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世界樹の守護者、アル~追放から始まるほのぼの英雄譚~  作者: タツダノキイチ
第三章

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初めての冒険実習01

学院に留学して半年が経つ。

僕はすっかり学院生活に慣れ、アンネさん以外の級友とも時折言葉を交わすようになっていた。

そんな日の昼。

いつものようにアンネさん、シャルさん、リエラさん、ノンナさんと一緒の席で昼食をとる。

「そろそろ冒険実習ですわね」

「ええ。初回は全員参加ということですが、気が重いですわ」

「あはは! 私は楽しみでしょうがないけどね!」

「もう。リエラはいいわよ。でも私たちみたいな戦闘とは無縁の人種にとっては辛いものだわ……」

「大丈夫ですよ、ノンナさん。初回の冒険実習はキャンプみたいなものだし、魔獣の出てくるようなところにはいかないから、ちょっとした旅行気分でいけばいいって先生もおっしゃってたじゃないですか」

「アル君はそういうけど、体力のない私にとっては、ちょっとおっくうだわ……」

「あはは! ノンナは日ごろ研究ばっかりで外に出てないからね。でも、これもいい経験だと思って頑張りなよ」

「……もう、リエラったら」

と話していると、そこに珍しい人物が現れた。

「ハミング先生、こんにちは」

「ああ。こんにちは。ちょっと邪魔するぞ」

「はい。どうしたんですか?」

「ああ。ちょっとみんなに頼みがあってな」

「頼み、ですか?」

「ああ。実は近々留学生がやってくることになったんだが、今度の冒険実習の時、その人物をみんなの班に入れてやって欲しいんだ。なに、身分も実力も確かだから、邪魔にはならんと思うが、頼めるか?」

