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青春へのスタートライン  作者: 二条 夕琳
プロローグ
1/2

第一話

「またか……」



自分のスマートフォンの画面に映るのは企業からのお祈りメール。

今後の健闘を心よりお祈りしますと全く心にも思ってないだろう文章に飽き飽きとする。


これにて30社目である。

最早回数を数えるのが億劫になってきた。


運命の女神というのは俺には手厳しいらしい。

そう簡単に就職先を斡旋してくれるわけではないようだ。


大学にほとんど来ずに遊びまわって単位もギリギリな友人達が先にどんどん決まって行く。

片や真面目に授業を受けて単位もほとんど取り終わってる俺は落ち続けると……


企業の人事も見る目ないなあ……

新人が使えないし辞めていく奴が多いと嘆いてる人事が多いと何処かで聞いたがそりゃそうだろ。


近くにベンチにもたれかけスマートフォンの画面を消して目を瞑った。

太陽が眩しい。


というか暑い。

まだ5月だというのにこの肌を刺すような暑さは何なのだろうか?


とりあえず涼しい場所に移動しようと思い腰を上げた。



「そこの君!」


「はい?」



女の子が話しかけてきた。

大学でよく見る化粧も濃く、茶髪や金髪で服も派手なキャピキャピしてるような女の子と違い黒髪のショートカットにいかにも知的といったようなメガネのよく似合う綺麗な女の子が。



「すまないが少し話を聞いてもらえないだろうか?」


「はあ……」



何の前触れも無くイベントが発生した。

まさか一目惚れでもされたのだろうか?


運命の女神に祈りを捧げここから始まる恋愛劇に少し期待を持ちつつ女の子の話に耳を傾けた。



「実はあるサークルを友人と作ったのだが一向に人が集まらなくてな。君はサークルに興味はないか?」



現実は無情である。

そんなに都合の良い話なんてなかった。


この西野頼宣は生まれてから22年間女子との関わりがほとんど無く、ほとんどが勧誘や頼み事でしか話しかけられたことが無いのである。

さらにこちらは職探しの真っ最中。


サークルに割いてる時間なんてあまり無いのである。



「悪いけど俺は4年なんだ。今更サークルに入るっていうのもちょっとね」


「そんな事か!気にする必要ないぞ!私は5年生だからな!」



それは大丈夫なのか!?と思わずツッコミたくなった。



「ついて来てくれ!」


「え?ちょっと!」



俺の手を掴み足早に歩いて行く女の子。

女の子に手を掴まれたのなんていつ以来だろうか……


すべすべで柔らかくて気持ちがいい。

……変態じゃねーか!


とか思っているといつの間にか目的地にたどり着いたようだ。

あまり周りを見ていなかったため……


というかドキドキと緊張のあまり見れなかったのだが、よく見ると文化部の部室棟のようだった。

目の前には青春部という張り紙が貼ってある。



「ここが目的地だ!」



そういうと彼女はドアを勢いよく開いた。

嫌な予感しかしないというか俺の第六感が今すぐに逃げ出せと告げている。



「ようこそ青春応援サークルへ!」



名前的に電波な響きしか感じられない。

どうやら俺は厄介ごとに巻き込まれたようだ。


その証拠に奥から目つきの鋭い女の子が俺を睨んでいた。



「和泉先輩。その人は?」



どうやらこの人は和泉という人らしい。

外見みたいに綺麗な名前だ。



「新人だ!」


「そうですか。二年生の結城奏と言います。よろしくお願いします」



目つきが鋭くて最初は怖かったがこちらに敵意をもっているようではなくて安心した。

こちらの子は茶髪のロングで胸も大きくいかにもモテそうな感じの女の子だ。



「む。まだ名乗って無かったな!朝倉和泉だ!よろしく頼む」


「4年の西野頼宣です」



というか俺は入るなんて一言も言ってないんだが……



「後一人居るんだがどうやら今日は来てないようだな」



どうやら三人のサークルらしい。

ところでさっきから肝心の事がずっと気になっていたので聞いてみることにしよう。



「あのう」


「どうした?何でも聞いてくれたまえ!」


「このサークルってどういうサークルなんですか?」



そんなことも言ってなかったの?とでも言いたげな目で結城さんが朝倉先輩を見つめていた。



「あれ?言ってなかったか。このサークルはな。青春をしたくてもなかなかその一歩が踏み出せない人たちの後押しをするというサークルだ!」



あまり理解出来なかった。



「つまり?」


「つまり青春のスタートラインに立っていない人のサポートをする助っ人サークルということだ!」



なるほど全く分からん。

これはめんどくさい人と関わってしまったのかもしれない。


どうやら運命の女神という奴は俺をとんでもない人と出会わせてくれやがったらしい。

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