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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

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BL(ボーイズラブ)

高校時代に友達なくした話する

作者: やなぎ怜
掲載日:2026/07/19

 眠れないから高校時代に友達なくした話する。


 友達の名前は仮にAとしておく。ちなみに俺もAも男ね。


 Aとは小学校からずっと同じ学校に通ってた。半端な田舎だったから、自然と小中高同じだった。


 陰キャクソオタクの俺とは違って、Aはクラスでは存在感のあるやつだった。間違ってもウェイ系ではないのだが、穏やかで大人びていて成績のいいAはだれからも一目置かれているという空気があった。目立ってはいたけど、自分から目立ちに行くタイプではないというか。


 Aと話すようになったのは小四のときで、家庭内がごたついて不登校になった俺の家にAがプリント届けにやってきたからだった。自発的にではないと思う。教師に言われたんだろう。俺が不登校してたのは一ヶ月半くらいだった。でもそれがきっかけで、学校でもAと話すようになった。


 特に深く考えもせず地元の中学に進んで、家の最寄り駅から二駅の高校を選んで、なんだかんだAとの付き合いは続いた。会ったら話するし、Aがスマホ買ってもらえたときには連絡先を交換した。嫌われてはなかったと思う。


 高一の夏休みに入って、夏期講習がすぐに始まって、たしかその課題をAの家でしようという話になって、Aの家にお邪魔した。Aの家に入るのは初めてじゃなかった。ただAの家に行くはずだったもうひとりが、都合が悪くなったとかで俺ひとりになった。Aの家族はいなくて、Aとふたりきりになった。


 もう課題の内容なんて思い出せないけど、クーラーの風が直接当たる感覚が気持ちよかったとか、Aが冷蔵庫から出してくれた飲み物がオレンジジュースだったとかは覚えている。


 どうでもいい話をしながら、だらだらと課題をやって、外の日が傾き始めたころ、窓の外から音が聞こえてきた。


 始めは祭りばやしかと思った。細く、太鼓を叩くような音が聞こえたから。でもよく聞いたらでんでん太鼓の音だとわかった。


 「なんででんでん太鼓?」と思ってAに聞いた。Aは「たまにある」と言った。その言い方が、上手く表現できないが、深く突っ込んで聞くのをためらわせた。言いたくないかな、と思って。勝手な解釈だが。


 Aの家から帰る道すがら、Aの部屋ででんでん太鼓の音を聞いたときの方角を見た。草ボーボーの空き地があった。住宅用地って言うの? そんな感じの場所。でもそのときにはでんでん太鼓の音は聞こえなかった。


 夏期講習のあいだはAの姿を見た。クラスのグルチャでも見た。でも夏休みに入ってからは俺とは接点がなかった。


 グルチャでもぜんぜんAを見なかったことに気づいたのは、夏休みが明けてからだった。Aは病気だとかで学校を休んでいた。担任は「病欠」とだけ言っていて、俺は夏風邪でも引いたのかと思った。でもこっちから連絡は取らなかった。ただグルチャでもぜんぜん見ないから、相当具合が悪いのかと思った。


 そうやって夏休み明けてもAが登校しないまま、一ヶ月が経った。


 突然、チャットでAに呼び出された。グルチャじゃなくて、個チャね。場所はAの家の近くにある緑地公園。


 俺はドキドキしながらAに会いに行った。もちろん不安でドキドキしてた。ドラマとかの見過ぎって思われるかもだが、Aは余命宣告されるような病気にかかっていて……とか想像してしまった。


 Aはベンチに座ってちょっとうつむいていた。およそ二ヶ月ぶりに見たAは、頬がちょっと痩せこけているように見えた。でも思ったよりは元気そうに見えた。


 Aからは「話しておきたいことがある」みたいなメッセを貰っていたので、「話ってなに?」と俺は聞いた。


 Aは「おれ、B先生と付き合ってるんだよね」って言ってきた。


 てっきり、病欠のことについて話をしてくるもんだと思っていたおれは、「は?」ってなった。意味を理解するまで時間がかかった。


 最初に書いたけど、俺もAも男。B先生も男。B先生は大学出たてで、今年うちの高校にやってきたばかりの新米だった。俺らと歳が近いから自然と人気者という立ち位置にいる教師だった。


