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世界樹の守護者、アル~追放から始まるほのぼの英雄譚~  作者: タツダノキイチ
第三章

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初めての冒険実習02

ミシェルと会った翌日からさっそく冒険実習の準備が始まる。

行程は十日ほどらしい。

途中天候などの影響で足止めを食ったりした場合はその場で予定を変更することもあるのだそうだ。

そのことも考えて着替えは十分用意してくるようにとの指示があったが、僕らは、

「魔法鞄はお持ちになりますか?」

「うーん。大丈夫かな? 念のための薬とか行動食は騎士さんたちが運んでくれるらしいし。いつもの冒険の時の荷物で十分だよ。着替えもそんなには必要ないからね」

「かしこまりました」

と慣れた感じでさっさといつもの冒険の準備を整えていった。

そして、当日。

これでもかというくらい荷物を持ち込もうとしたアンネさんを随行の騎士さんが苦笑いで窘めるという一幕を経て無事出発する。

アンネさんは最後まで「ドレスは一着までと言われてしまいましたが、どうすればいいのでしょうか……」と嘆いていたが、きっとこの冒険実習中にドレスを着る機会はないから心配ないだろうと思って、僕はひっそり苦笑いを浮かべた。

みんなを乗せた馬車が列をなして街道を進んでいく。

馬車はまるで駅馬車のような大きさで、内装もかなり充実していたから、僕はなんとも思わなかったけど、シャルさんは、少し不満な様子で、

「……お尻が痛いですわ」

と、こぼしていた。

そんな一行を乗せた馬車はいくつかの宿場町を通り、順調に進んでいく。

途中の宿場町では宿に泊まることになったが、さすが貴族の子弟も通う学院のことだけあって、宿をまるまる一棟貸切ってくれていたのには相当驚いた。

「すごいよね……」

「ああ。豪儀なもんだ」

と感心する僕とミシェルに対し、アンネさんやシャルさんは、

「私ひとりで眠れるかしら?」

「ええ。私も不安ですの。アンネ様、よろしければ今夜はご一緒しませんこと?」

と、相当不安そうな顔をしているのが印象的だった。

そんな旅も順調に進み、実習地の森の入り口に到着する。

ここからは馬車ではなく徒歩で移動するとことになっていたが、案の定、運動になれないアンネさんやシャルさん、ノンナさんは途中でへたり込んでしまった。

「もうだめですわ。一歩も動けません」

「ええ。私も……」

「……はぁ、はぁ」

という三人のために全体が小休止を取る。

僕が、どうしたものかと思い、

(最悪、身体強化を使えば一人はおぶって移動はできるけど、それはさすがになぁ……)

と考えていると、後ろから何頭かの馬を連れた一団がやってきた。

「よく頑張ったな。歩けない生徒は馬に乗せるから申し出てくれ。くれぐれも甘え過ぎるなよ」

と言いながらハミング先生が苦笑いしているから、きっとこれも毎年のことなのだろう。

僕はそんなことを思って苦笑いしながら、さっさと馬に乗り込むアンネさんたちを見つめた。

馬車もギリギリなら通れるかもしれないくらい広い林道を慣れた調子で歩いていく。

「ミシェルはずいぶん慣れてるんだね?」

「おう。採石場ってのはどこの国でも山奥にあるもんだからな」

「ああ、そう言えばそうだね」

「おう。だから野営もお手のものってわけよ。ていうか、アルもずいぶん慣れてるな」

「うん。僕も小さい頃からキャンプとか冒険の練習をしてきたから、このくらいならなんともないかな」

「へぇ。そいつはすげぇな。てことは将来は冒険者にでもなるのか?」

「うん。そのつもりだよ」

「そうか。じゃあお互い慣れたものってことだな」

「そうだね」

と気さくに話しながら進んでいると、やがて先導の騎士さんが、

「もうすぐ着くぞ。頑張れ」

と声を掛けてきてくれた。

やがて、開けた広場のようなところに着く。

そこは運動場くらいの広さがあって、野営に必要なかまどや水場、それに大きめの東屋まで完璧に備わっていた。

「これじゃキャンプより楽ちんだな」

と苦笑いするミシェルと一緒にさっそくテントの設営に取り掛かる。

僕らの設営はあっと言う間に終わったので、その後は他の生徒たちの設営を手伝って回った。

そして、夕飯の支度が始まる。

料理は班ごとに行うことになっていたが、僕とリエラさんくらいしかまともな調理経験がないらしく、ほとんどの作業を二人で行うことになった。

それでも健気に手伝うと言ってくれるアンネさんたちがタマネギを切って涙を流したりするお約束の場面を挟み、カレーが完成する。

アンネさんやシャルさん、ノンナさんは初めて自分の手で作ったカレーに感動したのか、

「私こんなに美味しいカレー初めて食べましたわ」

「ええ。これを自分で調理したかと思うと信じられませんわね」

「ええ。本当に……」

と感動した様子で微笑みながらカレーを頬張っていた。

(ああ、やっぱりみんなとこうやって外で食べる料理はおいしいなぁ……)

と思い、昔のことを思い出す。

ライラちゃんやリリカちゃんはキャンプの時、いつも笑顔だった。

(みんな元気かな?)

