が引き締まったように感じるだけだった。

リューもそうなのだろう。てか、ゴリゴリの幼女とか想像したくありません。


「でも少し驚いたわ。私の名前を聞いても態度を変えない人って初めてよ」


「あー、すいません。やっぱ不味いですよね……」


「構わないわよ。こうやって話をするのも新鮮だもの」


名前にミドルネームが入っているのを聞くに、やっぱり貴族。それも、結構高い地位の人っぽい。

アルファベットとは言わないが、どうやらミドルネームのこの文字は称号として扱われているようだ。


ちなみに、こっそりとリューに聞いたところ、このディザスタ王国では、Aは王族、Bはその血縁者。そして、後のC~Zが古参貴族と言われ、その他五十家以上の新興貴族があるらしい。

名前にミドルネームが入っているため、聞けば直ぐに分かるとのこと。


「そう言ってくれると、幸いです……」


「ええ。ところで、ウェルディさんは街へ?」


「え? あ、はい。この先のトルネの街に行こうかと」


あら、そうなの、と笑うマイナさんは 私もそこは通るつもりよ、と続けた。


「よかったら、一緒に乗っていてもいいわよ?」


「いや、そこまでお世話になるのは……」


「構わないわよ。それに、こんな小さな子を街まで歩かせるなんて、私はどうかと思うわよ?」


小さい、と言われて隣の席でリューがむっ、としかめっ面になった。

まあでも、その反応は仕方ないものだ。他人から見れば、リューの姿は幼女のそれだ。見た目年齢十歳いくかいかないかの女の子が歩きで街まで行けるのかと言われれば、俺でも無理かもと思う。

……でもリューって、正体は龍なんだものなぁ



「だってよ。リュー、お前はどうする?」


「うむ、ある……オキナが良いならよいぞ? 妾は従うのみじゃ」


ちなみに、 俺たちの設定は血の繋がっていない兄妹ということになっている。出身はアズマ神国というディザスタ王国の東の海を越えたところにある国ということにした。

何でも、時代でいうと昔の江戸みたいな感じの国らしい。それに、他国の出身ということなら、色々知らないことがあっても仕方ないと思ってくれるかもしれないからだ。


俺を主と呼ぶことを禁止しているのは、そういった設定を守るためであり、そして同時に、リューが召喚獣だとバレないようにするためのものだ。頭の角は隠しようがないが……まぁ、色々あるんだと匂わせておけばそこまで突っ込んで聞いてくるような人ではないだろう。


まあそんなわけで、ここは兄らしい行動を取るべきだろう。


「それではマイナさん。ご迷惑かもしれませんが、お世話になります」


「ええ。私も話し相手ができて嬉しいわ」



暫くすると、馬を連れた御者さんが戻ってきた。

初めは、俺のことを見て訝しげな目をしていたが、そこをマイナさんが説得。街まで乗せていきますよ、という言葉に素直に頷いていた。

やがて、ゴトリと揺れて馬車が走り出す。昔の馬車はサスペンションなんか付いていないため尻が痛くなるかと思ったが、それほど揺れは酷くなかった。果たして、これが異世界仕様なのか、それとも、マイナさんがいい馬車を持っているだけなのか……。個人的には後者に一票。


「ウェルディさんは街へは何を?」


「ええ、まぁ仕事探しですね。あいにく、一文無しでして」


「じゃな」


そう、俺が仕事を求めるのにはこれも理由のひとつだ。

『ファンタジア・オンライン』には通貨も存在していたが、こちらではそれが全く使えない。というか、全てなくなっていたのだ。

そのため、稼がねばならない。それも俺を含めた五食分。いや、ララ達は三匹で一つだから七食分。……本当に、頭がいたくなってくる。


まして、リュー達の存在が現実となってしまった今、一食の消費量がどうなるのか……恐ろしいにもほどがある。あいつら、ゲームでも半端な量食ってなかったもんな……


「仕事?」


「はい、仕事です。どっかで雇ってもらえないかな、と。まあ無理ならポーションでも作って売りますよ。これでも、薬草とかの知識とかポーションの作成には自信ありますしね」


一応、定職を夢見てはいるが、自営業も視野に入れている。店の管理やらなんやらで色々とめんどくさそうなことはありそうだが、遣り甲斐とかはあるかもしれない。利益がそのまま懐にっていうのは魅力だよな。大変そうだけど。


「惜しいのぉ、あ……オキナ程なら冒険者でも楽々じゃろうてからに」


「まだ言ってんのかよ。命かけてまでやることじゃねえ」


「夢がないの」


「失礼な。現実的だと言え」


「ふふ、二人とも仲がいいのね。」


「当然じゃ」


偉そうな言葉の割に、顔は嬉しそうな表情を浮かべていた。この反応は俺としても嬉しいものだ。


「まあそんなわけで、街へいったら職探しです。衣食住はしっかり確保してやらなきゃですから。ただ、アズマ出身ですので、簡単には雇ってもらえるかどうか……」


要は、コネもツテもないので助けてくれるとありがたい、ということを匂わせているのだ。

見たところ、マイナさんはかなりの地位を持つ御方。とすれば、どこかいい職場を紹介してくれるかもしれない!


