【篠宮 澪姫】の場合。
今までで"いぃ~っち番っ!!"長いです。ごゆるりと…♪
「……み~っちゃん。」
毎週金曜日。
皆が寝静まる真夜中に、侵入者は必ずやって来る。
「夜汰!」
その侵入者、入江夜汰は窓から私の部屋に入る。入っていきなり抱きついたから、「ちょっ、落ちる!落ちる!」ってバランスを必死にとる。でも…、毎回思うんだけどさぁ…、
「夜汰、この部屋3階なのに、ハシゴ使わないで…どうやって来るの?」
後ろの窓を見て背筋が凍るよ…。
夜汰は少し体を離して、右手の人指し指を口に当ててウィンク。
「ひ・み・つ♪」
見事に撃ち抜かれました。落ち着く為に一息吐いたら、思いっきり咳をしてしまった。
「みっちゃんっ!?」
「うん…、大丈夫。ちょっとはしゃぎ過ぎた…。」
夜汰は「よかった…。」って安心してくれた。しかも、自分が着てたパーカーを着せてくれて「寒くない?」だって。はうん…。
「ありがと…。」
私は昔から病弱でよく風邪をひいてた。夜汰はずーっと看病してくれてて、本当に頼もしかった。「座ろ?」って言って「そうだね…。」って…。ずっと抱き合ってました(汗)
「篠宮家はなれた?」
ベッドに座ったけど「へっ…!!変なことはしないよっ!!」だと。可愛いなぁ。
「まぁ、1年も経てばね。」
篠宮 澪姫。篠宮は2つ目の苗字。私は養子で、1年前にこの篠宮家に引き取られました。世界的に有名な家で、「なんで私を?」って聞いたら『名前が気に入った』らしいです。
ちなみに夜汰は施設でいつも一緒に居た大切な、大好きな人。
「ナナちゃんは学校行けるようになった?」
「今週の月曜から行ってるよ。友達も出来たっていうし。」
こうやって施設の状況を教えてもらってるんだけど、流石に初めて「みっちゃん!寂しくない?」って窓から現れたのはビックリした。
…色々と話したいことはあるけど、毎回2時間位で「また来週!」って帰っちゃうのに、今日はおかしい。時間が経つにつれて…、ソワソワして落ち着かない。
「……夜汰?」
「あっ、えっ?な…、何?」
明らかにおかしい…。
夜汰は自分から言える人じゃないから、
「何か言いたいこと…ある?」
こっちから聞かないと言ってくれない。
「…うん。」
やっぱり。
「どした?」
夜汰は深呼吸を一回して、意を決した。
「…来月から、『長谷川』って家に引き取れる事になった。だから、もう来れない…。」
やっぱりかぁ…。様子からそうだったもん。…でも、夜汰は泣いてないから泣かない。昔から張り合ってたよね、「先泣いた」とか。
「大丈夫!」
私は大丈夫って言ったのに…、なんで夜汰は困ってるの?
「泣かないでよ!」
誰が泣いてる?…夜汰、知ってるならさ、笑ってないで…"止めてよ"…。
「これから"いい話"になるんだよ。逆に良すぎて"嬉し泣き"させてあげる…、聞いてて?」
『いい話?会えなくなるのに?』
言いたくても嗚咽が邪魔をして言えない。夜汰は私の涙を袖で拭ってから額にキスをしてきた。今ので完全に固まった。
「『長谷川』は代々、『篠宮』のお得意様みたいな家らしいんだ。今、後継者がいなくて困ってるから、養子を取ることにした。」
私は黙ったまま。すると、私の頭を撫でて抱き寄せた。
「…その養子を"僕にしたい"と向こうからの指名で来た。断ろうとしたけど、『君の好きな子は"篠宮"に引き取られたんだって?"篠宮"から嫁に来させるくらいどうにでも出来る。』だって。」
「…えっ?」
やっと出た声。久しぶりに出たのは少し掠れてた。
「なんて声出してんの(笑)。顔まで間抜けちゃって(笑)。」
「うるひゃい……。」
恥ずかしくなって布団を被る。布団の上から『続けるよ?』ってくぐもって聞こえてきた。
「……そしたらね、皆が『みっちゃんと居れるよ!』『澪姫姉ちゃんと結ばれろ!』って大騒ぎ。」
想像が出来て笑ったけど、黙ってその先も聞く。
「だから、皆の進めもあって『長谷川』に行くことにした。…んで、その…、」
急に煮え切らなくなった。男はハッキリしなさい!って言おうとしたのに、
「夜汰!ハッキリ言いなさい!」
と変換されて、勢い良く布団から起き上がった。そしたら、「布団被っててっ!!」。…押し倒されました。
「僕が…。」
夜汰の深呼吸が聞こえる…。
「僕が『長谷川』の苗字を貰ったら、"正式"に篠宮へ"結婚を前提としたお付き合い"を申し込みます。…受けてくれますか?」
初めて聞いた夜汰の真剣な声は、どんな声より良く聞こえた。
「…受けてやる。」
「…ありがとう。」
布団の下で私は泣いてた。なのに唯一の壁を取ろうとしてきた。
「とっ…!!取るなっ!!」
「ヤダ。なっちゃんの泣き顔可愛いもん♪」
いつもの夜汰、形勢逆転。私の心情だけだけど…。ちょっとだけ布団から顔を出したら、夜汰の息が止まってる。
「夜汰…?」
「…さっきの取り消し。」
「?」
なんのこと?
「今日、泊まる。"澪姫"のこと抱くから。」
さっきの=『変なことはしないよっ!!』。…ベッドに座った時。
今=『ベッドに押し倒されて、馬乗りされてる』。…ベッドに寝てる時。
「ダメ?」
えっ?何その子犬の目。うるっうるに可愛くねだるのやめてー。言ってる事とやってる事は一致させなさーい。
「はぁ…、こういう時黙るのズルい。……まぁいいや。」
真剣に戻った低音ボイスは耳に残る。
「なっ………!」
何が?とは言えず"キス"で塞がれた唇。
左手を私の頭にまわして、右手で布団を奪う。夜汰の唇は耳元にきて、いつもの夜汰の明るい声で。
「……強制…、ね♪?。」
夜汰が養子になるまで、申し込みに来てくれるまで、"この時間"は…、"約束までの会えない時間"。それまでは誰にも秘密だよ?
お疲れ様でした(笑)純粋が続いて~…?次は~…?(笑)