8話
俺達はなんだか釈然としないまま取り残された。
支払いはサワダが済ませて言ったらしく(というか、始めのID認証でなされたのかもしれないが)問題はなかったが、それ以上の問題が俺達には残された。
全く持って、謎だらけだ。
サワダの存在も、言った言葉の意味も、俺達の未来も。
でも、と俺は元の公園へ彼女と一緒に戻りながら手元の手帳を開けた。
とにかく、解決できることから解決していけばいい。
三山由利だ。最初の最初はこの女の子の消息を知るのが目的だったんだから、まずそれを解決すればいい。
それに、万が一全てをスッキリさせることはできないにしても、帰る方法はわかったんだ。とりあえず安心していいだろう。
「なぁ……」
俺はさっきから黙ったままの彼女に声をかけた。
しかし、反応がない。顔が若干青白い気もするが、体調が悪いと言うよりまだサワダについて考えを巡らせていると言った感じに見えた。
公園が近付いてくる。
高いフェンスが木々の間から生えていた。まるで、檻のようだ。そう、まるで病院と同じ。自由な空は見えるのに。自由を与える場所なのに、その実は固い何かで囲って中にいるものを捕らえて離さない。
三山由利っていう子は、その中に何年もいたんだろう。
何年も、たった一人で。世界を知ることも、友人を作ることもなく。孤独に……。
「え?」
俺は思わず呟き、手帳を握り締めた。
そうだ。彼女、言ったじゃないか? 三山由利には友人がいないって。じゃ、彼女はなんなんだ? 三山由利のために命をかけてまで未来を確かめに来たの彼女は、友人じゃないのか?
彼女は、もしかして……。
風が吹く。
高いフェンスを隠す木々がざわめいた。
傾き始めた日が斜めに俺らを照らし、足元の影を濃くして行く。
俺は、彼女に気がつかれないように、そっと電子手帳の電源を後ろでに入れた。
視線をなるべく動かさないように確認する。
たしか、さっきサワダはあの画面に手をかざしてIDを確認していた。だったら……。
そっとすぐ傍に揺れていた彼女の手に画面を当てた。
すぐに軽やかな電子音がなる。
「え?」
彼女が顔を上げた。俺は慌てて手帳を閉じると
「あ、悪い! 便所行きたくなったから、ここで待っててくれ! ごめん」
とわけのわからないことをいって、走り出した。
もう、足のことなんか構っていられなかった。彼女が後ろで俺を呼ぶ声がする。でも、確認するまでは、見せられない。だってだって、もしかして彼女は……。
角を曲がった。
そっと手帳を空ける。
そこには検索終了の文字。そして、その下に記されていたのは……
ミヤマ ユリ
三山由利
2017年 死亡




