第4話:学校で
学校が終わり放課後になる。先生から解放された僕たちは、一目散に校庭に駆けていって遊び始める。
最近の僕たちのブームはソフト野球だ。プラスチックのバットと柔らかいゴムボールでの野球で、ツーアウトチェンジ式の野球だ。
「次のバッターはちぃだぞぉ!バントに警戒しろぉ!!」
キャッチャーが野手達に叫ぶ。僕はこの学校で一番足が速い。自慢じゃないが、駆けっこで一位以外をとったことがないのだ。僕はピッチャーが投げる球をうまい具合にバットに当てて転がす、三塁方面に転がして、一塁に投げた時には既に僕は一塁に立っている。
僕はこのソフト野球で盗塁王にもなっていたのだ。次にピッチャーが投げる時には二塁に向かって走っている。
試合の結果は散々だった。根本と校門を出て話しながら帰っていた。
「あぁーあ、僕がいつも出塁するのに…なんで打線が続かないかなぁー」
僕のチームはいつも負けてしまう。あの後は根本が三振にされ、続く打者もピッチャーゴロでアウトになった。
「まぁまぁ、盗塁王になってるだけイイじゃん?」
とかいっている根本は三振王なのだ。
「あっ!連絡帳を教室に忘れてしもうた!根本!悪いっ!先に帰っといてくれ!」
根本の「ちょっと…待てょ」を聞かずに僕は走って学校に戻っていった。
「なんやぁ…夕方の学校って薄気味悪いのぉ…。さっさと取って帰ろ」
僕は教室に続く階段を一段飛ばしで登っていった。リズムよく登っていたのだが、階段の折り返しでなにかにぶつかって、尻餅をついた。
「おわぁっ!」
「きゃっ!」
僕は転んだことではなく、目の前にいる人に驚いていた。
「なんで…小坂がおるんや?最終下校過ぎたで?」
僕は驚いて目を丸くしている小坂に手を差し伸べながら聞いた。しかし、小坂はその手を握って立ち上がると、そっけなく答えた。
「別に…。千春くこそ何してんの?」
僕は連絡帳を取りに来たことを伝えると、一応小坂に怪我はないかを聞き、小坂の横を通り過ぎて階段を登り始めた。
「ちょっと!…待ってよ!」
小坂が僕が階段を登ろうとするのを阻止してきた。僕は背中を引っ張られてよろける。
「ん?どうしたの?」
僕は小坂が泣きそうな目をしているのに気づいて、教室に見られたくない物があるんだろうと思った。だから僕は余計教室に行きたくなったので、小坂の手を引いて一緒に教室に向かった。その間、小坂は嫌だ行きたくないを繰り返していた。
「これ…誰がやったの?」
僕は驚きと怒りのあまり喉に空気が通らずうまく声が出せなかった。小坂は僕から目を背けると、静かに涙をこぼし始めた。
小坂 由香の机に色々なマーカーで沢山の悪口が書かれていたのだ。小坂はちょっと口うるさいが、嫌われるような人ではない。僕は腹の底が握られた様にいたくなった。これほど気分の悪い物は今までになかった…。と思った。
「とりあえず…消そっか」
僕は雑巾を絞って、机をゴシゴシと拭く。幸い二十分ほどで全部綺麗に落ちた。その間、小坂は泣いていたが、多少落ち着いたのか僕にお礼を言ってきた。
「あり…がとう」
「大丈夫だよ。小坂…もう平気?」
小坂は小さく頷くが、まだ小刻みに身体が震えていた。