「そうねぇ……。そういえば、薬学はお得意かしら?」


「……へ? あ、はい! 大丈夫です!」


「なら、これやってみてちょうだい」


そういって何処からか取り出してきた紙を俺に手渡したマイナさん。

ほう、この世界には紙があるのか、と感心しながらそれを受け取った俺はそのままその内容に目を落とし、少し目を見張った。興味深そうに隣からリューも覗き込んでいた。


少し茶色っぽい紙だが、それは技術的なものだろう。だが、別に紙がどうこうということではない。その中身だ。


「……テスト?」


「ええ。薬学のね。解いてみてくれないかしら?」


ははぁん。なるほど、読めた。

どうやら彼女は、俺の知識が本物かどうか確かめたいのだ。そして、それが証明された際には、ポーションや薬草関係の仕事を紹介してくれる、ということなのだろう。

そして、点がよければ良いほど、いいところを紹介してくれるということだな。


「分かりました。なら、全力で解かせてもらいます!」


俄然やる気が湧いてきた。

受け取った羽ペンとインクをみて、こっちはまだこれか、と思いつつもオキペディアを駆使して問いを進めていく。


チートというなかれ。自分のもてる全てを使っているだけのこと!


馬車が時おり揺れるため、少し書きづらい環境ではあったが、さして問題ではない。


それから三十分程、俺はそのテストに没頭し続けていた。








「これは……」


「いや~、なかなか解き応えのある問題でした。まさか、問題の方にも間違いを入れているとは」


ところどころ、問題文の方が間違っていることがあったり、大変効率の悪いやり方を例にしていたりと、思うところが多々あったが、その度に線引いて直したりしていた。

普通なら引っ掛かるかもだが、就職がかかっているこの状況で手を抜くことは一切しない。下手すりゃ、ここで人生が決まるかもなのだから。



「あの、ウェルディさん。なの問題は……」


「ん? ああ、この草、葉の部分はいいんですけど、茎の部分には毒があるんですよ。一本分とかなら問題はないんですが、摂取しすぎると腹下すんです」


「……聞いたことないのだけれど」


「あれ? そうなんですか?」


答案を凝視したまま動かないマイナさんの様子を見て参ったなぁと俺は頭をかいた。


ただオキペディアのことをそのまま使っているだけなのだが……もしかして、俺ミスった?


「なぁ、リュー。これもしかしてマズイ?」


「分からん。ただ言えるのは、主がこちらでは知られていないことを知っているということがバレたということじゃろ。と言うても、薬草知識くらいじゃが。果たして、凶と出るか吉と出るか」


「おいおい、怖いこというなって」


たが、少し迂闊だったかもしれない。

定職目前で冷静さを欠いていたということもあるが、調子にのり過ぎたな……問題は書き換える必要はなかったのだろう。


てか、あれがこちらでの一般常識、と。


なんとも、レベルがひくいな。



「……ふぅ、そうね……」


ふと、解答から視線を外したマイナさんはその目に俺を捉えた。

まるで俺を見定めるような、そんな目だ。


「ウェルディさん。提案があるのだけれど」


「な、何でしょうか?」


思わず声が上擦ってしまう。


「あなた……教師なんて興味はないかしら?」


「……はい?」


「ルデリア様、トルネに到着いたしました」


そんな俺の間抜けな声と、御者さんの声が見事に一致するのだった。




どうも、ニシュラ和尚です。


今日は久しぶりに皮膚科へ行って参りました。

で、サブタイトルですね。


飲み薬を3ヶ月分頼んだんですが、持ってきていた金額ギリギリだったことに驚きました。

もちろん、金は親からのものですが、薬代を聞いた親も驚いていました。


てか、飲み薬が高いのだよ!



まぁ、もう五年以上お世話になっている優しいお医者様なのであまりいいませんが。

そこの人と出身高校同じということには驚きましたけどね、当時のニシュラ。


さて、もう少しで学園ですかね。作者としても早く書きたい気持ちですが、如何せん、話の進みが遅いような気がする。


そして、リュー以外の召喚獣はいつ出てきてくれるのやら……

本当なら、今回出てきてもよかったんですが、設定の都合上脚下に。


早く、早くモフモフをだしたい!


そんなわけで、次回も頑張って行こーと思います!

あと、ブクマ、感謝です!

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