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初恋の王子様は超絶ナルシストです



起きたらそいつは、キラキラとやたら眩しい顔で私の顔を覗き込んでいた。


「ちーづるちゃんっ、おはよう。朝から僕の顔が見れるなんてラッキーな1日の予感がしない?」



朝から最悪の1日だと実感した。



「はる…どいて。むしろどっか行け」





木ノ(キノモト) 春矢(ハルヤ)


私の幼なじみであるハルは、とにかく外見が良い。


おばあさんがイタリア人のクウォーターで、少し日本人離れした顔立ちにスラリとした体格。


小さな頃から天使のようだとご近所でちやほやされ、女の子をメロメロにして育った。


私、國山(クニヤマ)千鶴(チヅル)も、ハルにメロメロになった1人だ。


ハルを初恋の王子様だと信じ、ちやほやし続けた。



その結果が超絶(これ)ナルシストである。



小学生になる頃には自分がみんなの王子であることをよ~く理解していたし、中学にあがるとこっそり作られていたファンクラブを公式として認識し、月に一度はハル自ら写真会を開いてしまうようになる。



流石に私が何をしているんだと詰め寄ったとき


「だって、せっかくの美貌なんだから後の世に残してあげないと」


と、涼しい顔で言われて失神した。



そして、高校生になったハルはもう止まらない。



無駄な(モテスキル)の良さを発揮して超有名進学高校…ではなく、私と同じ近所の高校の普通科に入学した。


流石にどういうつもりなんだと私とハルの両親が詰め寄ると


「だって、進学校だと成績1位とれないかもしれないしさ、王子は常に完璧であるべきでしょ?」


と言われた。流石に慣れていた私は失神しなかったが、代わりにハルの両親が失神した。


「千鶴ちゃん、ハルを…ハルを一般人に…」



※もう手遅れである。




こんな魔物を作り出してしまった原因の一片である私は、本当に本当に後悔している。


その為罪悪感でハルが行き過ぎた行動に出ないように監視、注意していたし、ハルがやらかしたことのフォローもしてきた。



しかし、もともとの素材がないとここまでのナルシストに育つだろうか。


否、育つまい。


よって、高校生になったらハルとは距離を置こうと心に決めていた。


そう、決めていた。



「なのに…!なのに…!」



歯軋りをしながら、私のドレッサーの鏡で自分を見つめるハルを睨む。



高校生になってもこうして毎朝ハルが迎えにくるし、下校時にこっそり1人で帰ろうとしても、ハルとは隣のクラスの為すぐに見つかってしまう。


距離を置くなど無理な話。


むしろ不本意ながら静かにハルの傍にいるだけの私は、すっかり"王子のマネージャー"扱いされていた。


何故か私の靴箱にハル宛のファンレターが入っていることもしょっちゅうで、毎回宛名に自分の名前がないかという僅かながらの希望が打ち砕かれるのも腹立たしい。


これでは彼氏も出来ない。死活問題だ。


青春(アオハル)を満喫したいのに…




「ちょっと、着替えるから出てって。家から!」


「良いじゃん、僕に見られたら色々と発育不足な身体が成長すると思うよ」



◯ねば良いのに。



慣れた手つきでハルを叩き出すと、すばやく制服に着替えてリビングに行く。


と、当たり前のようにハルが食卓に座り、味噌汁をすすっている。



「なんで毎朝毎朝うちでご飯食べるわけ!?」


「だって僕の家はパンばっかりだし、美味くて健康的な朝ごはんは僕の美貌にとってすごく重要なことなんだよ。」


「あら、ありがとう。」


そう笑って返す私の母(真美子)はきっと勇者か魔王だ。



私もさっさと朝食を食べて、ハルと共に家を出た。





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