信じられない運
長いです。
全部合わせたら、きっと…
「やっと来れましたか。」
教頭先生がいう。
しかめっ面をして、うつむき気味だ。
「怒らないんですか…?」
晴は恐る恐るたずねてみた。
「そりゃ怒るわけないでしょう!事故にあったんでしょう!学校にも電話がきたので、皆さん知っているのでしょう((す))!遅れたって当然でしょう((す))!」
今度は校長先生。
大げさにしゃべり、大げさに身振り手振りして、でしょう!でしょう!を連発するので、単なる口癖なのか、本当は怒っているのか見当がつかない。
「いきますよ。新任の先生は早めに紹介しなければならないので。」
「あ、はい…」
皆の前で紹介されたら、この一年間は、先生を務めなきゃいけなくなる。晴は焦った。何か良い手はないか、と思いあたりを見回したが、何もない。抜け出すにも抜け出せない。
(みんなどうして私を疑わないのかな…本物の新任の先生に会ったことがないはずないんだから…)
「皆さん、新任の先生でしょう((す))。(さあステージに立って、挨拶して!)」
校長先生は小さくいって、にっこりしたが、晴はパニック状態になった。
「挨拶!?」
「知らなかったのですか、ならば適当に作ってくさいよ」
晴はゆっくり、ゆっくり、ステージへ向かう。
(もういいや。去年の新任の先生の演説、ちょっとパクるわ。)
「みなさん、おはようございます。新任の……柏田、晴、と、いいます。」
晴は言ってしまった。新任確定。
そのあと挨拶は何とかうまくいった。
「では先生の発表、今年は6年からいきましょう!
6年1組柏田晴先生でしょう((す))!」
「6年1組って、あのコ…えっと、河藤?…がいるクラスじゃん…しかも私もそこのクラスのはずだったし…よりにもよって、こんな悪戯、ないよ…」
晴は呟くと、早足に6年1組の前に行った。
河藤はにこにこピースサイン。
作り笑顔の裏で、黒い感情がどろどろと渦巻いている。
『河藤!お前はそうやって、にこにこするな!』
晴が新任として決定してしまった。
ここまで見てくださり、どうもありがとうございました。
これからも頑張ります(誰が応援するんだよ…)。