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世界樹の守護者、アル~追放から始まるほのぼの英雄譚~  作者: タツダノキイチ
第二章

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初めての冒険04

翌朝。

また素早く支度を整えてさっそく出発する。

さすがに今日はライラちゃんも早起きをしてきた。

そんな引き締まった感じで獣道を歩いていると、先頭を歩いていたミュウさんが足を止め、

「ロロア様!」

と少し緊張した声を発する。

その声にロロアさんが、急いでミュウさんに近づくと、

「おいおい……。これはオークだね。まさかこんなところに……」

と驚きの表情を浮かべながら、どうやらオークの痕跡に当たってしまったようだとつぶやいた。

「どうしますか?」

と訊ねるミュウさんにロロアさんは少し悩んだ末、

「どうやら『はぐれ』だね。ちょっと予定とは違うけど、一匹なら問題無いはずだ。このままこの痕跡を追おう」

と追跡する判断を下す。

その言葉にミュウさんもうなずき、

「アルちゃん、ライラちゃん。いきなりオークって言われてびっくりしているかもしれないけど、大丈夫よ。ガルボとの試験でやったことを思い出して。落ち着いて対処すれば負ける相手じゃないですからね」

と僕たちを安心させるような言葉を掛けてきてくれた。

「「はい!」」

と緊張しながら返事をし、ミュウさんに教えてもらいながら痕跡を追っていく。

その痕跡は大きくわかりやすかったので初めて見る僕たちもそんなに苦労せず追っていくことができた。

やがて、少し開けた場所に出る。

岩陰に隠れて辺りを確認すると、その中央に、大きくて黒い影がうずくまりなにやしているように見えた。

「ご飯の時間だったみたいだね。餌はゴブリンかな?」

というロロアさんの言葉を聞いて、良く状況を観察してみる。

すると醜悪な豚の怪物のような巨体がゴブリンらしいものを手掴みでボリボリと貪っていた。

「うげぇ……」

と横からライラちゃんの正直な感想が聞こえてくる。

僕も心の底から湧き上がってくる気持ち悪さをなんとかこらえ、ロロアさんに、

「いけます!」

と告げた。

「うん。どうやら本当のはぐれのようだし、それほど大きな個体でもないようだね。問題無いと思うが気を付けるんだよ?」

「「はい!」」

と、しっかり返事をして剣を抜く。

(これが初めての実戦か……。いつも通り、いつも通り……)

と自分で自分に声を掛けていると、横からライラちゃんが、

「いつも通り、しっかりやろうね!」

と、本当にいつも通りのニカッとした笑顔で声を掛けてきてくれた。

「うん!」

と僕も少し気持ちを楽しながしっかりとうなずき返す。

そして僕はゆっくりと体の中に魔力を循環させ始めた。

「いける?」

「うん」

「じゃあ、いくよ!」

というライラちゃんの声に合わせてオークのもとに駆けていく。

身体強化を使って全力で駆け抜けたが、僕たちが一撃を加える前にオークの方も僕たちの存在に気付いたようだった。

「気付かれたよ!」

「うん。いつも通りね!」

「了解!」

と応じて二手に分かれる。

あの日、ガルボさんとの最終試験でやったように僕らは二手に分かれてオークの注意を散らす作戦にでた。

まずはライラちゃんが牽制の風魔法を放つ。

それに怒ったオークがライラちゃんめがけて拳を振り下ろしたので、

(今だっ!)

