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風邪には気を付けて

今週二回目! 先週の分は取り返したぜ!

「んじゃ、おっさん。ちょっくら行ってくるわ」


「おう! 頑張ってこいよ!」


ポーションを売りに行った二日後の朝。俺はリューを連れて宿を出る。

本日より、(臨時ではあるが)学園の教師として働くことになっているのだ。


マイナさんとの約束の時間は七時。それまでにまだ三十分程時間があるから大丈夫だろう。


「でも本当に大丈夫なのか? ここからだとオリブ学園まで一時間はかかるぞ?」


「大丈夫大丈夫。あっという間に着く方法があるしな」


「そうか? まぁ問題ないなら別にいいが……兎に角、気を付けろよ?」


「おっさんよ、安心せい。妾がついておる」


俺のとなりでムフー、と胸を張るリュー。そんな様子を見て、おっさんはハハハ、と苦笑を浮かべると、今度は俺にソッと耳打ちしてくる。


「おい、オキナ。しっかり守ってやれよ?」



ちなみに、昨日からおっさんが俺のことをオキナと呼ぶようになった。

まぁ俺もおっさんと呼んでるし、親しみを込めてだから文句はない。むしろ、堅苦しくないので助かる。


しかし、俺がリューを守るという場面があまり想像出来ない。リューってば、人間形態でも俺の倍以上強いんだぜ?