と思うと少ししんみりした気持ちになってくる。

そんな僕の横でミシェルが、

「俺もちったぁ料理を覚えた方がいいかもしれねぇな。野営中は行動食で十分だと思ってたが、こうしてカレーを食ってみると、美味いもんだってのがよくわかったぜ」

と、しみじみした様子でつぶやいた。

「料理は冒険者の基本なんだって。冒険中のご飯は体と心を健康に保つ薬みたいなものだって言ってたよ」

とユリウスさんの言葉を伝える。

するとミシェルは本当に目から鱗が落ちたような顔で、

「なるほどなぁ……」

と言い、大きくうなずいていた。

その後、

「どうしましょう。本当にお外で寝るのね……」

と不安がるアンネさんやシャルさんをリエラさんがなんとか宥めてテントに連れていき、僕らもそれぞれのテントに入る。

僕はなんだか昔を思い出して懐かしくなりながらも、どこか温かい気持ちでゆっくりと目を閉じた。


翌日。

朝から、森でハイキングをすることになり、それぞれの班に地図が渡される。

場所は近くにあるという大きな泉らしい。

そこで、昼食を取って少し遊んでから戻ってくるというのが今日の日程ということだった。

随行の騎士さん曰く、要所、要所に騎士が立って案内してくれるが、道はまっすぐで迷いようがないそうだ。

それでも、一応念のため周辺地図を渡されたのはきっと冒険の基礎は地形を読むことだということを教えるためなのだろう。

そんなことを思いながら地図を受け取り、先頭に立ってみんなを引っ張っていく。

進む道はなだらかで距離もそんなに遠くないから、大丈夫だろうとは思ったが、アンネさんたちのために途中休憩しながら進み、ぼくたちはなんとか無事、目的地にたどり着くことができた。

「お疲れ様でした。昼食はあちらで準備しておりますから、各自受け取ってください」

と言ってくれる騎士さんにお礼を言って、サンドイッチを受け取りに行く。

サンドイッチはいかにも騎士さんが作ったらしい無骨なものだったけど、森の中で軽く汗をかいた後、綺麗な景色を見ながら食べたせいか、かなり美味しいと感じられた。

その後、みんなでちょっと水遊びをしたり、のんびりお昼寝をしたりして和やかな時間を過ごす。

そして、そろそろ野営地に戻ろうかというところで、ふと妙な気配に気が付いた。

全身の魔力を集中して、気配がした方を探る。

すると森の影でなにか小さな影が動いた。

「何かいますっ!」

と叫んで影がいた方に駆ける。

すると、随行の騎士さんが慌てた様子で、

「全員、退避! 騎士に従って行動しろ。まずは集まれ!」

と号令をかけた。

すぐに、騎士さんの一人が僕のところに駆け寄ってきて、

「何がいた?」

と聞いてくる。

僕は油断なく森の方をみながら、

「あれです」

とゴブリンを指さした。

「なっ!?」

と驚く騎士さんをよそ目にワラワラとゴブリンが湧いてくる。

その数、およそ二十くらいだろうか。

手にこん棒を持っている個体がいるから、おそらくリーダー付きだ。

(ちっ。これは奥にまだいるな……)

そう思って僕は油断なく剣を抜くと、

「おそらくリーダー付きです。奥にもっといます」

と告げ全身に魔力を巡らせていった。

「一般の生徒は固まって動くな。間違っても魔法は撃つなよ!」

と後ろに注意をする騎士さんを他所に僕は目の前のゴブリンに突っ込んでいく。

そして、クルニ村で教えられた通り、当てては次へという動きを繰り返し、ずんずん森の奥へと進んでいった。

「あっ!? こら!」

という声が聞こえたが、今はそんな場合じゃない。

おそらく集団戦をしかけられればこちらにけが人の一人くらいは出てしまうだろう。

そう思ってリーダーを潰しにいく。

案の定ゴブリンは投石なんかで僕をリーダーに近づけさせないように動いてきたが、僕はそれをものともせず、群れの中心を目指し、何匹かのゴブリンを斬った後、無事、リーダーを潰すことに成功した。

(よし。あとは殲滅戦だ)

と思い、手当たりしだいにゴブリンを斬っていく。

そして、何匹斬ったか数えるのも面倒なほどゴブリンを斬りながら元の場所に戻ると、そこにも数十匹くらいゴブリンの死骸が転がっていた。

(百近くいたってこと?)

と驚きながら騎士さんに近寄っていき、

「リーダーは倒しました。あとは残党狩りです」

と状況を伝える。

そして、

「わかった。あとは任せて下がっていてくれ」

と言われたので、僕は大人しく引き下がり、みんなのもとに向かった。


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