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ラーメン食べたい。でも、金がない。

「ぬおぉおおおぉぉ!?!?」


「これ、主よ。情けない姿なんぞ晒すでない」


「俺の上に乗っかって、余裕かましてる奴に言われたくねぇよ!!」


「……はぁ、そんなに慌てずとも、向かい打てばいいだけの話じゃろうて」


「ガルァァァァァァァァァァ!!!」


断言しよう、こいつは龍である以前に鬼だ。 間違いない、俺がそう確信した!!


森から出ようとしたのも束の間、いきなり行く手を阻むようにして現れたのは体長三メートルはあるんじゃないかと思うほどの熊だった。


いや、正確には違う。


俺の知っている熊は頭に角なんざ生えていない!!


「だから、異世界じゃと言っておるというのに」


そしてリューを抱えての逃避行中。


「無理無理無理無理!! あんなの相手にして勝てるわけねぇだろ!」


「大丈夫じゃて。今の主なら、拳一つで一発じゃ」


「後衛職に肉弾戦を求めてんじゃねぇよ!! てか、お前もさっきみたいな水の槍とか使えよ!」


「えー、めんどくさいのじゃ」


「なんで!? 俺ピンチだよ!? 主が助けを求めてるんだよ!?」


助けるどころか、なんか俺に抱きついて嬉しそうに顔を埋めているリュー。なにそれ可愛い。今こんな状況じゃなかったなら素直にそう言ってたね!


クソッタレと思いつつも背後から追いかけてきている森の熊さん(角つき)の姿をチラリと確認。

見れば、俺の後ろ五メートル位のところで追走してきている熊が涎やらなんやらを撒き散らし、必死の形相を浮かべていた。


……って、必死の形相?


「な、なあリュー。何であの熊、あんなに必死なの?」


「だから言うとるじゃろ。今の主なら一発じゃと」


仕方のない主じゃ、とリューは小さくため息をついた。


「いや、だって普通に考えたらそうだろ? いくらゲームの時のステイタスだからって、俺は後衛職だ。あんな見た目熊なやつに肉弾戦で勝てるとは思わないんだが……」


「はぁ~、やれやれじゃ。疑り深いのはいいんじゃが、もう少し、妾を信じてくれてもいいじゃろうて」


今度は深いため息をついたリュー。

せっかく主の匂いを堪能しておったのに、と訳の分からない言葉を呟くと俺の首に回していた手を外して軽く後方へ振った。


直後、浮遊する氷柱が出現。その切っ先を追いかけてくる熊に向けると、弾丸のごとく飛んでいった。


「グギァッ!?!?」


後方で氷柱が何かに直撃する音と、熊の短い鳴き声が響く。


「やったのか!?」


「……主よ。あまりその手の発言は不用意にせん方がいいぞ。まあもう大丈夫じゃろうが」


その言葉を聞いて、俺は走る速度を落とし、そのまま後ろを振り向いた。

約十メートル程離れた場所で横倒れになっている森の熊さん(角つき)。近寄ってみるとかなりの迫力だ。もう死んでいるため、目は開き、舌がだらしなく出ているその様子は少し気持ち悪いと感じてしまう。


「うっわ、この角やべぇぞ。かなり鋭い」


額の部分から突き出たように生える角は長さ二十センチ程だろうか。こんなんで刺されたらひとたまりもない。

よく見れば、その角の生え際から少しずれた場所に穴があった。多分、ここにリューが放った氷柱が命中したのだろう。


「ほれ、何をしげしげと見ておるのじゃ。さっさとせぬか」


「は? するって何を?」


「『開示』に決まっておるじゃろ。そのためにわざわざ妾が倒してやったのだからな。それを見れば、主も自分の強さを理解するじゃろ」


俺の隣で、ほれほれと催促するリューの言う通りに、ステイタスの閲覧を始める。確か、触れないとダメなんだよな?

……これに?