おっさんの言葉に、頑張りますとだけ答えておく。


「っと、話し込んでく暇はなかったな。リュー、行くぞ」


「む? わかったのじゃ」


ちゃんと先生やるんだぞ~! というおっさんの声を背にしてトルネの街の門を目指す。


「しっかし、改めて思うがこの体すげぇな。昨日あれだけ酒のんだけど!全く問題がねえ」


「ステイタスに合わせて、体が強化されとるんじゃろ。主の動きに体がついていかねば意味がないからの」


実は昨日、明日からオリブで教師やるんだぜ的な事を言ったら、何故かおっさんと二人でお祝いの酒盛りが始まったのだ。

曰く、国内に三つしかない学園で教師になるというのは、かなり名誉なことらしい。

臨時でもなんでも、教師は教師! ということで夜中までおっさんと飲んでいたのだ。


かなりの量を飲んだので、二日酔いの心配をしていたのだが、二日酔いどころか、体の調子は絶好調。頭もキリッと冴え渡っていた。


……いや、そこまではいかないかな。いつも通りである。


「ま、いいことなんだし、別に気にする必要もないか」


「じゃな。さて、主よ。ここでよいと思うんじゃが?」


リューが立ち止まったのは、トルネの門から出て直ぐのところ。

別に召喚師ということがバレても問題はない訳だし、早いとこケファラスを呼び出してしまった方がいいだろう。


一応、今日にでもマイナさんに本当の事を伝えてもいいのかもしれない。


懐から召喚本を取りだし、表紙を開く。


「こい、ケファラス」


魔力を本に流し込んでいくと、ものの数秒でケファラスとの魔力のパスが繋がった。

召喚に必要な魔力を送ったところで本のページに刻まれた紋から光が飛び出し、俺の目の前に魔法陣を描きだす。


地面から現れるようにして、真っ黒の体毛を持った八本足の巨馬。ケファラスが姿を現した。


「ケファラス、学園まで頼むな」


「フフンッ!」


任せろと言わんばかりに首を反らすケファラス。そういえば、どこで馬具を買ってやればいいんだろうか。


「ケーちゃん、妾も頼むのじゃ」


「…………フッ」


「なぁっ!? 鼻で笑いおったぞこやつ!!」


「フフンッ」


「な、なんと態度のでかい奴じゃ……」


ケファラスの背に跨がった俺の視線の先では、ケファラスとリューが昨日と同じような争いを繰り広げていた。


ぐぬぬぬ、とケファラスを睨むリューと、どんっと構えるケファラス。


一応、ケファラスの感情的なものが伝わってくるんだが……あれだ、簡単に言えば、ほれどうしたどうした、みたいな感じ。


「こら、お前ら。時間が押してるんだから止めておけ。ケファラスも、頼むから乗せてやってくれないか?」


「……フフンッ」


「ありがとな。その代わり、今度暇があったらちょっと遠くまで行こうな」


「! フンッフフンッ!!!」


ブンブンと勢いよく首を縦に振るケファラス。激しすぎて、安定しない馬上から落ちかけたのはここだけの話だ。

喜びの感情がビシビシと伝わってくるので、かなり喜んでもらえたようだ。


「むぅ……」


「ほら、リューも。そんなところでむくれてないで早く乗れって」


「……わかったのじゃ」


リューの身長だと、どうやってもケファラスの背には届かないのだが、リューの身体能力をもってすれば、飛び乗るなんて朝飯前だ。

ヒョイと前に飛び乗って俺に背を預けたところで準備は整った。


「んじゃ、ケファラス。行ってくれ」


「フンッ!」






時刻は七時五分前。

既にケファラスは召喚本に戻っており、俺とリューはオリブ学園の校門前にいた。


「そういや、七時に来るようにって言われてたけど……そっからどうするか聞いてなかったな」


「……主よ」


「いや、待てリュー。必ず彼方から来てくれるはずだ。だから、そんな呆れた目で俺を見ないでくれ」


此方から勝手に入れない以上、マイナさんのほうから何かしらの方法でコンタクトをとってくれるはずだ。てか、そうじゃないとかなり困る。


「む」


「ん? どうした?」


「……主よ、どうやら妾達は監視されてるようじゃ」


「……え? マジで?」


「マジもマジ。大マジじゃ。数は……一つ、壁の上。まぁ、敵意はないみたいじゃから安心してよい」


言われた通り門を見上げてみる。

学園を取り囲むほど巨大な壁は、もちろん、その高さもかなりのものだ。

グッと顔を上げると、視線の先、壁の上に一羽の小鳥が俺達を見下ろしていた。


……かなり距離があるのだが、あんなけ小さい鳥が見える俺の視力も大したものだな。


そのまま暫く見ていると、小鳥は壁の上から飛び去ってしまった。



「ウェルディさん、待ってたわよ。リューちゃんも、よく来たわね」


「あ、マイナさん」


「うむ、元気そうで何よりじゃ」


いったい何だったんだろうかと考えていると、不意に校門の方から声がかかった。マイナさんである。


時刻は七時ちょうどだ。


「さ、着いてきてちょうだい。先に臨時の教員証を渡さないと」


「あの、大丈夫なんですか? マイナさん自ら来るなんて」


「いいのよ。部屋に籠って書類とにらめっこするだけなのも暇なのよ。たまには外に出ないと」


「まぁ、いいならいいんですけど」


先ずは前と同じく、学園の中心に建てられた塔へと向かう。

エレベーター擬きで最上階の学園長室に入り、ソファーで待たされること数分。マイナさんが手のひらサイズのカードのようなものを俺に差し出した。


受け取ってみると、どうやら金属板のようだ。ただ、普通の金属板ではなく、魔力を帯びていた。


「……これが?」


「ええ。教員証よ。学園内では常に持ち歩くようにね」


