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世界樹の守護者、アル~追放から始まるほのぼの英雄譚~  作者: タツダノキイチ
第二章

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世界樹へ07

「使い方はアル、あなた次第よ」

と言ってくれる世界樹に、

「ありがとうございます。自分の信じた正しい道のために使うことをお約束します」

と答えると、世界樹はまた嬉しそうに優しい魔力で僕の体を包み込んできた。

「アルなら大丈夫。それにみんなもついていますからね。お友達を信じて正しいと思った道を行きなさい」

と言ってくれる世界樹に心の中でしっかりうなずき、幹からそっと手を放す。

そんな僕にみんなが、

「おめでとう」

「よかったね」

「お疲れ様でした」

「はっはっは。これでもっと強くなれるぞ」

「みゃぁ!」(これからもよろしくね!)

「きゅきゅっ!」(一緒に頑張ろうね!)

「わっふ!」(私も頑張るよ!)

と声を掛けてきてくれた。

「みんな。ありがとう。これからもよろしくね」

と返して微笑む。

そして、

「じゃぁ、無事挨拶も終わったことだし、今日はいっちょ豪勢にやろうか。ミュウ頼んだよ」

「はい。かしこまりました」

というロロアさんの言葉をきっかけにして、僕らはその場で野営の準備にとりかかった。

ユリウスさんとガルボさんが焼き台を用意し、ミュウさんが用意してくれた肉や野菜が刺された串をどんどん焼いていく。

僕も焼くのを手伝いながら、みんなと楽しく串にかぶりついた。

「んみゃぁ!」(美味しいね!)

「うん。今日のお肉は特に美味しいや」

「きゅきゅっ!」(嬉しいことがあったからかな?)

「わっふ!」(きっとそうだよ。お祝いのお料理っていつも美味しいもん!)

「あはは。そうだね。ありがとう」

と、みんなでワイワイ言いながら楽しく食事を進めていく。

そのうち大人たちはお酒を飲み始め、

「これでアルも一人前の仲間入りだな」

「お。ってことは酒も飲めるってことか?」

「バカ言うんじゃありません。そんな事させていいわけないでしょ」

「おいおい。冗談だ。そんなに怒るなよ」

「冗談でもアルちゃんの健康に良くないことは言わないでください」

「ははは。ミュウは相変わらず心配性だね」

「子供を心配するのは当たり前のことだと思いますよ?」

「まぁ、そうだろうがな。そろそろアルも学問所を出ようかっていう歳なんだ。もう少し大人扱いしてやらんと逆に嫌われるぞ?」

と楽しく会話をし始めた。

そんな話を聞きながら、

(そっか……。僕、ようやく認められたんだ……。よし。これからはいっそう頑張らなくっちゃ)

と改めて気合を入れる。

そんな僕にみんなが、

「アルなら大丈夫さ」

「ええ。アルちゃんならきっと正しい道に進めるわ」

「みんなを信じて進めばいいよ」

「ああ。自分の信じた道を堂々と歩いていけばいい」

「みゃぁ!」(アル、一緒に頑張ろうね)

「きゅきゅっ!」(大丈夫だよ!)

「わっふ!」(私も頑張るもん!)

と声を掛けてきてくれた。

「うん。ありがとう!」

と笑顔で応じ、また肉にかじりつく。

その日の夜はまたみんなのもふもふに包まれ、このうえなく充実した気持ちでゆっくりと眠りに就いた。


翌日から帰路に就く。

帰りも相変わらず魔獣が出てきたけど、僕は少し慣れた感じで、

(リザードってあんな感じなんだ。なんかぬめぬめしてそうだし、ちょっと気持ち悪いな)

とか、

(あれがコカトリスか……。美味しいから揚げいつもご馳走様です)

というような感想を持ちつつ、みんなの活躍をしっかり見届けることができた。

おそらく厳しい道のりをなんなく歩いていく大人のみんなを見て、

(僕も将来こんな立派な冒険者になれるのかな?)

