『柏田さん』は…
長いです。
長いです…。
「あっあの、校長先生!!」
式が終わった途端、晴は駆け出した。
「子供達をあまり待たせてはいけないのでしょう!はやく6年1組へ行くのでしょう!」
話を聞いてもらえず、急かされた。
後で話せるだろうと思ったからか、晴は踵をかえして教室へむかった。
(これから私はどうなるのだろう。)
(柏田晴は、私なのに。)
(先生じゃないのに、生徒なのに。)
焦りに焦って手に汗がにじむ。
晴は思考を切り替えようと努めてみる。
(でも…よく考えると…)
(――私、6年の授業やらなくても良いんじゃん!?何で気づかなかったんだろう?)
晴はそう思うことにして、教壇の上に立った。
「……はい、改めまして私の名前は『柏田 晴』です。」
さっきとうってかわってノリノリに見える。
河藤は一番前の席に座ってニコニコしながら話を聞いている。
ところがある一つの机といすを見るなりいきなり
「先生!」
という。
晴の身体が僅かに揺れた。
やや間があって、晴は答えた。
「はい、なんですか?」
河藤は空っぽの机を見、指で指しながら、
「転校生の柏田さんは、休みなの、先生?」
と言った瞬間、晴の肩がピクンと揺れた。
皆が「先生と名前が同じね」「不思議な現象だな」とざわめく。
(どうしよう。
まさか自分のことを聞かれるなんて。
……――あ。
元々の新任さんは、どうしたのかしら)
晴は息を吸い込み、静かになっていた教室にいる皆に響く平静を装った声で言う。
「柏田さんは…」
これからどうなるのか。
私にも予測不可能?