 AがB先生の話をしたので、もしかして関係がバレて休んでるか、休まされてるのか? と俺は思った。


 でもAは「(俺の名前)くんだから言ったんだよ」と言った。その口ぶりから、Aが学校に来ないのは、B先生との関係が学校側にバレたからとかではないらしいとはわかった。


 Aから秘密を打ち明けられたことは理解できたが、神経を逆撫でされたような気持ちになった。Aの言ったことが事実であれば、B先生も不誠実な人間だと怒りが湧いた。


 けどそういう苛立ちだとか、怒りの感情はすぐにどこかへ行ってしまった。


 「子供がいるんだ」「え?」「おれのお腹の中にB先生との子供がいるんだ」。


 「だから学校休んでる」ってAに言われて、俺は意味がわからなくて、急にAのことが怖くなった。


 Aが愛おしそうな手つきで自分の腹を撫でる。たしかに、そうやって撫でると不自然に腹部が大きく出っ張っているのがわかる。


 Aがまた「(俺の名前)くんだから言ったんだよ」って釘を刺すように言った。今度はその言葉で俺が苛立つことはなかった。代わりにどうしようもなく怖くなって、そのあとしどろもどろになりながらAと会話して、別れた。このあたりの記憶はかなり曖昧。


 現実的な説明をするのであれば、Aの症状は想像妊娠とか腫瘍とか腹水なんだろう。


 でもAの腹の内側から小っちゃな足で蹴ったみたいに、ぽこってAの腹が小さく出っ張ったのを俺は見た。


 だからめちゃくちゃ怖くなって、逃げるようにAとは別れた。


 次にAを見たのは、台風が近づいて来てて、雨がしとしとと降っている日のことだった。


 校庭でAとB先生が抱き合うようにして燃えてた。灯油かなにかをかぶって、体に火をつけての心中だった。


 俺は近くで見ていないはずなのに、今でもバチバチっていう火の音を聞いたり、焦げ臭いにおいを嗅いだような気がしている。


 当たり前だけど、その日の授業はぜんぶ取りやめになった。ショッキングすぎたのか、ネットニュースにすらならなかったのが不思議だなと思ったことは覚えている。


 AもB先生も助からなくて、経緯が経緯だからなのか、Aのお葬式もB先生のお葬式もなかった。Aの家はそのあとすぐに他県へ引っ越したと聞いた。


 噂で、骨が三人分あったと聞いた。これは嘘だと思う。骨になるほど火勢は強くなかっただろうし。


 そういう噂がある一方、Aが妊娠していたというような話は聞かなかった。Aは本当に俺にだけ妊娠のことを言ったのだろうか? でも、だとしたらどうして? という疑問が残る。Aにはたまに話をするていどの俺よりも、仲のいい友達なんていくらでもいただろうし。


 AとB先生の心中事件のあと、すぐに台風が来たせいか、校庭にあった焼身自殺の跡はすっかり洗い流されてしまった。


 AとB先生の話は、そのうちにだれも触れなくなって、タブーみたいな扱いになった。俺の学年が卒業したあとに、どういう扱いになっているかまではわからないが。


 台風が去ったあと、校庭で骨を拾った。頸椎の一部に見える、そこそこ大きな骨が落ちていたので、拾った。その骨がAかB先生のものだとは思わなかったけど、拾って今は使っていない学習机の引き出しに入れた。


 だからなのかは知らないが、俺の部屋ではたまにか細い赤子の声と、でんでん太鼓の音が聞こえる。大学に進学して、実家を離れた今になっても、帰省して自分の部屋に入ると聞こえることがある。親は俺の部屋には入らないので、知らないと思う。


 声と音と、骨とに因果関係があるのかはわからない。


 でも今でも聞こえる。

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