と瞬時に判断してオークの背中に思いっきり風魔法を叩き込むと、オークが、

「ブモォォッ!」

と悲鳴を上げてのけぞった。

「もらった!」

と叫んでライラちゃんがオークの懐に飛び込む。

僕は万が一に備えて防御魔法を展開したけど、その万が一は起こらなかった。

ライラちゃんの剣がざっくりオークの脇腹をえぐってオークが声も無く倒れる。

そして、僕がすかさずトドメを刺すと、あっと言う間に僕らの初陣は終わった。

「はぁはぁ……」

と少し肩で息をしつつもライラちゃんと手と手を打ち合わせて初勝利の喜びを共有する。

「やったね!」

「うん。上手くいってよかったよ」

とお互いに健闘を称え合っていると、そこのミュウさんが駆け寄ってきた。

「よくできました!」

と少し涙ぐみながら僕らをまとめて抱きしめてくれるミュウさんにちょっと照れつつも、

「ちゃんと稽古通りにできましたよ」

「うん。いつも通り落ち着いてできた!」

と嬉しい気持ちで報告をする。

そんな僕らにミュウさんは「うんうん」とうなずくと、無言でさらに強く抱きしめてきた。

「いやぁ、見事だったね。とりあえず初勝利おめでとう」

「ありがとうございます」

「まぁ、今回は一匹だったからこんなもんかな。帰ったら複数相手の練習もしなくちゃね」

「「はい!」」

「とにかくおめでとう。少し休んで解体したら今日は拠点に返ろう。ミュウ。美味しいものをたくさん作ってあげてくれ」

「はい。かしこまりました」

そんなやり取りをして、喜びをかみしめたあと、少し休んで次にミュウさんに解体を習う。

オークの素材は牙と魔石、それに安いが皮も一応、売れるという話しだったので、その解体の仕方を丁寧に教えてもらった。

「うげぇ……」

というライラちゃんの正直な感想の通り初めての解体はなかなかきついものがあったけど、

「これも冒険者の大切なお仕事だから、ちゃんと覚えるのよ」

と言うミュウさんにしっかりうなずいてなんとか目をそらさずに解体を終えることができた。

荷物をまとめて帰路に就く。

オークの皮は重たかったけど、ライラちゃんと手分けしてなんとか持つことが出来た。

「私たちみたいに魔法鞄がある場合は別だけど、慣れた冒険者だったら皮は置いていくことの方が多いわね。安いし、かさばるから敬遠されちゃうの。でも、新人冒険者にとっては大切な収入のひとつだから、丁寧に扱うことを忘れないでね」

というミュウさんの説明に、

「「はい!」」

と応えて森の中を進んでいく。

しかし、そこでまた先頭を行っていたミュウさんが足を止め、僕らにもとまるよう手で合図を出してきた。

「どうします?」

「あちゃー……。本当にどこにでも湧いてくるねぇ……」

「数は十くらいでしょうか?」

「そうだね。私たちなら一瞬だけど、ちょうどいい集団戦の稽古になりそうだから任せてみようかな」

「……危なくありませんか?」

「ふっ。ミュウは心配し過ぎだよ。なに、オークと違って一撃で十分倒せるから連携も最低限でいいだろうし、二人ならなんとでもなるだろうよ」

と話しているから、きっとゴブリンの痕跡を見つけたんだろう。

そう思っていると、案の定ミュウさんが、

「ゴブリンですよ。数も少なくてちょうどいいみたいだから痕跡を追っていきましょう。ゴブリンの痕跡は小さいけど、この森で一番よく見かける痕跡のはずだから、よく覚えるようにね」

と声を掛けてくる。

僕たちはそれに、

「「はい!」」

と、また引き締まった返事をして、さっそくミュウさんの指導の下、その小さな痕跡を追い始めた。

「しかし、なんでまたこんなところに……」

「うーん。帰ったらユリウスに報告かな?」

「ええ。一度調査してもらう必要がありそうですね」

「ああ。ついでに世界樹の意見も聞いて来てもらおう」

「はい」

ロロアさんとミュウさんが話しているのをちらりと聞いて、なんとなく不安な気持ちになる。

(この森になにか異常があるってこと? でも、サクラはなにも言ってこないし、大丈夫なのかな?)

と思ってサクラに目をやるが、サクラは「どうしたの?」という顔で僕を見つめ返してくるだけだった。

そんなサクラに苦笑いを返し、再び集中して痕跡を追い始める。

すると今度は森の中のちょっとした窪地にゴブリンが十数匹たむろしているのが見えてきた。

木陰から慎重に相手の様子をうかがう。

ゴブリンたちは何をするでもなく、固まってどうやらゆったりと休憩をしているようだった。

「いい? ゴブリンは弱いわ。だから力よりも速さと手数を重視するんですよ。一撃当てたらすぐ次にって感じにね。手数を出す練習はいつもの稽古でやってるでしょ? あの通りでいいですからね」

と優しく説明してくれるミュウさんにしっかりとうなずきライラちゃんに視線を送る。

するとライラちゃんもしっかりうなずいてくれたので、僕は荷物を下ろし、再び全身に魔力を循環させ始めた。


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