「ええ。私は構いませんよ。というよりも、そのご身分があられるので私たちの班しか頼むところがないということなのでしょ?」

「まぁ、そういうことだ。一応この学院では身分は関係ないといっても最初からいきなり庶民と組ませるわけにもいかんからな。すまんが、頼む」

「かしこまりました。で、どちらのどなた様かうかがってもかまいませんこと?」

「ん? ああ。ドワーフの国ドロテア王国の公爵家、エルストイ家のミリシエル様だ。なんでも将来を期待される秀才らしいから、アルフレッドと気が合うんじゃないか?」

「いえ。そんな素晴らしい方と比較されても……」

「はっはっは。君は相変わらずだな。まぁいい。とにかく、そういうことだから頼んだぞ?」

「はい。かしこまりましたわ」

という話しをしてハミング先生が戻っていく。

僕らは、

「なんだか妙なことになったわね」

「ええ。でもどんな方なのか楽しみですわ」

「あはは。いい男だといいね!」

「もう。リエラったら……」

「あはは。僕も楽しみです。どんな人なんでしょうね」

とまだ見ぬ留学生のことをあれこれ話しながら楽しく食事を続けた。


それから数日。

いつものようにアンネさんと連れ立って教室に入る。

すると教室に見知らぬ人がいるのに気が付いた。

身体的な特徴からいってドワーフのようだが、見た目の年齢的には僕とさほど変わらないように見える。

「あら。きっとあの方ですわね」

そう言ってアンネさんがその人に近づき、

「ごきげんよう。失礼ですが、ミリシエル・バン・エルストイ様でいらっしゃいますか?」

と声を掛けた。

「ああ。そうだが、そちらは?」

「申し遅れました。私、この一組で級長をしております、アンネローゼ・ファン・シャリフィードと申します」

「おお。貴女がシャリフィード公爵家の姫でしたか。こちらこそお初にお目にかかる。なんでも、当面の間面倒を見てもらえるとか。よろしくお頼み申しますぞ」

「ええ。こちらこそ」

と挨拶を交わし握手をしている二人に僕も近づくと、

「今度の冒険実習の時一緒の班になるアルフレッドです。初めまして」

と自己紹介をし、握手を求めた。

手を握った瞬間ミリシエル様の表情が引き締まる。

「すごい魔力だな。さすがは魔導学院の生徒ってところか?」

と、いきなり言ってくるミリシエル様に、

「えっと。そちらこそすごいと思いますが……」

と少し遠慮気味に返す。

そんな僕をミリシエル様はさらに驚きに表情で見てきたが、すぐにその表情を崩すと、

「はっはっは! 面白れぇところに来たもんだぜ!」

と、いきなり言葉を崩して豪快に笑い始めた。

「ああ。すまん、すまん。こっちが地なんだ。いやぁ、公爵家の生まれっていってもよ、いわゆる妾腹ってやつで育ちは市井なんだ。すまんが、ここではこっちで通させてくれ」

「あ、はい。僕は大丈夫ですよ」

「ほう。そうか。よろしくな。ああ、俺のことはミシェルでいいぜ。親しい連中はみんなそう呼ぶんだ」

「そうなんですね。じゃあ、僕のこともアルと呼んでください」

「おう。わかった。アルな。よろしく頼むぜ」

と急にくだけるミシェルの態度に少し戸惑いつつも、

「こちらこそよろしく」

と笑顔で応じる。

それを見ていたアンネさんが、

「あら。やっぱり男の子同士は仲良くなるのが早いですわね」

と微笑みながら言うが、ミシェルはどこか気まずいような苦笑いで、

「申し訳ないが、学院にいる間は自由にさせてもらうと嬉しい。……まぁ、家の連中は礼法も覚えてこいとうるさいが、そんなのこっちの知ったことじゃないからな」

と、さらりと言ってのけた。

「うふふ。私も構いませんよ。それでは私のことはアンネとお呼びください」

「おう。ありがてぇ。アンネの嬢ちゃんな。よろしく頼むぜ」

「あら。嬢ちゃんだなんて……。私そんな歳でもありませんことよ?」

「はっはっは。なに。嬢ちゃんは嬢ちゃんさ。お貴族様の箱入りさんなんだからよ」

と笑うミシェルにアンネさんが困ったような笑顔を浮かべる。

僕は心の中でなんとなくガルボさんを思い出し、なんとも懐かしい気持ちになった。


その日の昼。

さっそくミシェルも誘ってみんなで昼食をとる。

そこでは当然ミシェルの生い立ちの話になった。

「いや。別に隠すことでもなんでもねぇからしゃべっちまうが、いわゆる渡りに船ってやつだったんだよ。うちは代々鍛冶屋だったから、ガキのころからずっと鍛冶の修行してたんだけどよ? いつか魔導技術を学んでみてぇって思ってたのさ。そしたらいきなり実は公爵家の血が流れてるってのがわかっちまってよ。まぁ、ほんとに偶然わかっちまったんだが……。そこで俺は、じゃあ、学費のひとつくらい出してもらえるんじゃねぇかって思って勝手に公爵家に直談判にいったってわけさ。そしたら、魔力がすげぇだの、腕っぷしが強いだのってのがバレてよ。なんだかんだあってここにきたってわけさ」

とあっけらかんと話すミシェルの様子にみんなぽかんとしている。

しかし、僕は、

「家に認められてよかったね」

と素直な感想を述べた。

全員が「?」という顔になる。

そこで僕はなんとなく自分の生い立ちをかいつまんで話した。

「まぁ! なんてことなの!? そんなのひどいわ!」

とアンネさんがいかにも立腹した様子で珍しく声を荒らげる。

他のみんなも同様に言ってくれたが、僕は、

「いえ。結果として僕はクルニ村に行くことができましたし、そこでたくさんのいい出会いがありました。だから、あれでよかったんだと思っているんですよ」

と今自分が思っている正直な想いを伝えた。

「そっか。まぁ、人生いろいろってやつだ。なにがどう転んでどうなるかなんて誰にも分らねぇ。結果今の自分が幸せってんなら、それはアルにとっていいことだったんだろうよ。まぁ、俺もそうだったしな」

「ええ。今のアル君があるのもきっと運命の巡り合わせなのね。大丈夫よ。これからはきっと素晴らしい未来が拓けるわ」

と言ってくれるみんなに照れつつもその言葉を嬉しく受け取る。

そして僕は改めてこれまで出会った全ての人に感謝しながら、お昼のパスタをもりもりと口に運んだ。


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