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第2話:続・東京へ

更新が物凄く遅れてしまいました。

これからは合間を縫ってちょいちょい更新します

いつの間にか前の家の中に千春はいた。家の中は真っ暗だったが台所からだけ灯りが出ていた。

「絶対にいかん!東京なんて絶対嫌や!!」

台所から和美の怒鳴り声が聞こえる。それに続いて父親の怒鳴り声も聞こえた。

「黙らんか!!まだ親に食わして貰ってる分際で生意気ぬかすな!」

その後にバチンッ!と何かを叩く音が響いた。

「あんた殴らんでもいいでしょ!!和美大丈夫?」

母親の優しい声が聞こえる。だけどその後には憎悪の声しか聞こえなかった。

「もうやめてぇな!!お父ちゃんも姉ちゃんも!!そんなんなら僕もう引っ越し嫌や!この家も嫌いや!お父ちゃんも姉ちゃんも大っっ嫌いや!!」

自分自身の声も台所から聞こえた。ああそうか、これは夢なんやな。この夢には見覚えがあった。引っ越しが決まったその日の夜に姉ちゃんとお父ちゃんがケンカをしたのだ。僕はケンカが嫌いだった。相手を傷付けるという行為も相手に傷付けられる行為もどっちも嫌いだった。

この日の夜遅く、みんなが僕が寝たと思っていた時間に3人でひそひそと話し合いがあった。それは僕のことだった。声が小さくて分からないこともあったが、母ちゃんの口から「お姉ちゃんなんやからな?」と言うのが何度も聞こえた。

そして父ちゃんはあまり声を出さなかった。姉ちゃんは本当はとっても優しい人だ。気難しくて、よく僕を怒るけど、普段は優しい姉ちゃんだから、姉ちゃんは「千春に迷惑かけたくない…我慢する」というと居間を出ていった。

最後に父ちゃんから「すまんな…」というのだけは聞こえた。


「千春おきんさい!」

お母ちゃんが僕のももをバチバチと叩く。僕ははじけたような痛みに気分悪く目を覚ました。

「あれ…?僕寝取ったん?もうついたんか?」

目をこすりながらまだハッキリしない視界で車から外を見回す。

「もうすぐだよ。もう高速から降りるって」

姉ちゃんの声が横から聞こえたので、僕は横を向いた。姉ちゃんはさっきより機嫌が良くなっていた。僕はその人の表情を見るだけで大体の機嫌が分かる。

「ガム噛む?」

姉ちゃんが僕に一枚渡してくれた。それを口に放り込んで噛むと物凄い辛みが口を襲った。

「なんや…こへ…めっちゃ辛いやん…」

僕は思わず涙ぐんでしまった。姉ちゃんは少し楽しそうにフフと笑うと、いたずらっこな目で僕を見た。

「どう?しっかり目醒めた?寝ぼけていきなり車飛び出されても困るからね」

姉ちゃんはわけのわからんことを言ってまた笑うと、僕とは逆の窓の外を見始めた。

「高速おりるで…」

前で父ちゃんがぼそりといった。

僕はハッキリした目で外をみた瞬間じんせいで初めてというほど驚いた。辺り一面はでっかい建物でいっぱいだったのだ。僕がいた町の一番でかいと言われた高層マンションなんて比べ物にならないほどの建物がいっぱい並んでいた。

「ぁわぁ…」

僕は声にならない声で感動を表した。誰かにこの感動を伝えたかった。姉ちゃんの方を見るがまだ外を見ている。母ちゃんと言いかけるが母ちゃんはなんだが化粧を直している。父ちゃんと言う前にあきらめた。

僕はこの感動をそっとしまっておこうと思った、自分しか知らないヒミツが出来たのでちょっと嬉しくなった。


少年の物語はこの東京から始まった。

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