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青春へのスタートライン  作者: 二条 夕琳
第一章 恋愛サポート編
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第一話

西野頼宣の一日は一杯のコーヒーから始まる。

コップにインスタントのコーヒーを入れ、ほろ苦い味とコーヒー特有の香ばしい匂いを堪能しつつカーテンを開け陽の光を浴び、爽やかな朝を迎えることが日課である。


そんな小説や漫画の一ページのような清々しい一日の始まりが一瞬でぶち壊された。




「やあ。おはよう!」


「お、おはようございます」


「うむ」



そこに彼女が居た。

黒髪でメガネの似合う知的な外見の先輩朝倉和泉だ。


爽やかな朝を満喫しようという日課が脆くも崩れ去った瞬間である。

清々しい朝を驚愕に変えた本人はなぜかリビングの椅子に座ってその小さな口いっぱいにトーストを詰め込み頬張っていた。



「あの……何故先輩がここに?」



至極真っ当な質問である。



「君があれから部室にこないものだから訪ねてきてみたら弟君が入れてくれたんだよ」


「なるほど」



俺は現在大学に近い場所で弟と二人暮らしをしている。

別に親との不仲はない。


単に実家と大学の距離が遠いだけである。

どうやら俺が寝ている間に愚弟が招き入れてくれたようだ。



「我が弟はどうしたのでしょうか?」


「学校に行くと言っていたよ。中々勤勉な弟さんだね」


「ありがとうございます」


「三つ指をついて兄をよろしくと言っていたよ」


「ハハハ……」



一体いつの時代の人間なんだ我が弟は……



「さて食べ終わったし行くか!」



いつの間にか朝食を食べ終わった彼女は椅子から立ち上がった。



「俺まだ食べて無いんですけど……」


「む。そうか早く食べたまえ」


「分かりました」



どうやら今日は見逃してもらえないらしい。

騒々しい日になりそうだ。



朝食を済ませた俺は朝倉先輩に連れられ大学の部室に着いた。



「結城さんいませんね」


「彼女はおそらく授業だろう。授業が終わればそのうち来るだろうさ」


「そうですか」



来たのは良いものの特にやることも会話もなく先輩は何かをすごい勢いで書き始めた。

あまりの真剣な表情声をかけることが出来ない。


そして部室に来てから一時間が経った。

それにしても気まずい。


この女の子と二人という現状はなんとも居心地の悪いものである。

今まで女の子との接触が少なかっただけに何を話せば良いのかも全く思いつかない。


トントン



ノックの音であるまさか客か?

助かったがまさかこんな怪しげなサークルに力を貸して欲しいと言う人間がいるのであろうか?



「邪魔するぞ」



そう言って入ってきた奴は一言で言って不良である。

金髪に右耳にピアスが三つついていて、口にもピアスがついている。


さらにこの目つきである。

こちらを親の仇のように睨んで来るのである。


非常に関わりたくない人物である。



「青春応援サークルにようこそ。我がサークルに何の用かな?」


「高名な青春応援サークルというのに助けを求めれば万事上手くいくという噂を聞いて来たんだ。実は好きな人が出来て、俺の恋愛のサポートをしてもらいたい」



え?このサークル高名なの!?

4年間この大学に在籍して初めて聞いたんだけど……



「ほう恋愛とな。意中の人物を手に入れたいというその粋やよし!我がサークルが全力でサポートしてやろう!」


「本当か!ありがとう!」



本当かありがとうじゃねえ。

非常にめんどくさいことになってしまった。


特に恋愛なんて経験ねーよ。

というかいかにも女と遊んでいるような外見で恋愛相談とかウブかよ。


男なら当たって砕けろってんだ。



「えーっと。ところで君名前は?」


「あ、これは失礼した。自分2年の田中太郎だ」



普通!?

逆に普通すぎてそんな名前あんま聞かねえよ!


昨今の流行りであるキラキラネームを逆を突いてきやがった!



「田中君ちょっと待っていてくれるかな」


「分かった」


「先輩。ちょっと」


「ん?何かな?」



部室の外に先輩を誘い出し、先程から疑問に思っていたことを聞いてみることにした。



「先輩は恋愛経験があるんですか?」


「いや?全くないが?」



デスヨネー。



「そんなんで大丈夫なんですか?失敗する気がして仕方ないのですが」


「フッ。失敗の方が可能性は高いな!しかしこんな面白そうな話。私が見逃すわけがないじゃないか!良い暇つぶしになりそうだ」



外道である。

電波系かと思ったがそっちであったか。



「だがやるからには全力だ!まず敵の情報を調べなければならん!」


「敵って……」


「いやあ面白くなってきた!ハッハッハ!」



ああ、結城さん早く来ねーかな。

俺は疲れたよ。


ここに不安すぎる恋愛サポートが幕を開けたのである。

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