「……『開示』」


流石にこれに触れるのは少し躊躇われるため、指先で触れる程度に留めておく。





ーーーー (4)


ワイルドホーン



HP 0/240


MP 0/8


STR 38


VIT 36


AGE 34


INT 3


DEX 18


LUC 9


スキル 怪力Ⅱ


状態 死体





「弱ぇぇ!?」


「じゃから言っとるじゃろうに」


森の熊さん(角つき)のステイタスを見た俺は思わずその雑魚同然の値を見て叫んでしまった。

嘘だろおい、見た目がこれでステイタスがこれとか割りに合わねえぞ!?


まさに見かけ倒しの内容無し。これじゃ壁にかいた龍みたいなものだ。まさかこんなの相手にあれだけびびっていたとは……


「何でこんなことになってんだ?」


「いや、この世界で言えば、妾達のステイタスの方がおかしいみたいじゃ。なんせ、一つの項目でも100を越えること自体がすごいそうじゃからの」


神にもらったとかいう知識で、こちらの常識を教えてくれるリュー先生。

だが、これはあまりにもひどい。『ファンタジア・オンライン』で言えば、まだゲーム初めてすぐの前衛職くらいのステイタスだ。

システム上、俺が前に出て戦うことはできないが、もし、剣やらの近接武器を装備できていたなら、俺でも勝てるレベルだ。


「100越えたらすごいって……それはそれでどうなんだよ……」


「まあ気にしても仕方ないじゃろ。なんせ、こちらにはステイタスなんぞの概念はないそうじゃし。普通は見えんからの」


「あー、常識として受け止めるしかねえわけか」


にしても、その理屈で言えば今の俺でも十分前衛として機能するって意味になる。

剣と魔法のファンタジー世界になってしまった今、何か一つでも自衛の手段を持っておくべきだろうか。


はたして、俺に武器が使えるのかね……


「まあともあれ、これで分かったじゃろ。今の主に勝てる者なんぞそうそうおらん」


「……ま、それでいいならいいんだけどな。こちらとしても、強いのはありがたい」


「本当にの。妾達が強くても、主が殺られてしまえば終わりじゃし」


「妾達、ねえ。他の皆も呼び出せるんだよな?」


ローブの懐にしまってある本に視線をやる。

紋は確認できているため、問題なく呼び出せるとは思うのだが、いざというときに、実は無理でした! 何てことになっては情けないにもほどがある。


「安心してよいぞ。あやつらも呼ばれればちゃんと出てくるのじゃ。というよりも、早く触れ合えるようになった主に会いたくてうずうずしとるみたいだからの」


「触れ合えるようになったって……てこたは、リュー達はゲームの召喚獣だった時のことを覚えているのか?」


「まあの。こちらに来る際に、全てを知った形ではあるが……。よもや、妾達が創作物だったとは思わなかったの」


話を聞くに、どうやらリュー達はゲームの時のことを覚えている、というか、こちらに来た際に思い出したようだ。

それも、出会って仲間になってから今までのことを、だ。

で、その時の主、つまり俺がキャラとして使っていたウェルディは俺がリュー達と過ごすために作られた仮の姿、という認識度あるらしい。まぁ、間違いではないのだけれど。


「そっか、皆、俺に会いたいのか」


「龍化形態の妾じゃと無理じゃったが……この姿ならば魔力の消費は半分ほどじゃ。あやつら全員を呼んでも魔力は大丈夫じょよ?」


魔法使いなどの職業とは違い、召喚師の魔力の使い方は少し変わっている。

何か魔法を使う度に魔力を消費し、その規模や威力によって消費量の変わる魔法使い。それに対して、召喚師は召喚獣一体一体につき、呼び出すための魔力は決まった分だけ消費されるのだ。

そして、呼び出す召喚獣が強ければ強いほど、消費する魔力も多くなる。


リューを例としてあげるなら、龍神であるリューを召喚するために必要なMPは50000と決まっている。リューを召喚すれば、俺の残りのMPは28000となり、このMP内で収まるなら、他にも召喚獣を召喚できるようになっているのだ。