あと、身分証にもなるわ、と付け加えたマイナさん。感じる魔力は専用のマジックアイテムで読み取ればオリブ学園の教師だと証明出来るらしい。そりゃ助かります。


ほえ~と俺が教員証を眺めていると、対面のソファーにマイナさんご腰を下ろした。手にはいつの間にかいれたのか、紅茶のはいったカップが三つ。


「どうぞ」


「あ、どうも」


「なのじゃ」


取り合えず、一口


「やっぱ美味しいです」


「ふふ、ありがとう」


「でもいいんですか? 確かこのあと、俺の紹介とかしなくちゃならないんでしょ?」


「大丈夫よ。まだまだ時間はあるし。それにしても驚いたわ」


「? 何がです?」


「貴方が召喚師だったってこと」


一瞬、俺の体が強張った。カップを持ったまま固まる俺にたいし、マイナさんはカップを置いて、にっこりと笑う。


だが、どこでそれを? という疑問については心当たりがあるった


「あー、てことは、さっきの小鳥は……」


「ええ。私が飼ってる子よ」


その言葉に、やっぱりかぁと思わずため息が出る。


おいで、ノアちゃん、とマイナさんが名前らしきものを呼ぶと、窓から一匹の小鳥が入ってきた。

恐らく、さっき壁の上から俺たちを見ていた小鳥なのだろう。

淡い赤の羽毛を持った小鳥は躊躇いなくマイナさんの肩に止まって毛繕いを始める。


「貴方がいつ来るのか見てたのだけれど、あの馬に乗って空から来た時はちょっと驚いたわ」


「えっと、その子を通してってことですよね? どうやってそんなことを……」


「あら? 知らない? 仮契約すれば、視覚の共有くらいはできるのよ?」


此方に来てからまだ数日しか経っていないのでそこまで詳しいことは分からない。

一応、国のこととか、魔物のこと、それと一般常識くらいならリューに教えて貰っていたが、そこまで詳しいことはまだ知らない。


「そうなのか?」


俺の隣で難しい顔をしているリューに尋ねると、うむ、と頷いた。


「知識ではそうらしいの。召喚師程の腕がなくとも、仮の契約は可能なようじゃ。まぁ、仮契約にもある程度の才がいるようじゃが」


どうやら、与えられた知識にあったようだ。

リューの知識は、大まかなことだけらしいので、詳しいことはよく分からないのだが……召喚獣だからその手の知識はより詳しいのだろうか?


「なるほどねぇ…」


「もう私は年だから、この子に頼んで学園を見て回っているのよ」


悪戯っぽく笑うマイナさん。

それ、本人が見て回るよりも質が悪いんじゃないですかね?

特にほら、あのガルガルとか金髪とか。何か、裏でしてるっぽいし。


「話を戻すけど、ウェルディさんは召喚師ということでいいのかしら?」


「はい。間違いはないです」


「そう、それじゃあリューちゃんも?」


「じゃな。悪かったの、主の妹などと偽って」


どうもすみません、とカップを置いて頭を下げる。


「まぁ、頭に角の生えた種族なんて見たことなかったしね。薄々、何かあるとは感じていたわ。アズマ出身というのもそうなんでしょ?」


「……すみません」


「いいわよ。これでも、人を見る目は確かだから。それに、大事なのは実力よ」


顔をあげて、という言葉に従ってマイナさんを見れば、普段通りに笑う姿が目にはいった。

ここまで優しい人って、かなり稀なんじゃないのだろうか。


「で、嘘をついてた代わりにといっては何だけれど、貴方の召喚獣、見せてくれないかしら♪」


訂正しますた


「妾も召喚獣なんじゃが…」


「ええ、それは知っているわ。人の形をとって知性のある召喚獣なんて、一つしか思い浮かばないけれど、ここでもとの姿にはならないでね? 流石にここが壊れちゃうから」


どうやら、マイナさんはリューの正体が分かっているようだ。


「でも、あんまり種族を言いふらしちゃダメよ? きっと大騒ぎになるから」


「了解です」


「分かったのじゃ」


もちろん、初めからそのつもりは一切ない。騒ぎどころか、下手すれば他国の権力者までもが俺やリューを狙いかねない。


「分かったならいいの。さて、ウェルディさん。早くやっちゃって♪」


文字面だけ見れば本当に殺る寸前みたいな台詞である。

妙にテンションが上がっているマイナさんに、子供ですか、と思わずため息が出てしまうが、まぁ、良さと言えば良さなのだろう。生真面目で堅苦しいよりもやりやすい。


仕方ないとばかりに俺は懐から召喚本を取り出した。


「? 本を取り出してどうするのかしら?」


「え? いや、召喚ですけど…」


「……え?」


「……はい?」


俺は何かやらかしてしまったのだろうか?





















どうも、ニシュラ和尚です。

次回か、その次くらいに授業に入れるかと思います。

一応、生徒の方は主要キャラとして五人ほどを考えているんですが、はてさて、ニシュラの技量でそんな多人数を動かせるのかどうか少々不安になってしまいます。


頑張れ、ニシュラ!


さて、最近はよく二次創作とかも読んでるんですが、いいね、やっぱり。面白いのがたくさんあるよ。


ニシュラも思い付きはするんですが、諸々の事情により書くまでには至らず。

緋弾○アリアをケイネス先生のスライムで無双とかしてみたい、とか、NAR○TOに忍者じゃなくてZeroのアサシンぶっこんでみたい、とか。

誰か書いてくれないかねぇ……



さて、今回のサブタイ


なんか最近は急に寒くなってきました。授業にちらほらと欠席が目立つようになりまして、ついには友人が風邪になっちゃう始末。

時期が時期だから、気を付けたいところですね。


やっぱり、手洗いうがいはしっかりと! ですね


それでは、また次回!

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