【天原 奈都】の場合。
話数が増えるに連れて長くなる…。
でも無理矢理1話にまとめる僕って…。
12月24日(木)。
ホワイトクリスマス。
「なっちゃん!」
「ナツ!」
兄が経営するバーを入るやいなや、双方から腕を取られゲンナリする私。
忙しいクリスマスに手伝いをしにきて、初っぱな疲れてる。
只でさえ週3で来ている為に、今週は毎日地獄に足を踏入れる事になる。
「だーかーらー…、…お前らいい加減にしろってのっ!!」
怒鳴りながら腕をぶん回す。
しかし、コイツらはしぶとかった。
「ナツが俺に好きって言えば離すよ?ほら、言ってみて。」
「俺はなっちゃんがキスしてくれたら、押し倒すよ☆」
「兄貴~…(泣)」
丁度裏で作業してた兄が出てきたので助けを求めた。
手には色々な酒を持ってい
「…てっ!!!?」
「うわっとっ!?」
「ヤベぇってっ!」
『持っていて』否、『持っていた』酒瓶は、私の両側をスレスレで飛んでいった。
虫達は華麗に避け(…チッ)死を逃れ、酒瓶は派手な音をたて後ろで散る。
「ナッ…、ナイスコントロールっ…。」
「流石ッスね…、伊隼先輩…。」
紹介しようっ!
我が超自慢&尊敬する兄《天原伊隼…イハヤ》は、高校野球3連覇の経験を持っていて、1年から投手の座を背負い、2年で主将になられた偉人である。(凄いだろっ!!)
コントロールに関しては全国レベルだ。
「当たり前だろっ♪天原伊隼だからなっ!」
まぁ卒業してからは、バイトだったけどオーナー直々にココの経営を任され1年目って所だ。野球推薦の量は凄まじかったが、兄曰く『ゆったりしたいからな』と言う理由で経営を選んだそうな。
「とは言っても、…兄貴、明日のシャンパンどーするの…?」
「あっ……。」
高かったのに…。あのシャンパン。
「伊隼先輩が見栄なしに投げるから…。……って言うか先輩、『倉木奈都』ってしっくりしますよね?」
何言ってんだお前…?
「『深澤奈都』のがなっちゃんらしいっ!」
はぁ?
「……誰がお前らに奈都をやるか。だったらまだ松下にやる。」
便乗してシャンパンの事水に流しやがったっ!!
でも、この話は乗って置かないと…。
「…松下先輩ならコイツらよりwelcome。」
「えっ?ねぇ、松下って誰?」
「俺の高校の1個上の先輩で、伊隼先輩の後輩。」
そうだっ!…すいません。コイツらと私の紹介はしてませんね。
まず私《天原奈都…ナツ》。17歳・高2、
女子校の野球部で主将です。
んで、さっきから超!『ナツナツ』うるさくほざいてるのが《倉木修祁…スギ》。
兄の高校の後輩で、私と同い年。
当時3年だった兄が、当時1年だった修祁に"ココのバイト"を紹介してしまったのが始まり。
我が家に居候中↓。
本当は独り暮らしをしていたが、家賃を払えない位"金欠"だったので、見かねた兄が拾ってきた。
後は、なっちゃん言ってる"超ウルトラミラクル変態人"が《深澤慧俚…ケイリ》。
慧俚は男子校の寮暮らしだそうだ。
因みに慧俚も同い年。
普段なんて知りたくも無いので省略。
「奈都、修祁。お前らゴミ出し行ってくれっ!後、…買い物も。」
「はーい!」
「了解です。」
兄から頼まれたゴミ出し。
ゴミ袋は4つある。だから2つ持ってこうとしたら修祁が3つ持っていった。
「ちょっ、修祁っ!」
慌てて裏口を出ると、修祁は左手を差し出してた。
「早く。」
私は急いでゴミ袋を左手に持って、右手は修祁の左手を握る。
「やっと2人になれた…。」
修祁のため息に少し笑う。
私も同じ気持ちだったから。
「見られたら伊隼先輩に殺されるよなぁー、きっと。」
「家も追い出されるよ。」
お母さんもお父さんもずっと海外(旅行)にいて、滅多に帰って来ない。あの夫婦はイチャつきが半端無い為、居ない方が楽なのだ。
だから兄は私の世話を任せられてて、過保護っぷりは引く勢いにある。
「買い物、何買うって?」
質問に答えようとメモを開いて、疑問が生まれた。
「シャンパンに、……卵、牛乳、小麦粉?」
「パンケーキ…。」
「何でまた。」
シャンパンはさっきの事故の為だが…、バーに新メニューとして入れるには、ちょっとどころか結構おかしい。
「お前…。」
「何?」
「…いや、何でも無い。」
「あっそ…。」
ゴミ出しを完了させて、スーパーへと歩き出そうとしたら、修祁が立ち止まってる。早く行こって言おうとしたら、
「…今だよなぁ。」
そう呟いて近付いてきた。
私の体を抱き寄せて、手に何かをのせた。
「…HappyBirthday、奈都。ずっと一緒にいような?」
「……!」
誕生日の事なんて忘れてた。
クリスマスはバーが忙しくなる日。
自分の誕生日なんてかまってられないのに…。
「誕生日知ったの最近だったから…。」
付き合って2年目にしての初プレゼント。
「ありがとう…!」
背伸びして修祁の頬にキスをした。
顔を見たら真っ赤だった。
「…家に帰ったら、平常心!兄貴に殺されるのはヤダよ?」
「……ムリ、かも…。」
過保護な兄と変態にバレたら終わり。
しかも修祁は同居人。
私達のちょっとスリルな秘密の恋。
登場人物が増えましたっ!
段々と広がる世界…(笑)。