ステイタスは弱くなるが、それでもこの世界じゃ十分すぎるほどの強さを持つリューだ。消費が半分になるのはありがたい。


「会いたいのは俺も山々なんだけどな。流石にこんな山の中で感動の再開ってのもな。やるなら、もっとゆっくりできるところでしたい」


「あと、人目につかぬところで、じゃな。流石にダーちゃんとケーくんは目立ちすぎるしの」


「……ああ、ダンディーとケファラスね」


一瞬誰のことを言ったのか分からなかったが、直ぐに俺の召喚獣のことだと思い当たった。

この世界じゃどんな扱いなのかは知らないが、初見だと怯えられるかもだしな。


「ま、何はともあれまずは街だな。流石に野宿するのは勘弁だし。できれば、ベッドで寝たい」


「なら、森から出ることが先決じゃな。まあ、もうほとんど出たも同然じゃが……」


「え?」


リューが視線をやった方を見ると、木々の隙間から道らしきものが見えた。獣道ではない、ちゃんと整備されている道。

どうやら、先程のワイルドホーンなる熊とのおいかけっこで近くまで来ていたようだ。


「幸先がよいな」


「……これも、このゴーグル様々なのかねぇ」


頭に装着されているゴーグルに手をやってそっと叩いてみた。

俺が課金ガチャで当てた超レアアイテム、『超運のゴーグル』。その効果は装備者のLUCを+100というとんでもアイテムだ。

魔物と契約できるかどうかはLUC値の高さに左右されるため、俺がリューと契約できたのはこいつのお陰といっても過言ではない。


ともあれ、俺とリューの二人は共に森からの脱出に成功。

先程の逃走劇の際にボックスにしまっていたサモンスタッフをもう一度取り出した。


「リュー。ここがどこか、とかいう知識も入ってるのか?」


「おおまかに、じゃがの、妾達がいるのはディザスタ王国とかいう国の東の方じゃ」


どうやら、簡易版グー◯ルマップが頭の中で展開されているようだ。一家に一人リューが欲しいねこりゃ。まさに動くグー◯ル先生。


「東の方とかは別にいいんだがな。これ、右と左どっちに行けば街に近いんだ?」


まだ陽は高いが、できるだけ早く街に着いておきたい。ギリギリでなんと、途中でトラブったらそれでもうアウトだ。


「そうじゃのぉ……詳しくは曖昧じゃが、恐らくこっちじゃろ。トルネ、とかいう街があるようじゃ」


「よし、なら行こうか。……ところで、リューは本に戻らないのか」


「あのような窮屈なところ、あまり居たいとは思わんでな」


ほれ、行くぞ、右に歩を進めるリュー。

まぁ、嫌なら無理強いはしないんだけど、と小さく呟いた俺はその小さな背中の後を追って、少し小走りになる。


全力とか出されたら、俺、おいてけぼりになるしな







どうも、ニシュラ和尚でございます。


少し寒くなってきておりまして、ニシュラはここらで温かいラーメンを食べたい気分でございます。

……ええ、気分だけです。実際は食べられません。


何故って? 金がねぇんだよ!


実は、家の都合で余分な金は持たせてもらえないのです。そのため、目の前で友人がうまそうに買ってきたラーメンを啜っている様子をただ見ることしかできない。

ほんと、腹が減るのを耐えるばかりで辛いのです。


ちなみに、食べにいけないのはニシュラ達は塾にいるため。あまり離れることができないのですよ。


塾といえば、何やらもう冬期講習の予定を出せと催促されております。この間まで夏休みだったのにとても早い。予定って、二月までのやつですやん。


どの講座とるとか、どれくらいとるとか早すぎるくらいなんですが、まぁ、早い方がいいんでしょうね。オキナさん曰く。


まぁ、ともあれ、今回でやっと森を出てくれましたね。

次回は、この物語のキーであろう御方を登場させる()()でございます。

他の召喚獣も出てくると思うんで、楽しんでいただけると幸いです。





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