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ep. えぴそーど・わん!


 頼りないかもしれない。

 情けないかもしれない。

 間違えるかもしれない。

 信じられないかもしれない。


 でも、嬉しかったんだ。

 一人じゃ無い事が。

 構ってくれる事が。

 一緒に居る事が。


 だから、大切になっていた。

 だから、裏切りたくない。

 だから、大切にしたい。


 だから、だからどうか―――。



「ん、んぅ……」


 部屋の中で、一つ伸びをする。そう言えば最初に向こうに飛ばされたのは何でだったのかな、と答えの出ない事を考えつつもゆっくりと目を開けば、


 そこは、見慣れた俺の部屋。


「流石に二回は無いか」


 そもそも一回目も普通有り得ないから、と思いつつ鞄を背負う。階段を降りる間、今日も今日とて家が妙に静かな事に気が付いたがもういつもの事なので気にしない。


「改めて考えると放任と言うか何と言うか……」


 だから向こうの世界に行ってても問題無かったのだが、それはそれ。自分の事ながらよく性格が歪まなかったものである。


「さて、と。戸締りオッケー、ガスオッケー、電気もついてない……と。うん、大丈夫だな」


 家の中を一通りぐるりと回って玄関に戻る。こうして朝から出かける準備をしている辺り、俺もあの二人の子供なんだなーと納得してしまった。


「よーし、そろそろ行くぞー」


 いつものスニーカーを履いて外に出る。鍵を鞄に仕舞いながら庭先に声をかければ、


「わんっ!」


 真っ白な耳をピンと立て、尻尾を全力で振り回す全裸に首輪の巨乳美女がってうぉぉぉぉい!?


「シロ! ウチで転神すんのやめろって言ったろ!」

「……あ」



 ―――あの時、何が起こったのかは実はあんまり覚えていない。


 ただ、結論を言えばシロの身を苛んでいた怨念が魔力に転換され、その全てがシロに吸収された。

 その結果、シロは白光狼という種の限界を超えた存在となったらしく、人間の姿へと『転神』していた。


 いやー最初はビビったよ。目が覚めたらいきなり全裸の巨乳犬耳美女と同衾してるんだもん。混乱してたせいで欲情する暇も無かったのが幸いだった。

 しかも俺が目覚めた直後にメリーさん達によって脱走させられたし。落ち着いて虎太郎君から話を聞いたら、問答無用で処刑されてもおかしくなかったとか。いつかちゃんとお礼言わないとなぁ……。


 で、シデン経由でこっちに帰って来る時に聞いた所、向こうの世界では何かしらの方法で種の限界を超えた存在になると転神という現象が起こるらしい。

 これは能力に合わせて器、つまり肉体が変化する現象らしい。特に魔獣なんかが転神すると獣人になる確率が高いらしく、虎太郎君のご先祖様もそうやって獣人になった紫電虎なんだとか。


 本来なら山の主とか神として祀られるような存在を経て至る極地らしく、今回のようなケースは聞いた事が無いと言っていた。

 多分だけど、最初から白骨死体だった白光狼が相当強力だったんだと思う。後はシロの才能がずば抜けてるって可能性もあるけど、こっちは正直怪しい。

 なんせこの犬のお嬢さん、そんな超常の存在になっても未だに俺にベッタリなのだ。まあ、下手すると生後一年経ってない可能性もあるんだけど……。


 そして向こうの世界から戻って来た時には既に夜遅くになっており、結構ボロボロの状態で子犬モードのシロを抱えて帰って来た俺は当然ながら怒られた。

 ただ、向こうに置いておく訳にもいかないシロを飼う事はアッサリと許され、こうして我が家に家族が一人……一匹? 増えた。


 ……まあ、それからも大変だったんだけどね。目を離せば人間モードになるわ予防接種で暴れ回るわ、ドタバタコメディの主人公の気持ちがよく解った。

 ただ、それを差し引いてもシロとの生活は楽しい。基本的に繋いでないからたまに大冒険してるらしいし……リード外しちゃうんだもんコイツ。首輪は気にしないのに。


 で、今日は能力測定のためにMGS―――マジックガールズサービスの本部にお邪魔する予定だ。

 どうもシロは犬モードだと大きさが変幻自在らしく、その限界や魔法が使えるかどうかのチェックも含まれているらしい。

 そしてあわよくば俺も魔法が覚えられないかなーと思ってたりする。と言うか一応覚えとけって虎太郎君に言われた。


「ぬしさま?」

「ん、いや何でもないよ。ってか犬モードで喋んな」

「くぅん……」


 声帯の作りとか人間とは違う筈なのに犬モードでも普通に喋るからなコイツ……流石はファンタジー世界の住人。

 耳をぺたりと下げてしょげるが、その裏っかわを少しかいてやればすぐにピンと立てて尻尾が再び大回転する。単純な奴め、うりうり。


「んじゃ、まあ……行くか」

「わんっ!」


 今日も空は良い天気だ。日光が強いが、その下でこそ元気になるのかシロもご機嫌である。


 ……でもさぁ、その主様って呼び方はどうなんだ?



という事でトリップ三部作完結になります。くぅ疲。

二人は今後大事に巻き込まれるとかモブとかでイチャつきながら出てくると思います。爆発しろ。


そろそろ長めの転生ネタとか現代ネタとかやろうか……。

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