と正直不安に思う。

そんな僕にサクラがじゃれついてきつつ、

「にゃぁ」(大丈夫よ)

と言ってくれた。

きっと僕の表情に不安が現れていたのだろう。

僕は、

(もうちょっと自信を持たなきゃ。大丈夫、みんながついてるんだからね)

と思いつつ、

「ありがとう」

と言ってサクラを撫でてあげる。

するとデイジーとスミレも僕に甘えてきて、僕のちょっとした不安は綺麗に消え去っていった。


やがて行きにマシロさんと待ち合わせた場所まで辿り着く。

「じゃあね。気を付けてお帰り」

と言ってくれるマシロさんに、

「ありがとうございました。これからもっと頑張って強くなります」

とお礼を言うとマシロさんは満足げに微笑み、

「スミレのこと、お願いね」

と言いつつ僕にその大きな顔を近づけてきた。

「はい。一緒に頑張ります」

と答えて軽くその大きな顔に抱き着く。

その後、みんなもマシロさんと別れの言葉を交わすと、マシロさんはスミレに、

「ゆっくりでいいからね。無理せず頑張りなさい」

と声を掛け、ゆっくりと森の奥へと去っていった。

「くぅーん……」

と寂しそうな声で鳴くスミレを慰めて、その場を後にする。

僕は西日が差し始めた空を軽く見上げ、

(僕、頑張るね)

と改めて自分の心に誓いを立てた。


二日後。

昼を少し過ぎたくらいになってようやく村に帰り着く。

慣れたあぜ道にほっとしながら急ぎ足で屋敷に戻ると、玄関先で掃除をしていたメルと目が合った。

「ただいま!」

と元気に帰還の挨拶をする僕に向かってメルが駆け寄ってくる。

そしてメルは僕に抱き着くと、

「ご無事で……」

と言ったっきり泣き出してしまった。

「大丈夫。どこも痛くないし平気だよ」

とメルを安心させるように言いながらその背中をポンポンと撫でてあげる。

するとメルはまだ涙を流しながらもなんとか微笑んで、

「おかえりなさいませ」

と言ってくれた。

「やぁ、待たせたね。留守中、なにもなかったかい?」

「はい。村のみなさんが良くしてくださいましたから……」

「それはよかった。さあ、今日はお祝いだ。盛大にいこう」

「はい。では先にお風呂の準備をしてまいります」

「じゃあ、私はさっそく料理に取り掛かりますね。アルちゃん、なにが食べたい?」

「うーん、ミュウさんの作るものってなんでも美味しいから迷っちゃいます……」

「わっふ!」(私ステーキがいい!)

「みゃぁ!」(私、お魚!)

「きゅきゅっ!」(ケーキも食べたいな!)

「あらあら。みんな食いしん坊さんね。うふふ。わかったわ、全部作るからたくさん食べてね」

「はい!」

とワイワイ話をしながら屋敷に入っていく。

玄関をくぐった瞬間懐かしい匂いに包まれ、僕は心の底からほっとし、

「ただいま」

と、つぶやいた。

「おかえり」

とロロアさんが応えてくれる。

僕はなんだか照れくさいような、でも嬉しい気持ちになって、

「はい!」

と笑顔で元気にそう応えた。

久しぶりのお風呂でゆっくりと冒険の疲れを落とし、ほかほかの体でリビングに向かう。

リビングに入るとメルがすぐにジュースを出してくれたので、それを飲みながらしばしみんなとじゃれあった。

そんな僕に、

「とりあえず、今日はたくさん食べてゆっくり眠るといい」

「そうだね。見た感じ魔力は安定しているみたいだけど、焦る必要はないんだから、ゆっくり能力を測っていこう」

「だな。剣の調整もしてやるから落ち着いたら稽古を見せてくれ」

とユリウスさんたちが声を掛けてくる。

「わかりました。ありがとうございます」

とお礼を言うと、みんな微笑ましい目で僕を見つめてきた。

少し恥ずかしいような気になり手近にいたスミレをワシャワシャと撫でる。

スミレはそれが嬉しかったのか、

「わっふ。わっふ!」

と鳴いて僕に頭を擦り付けてきた。

そこに、ミュウさんがやって来て、

「そろそろ食堂にどうぞ」

と声を掛けてくる。

「はーい」

と返事をして食堂に行くとそこにはみんなが大好きな料理がこれでもかというほど並んでいた。

「わんっ!」(お肉!)

「みゃぁ!」(お魚!)

「きゅきゅっ!」(ケーキもある!)

とみんなが喜びの声を上げる。

僕もナポリタンやハンバーグが並んでるのをみてワクワクしながら席に着くと、ガルボさんが、

「よっしゃ! 今日は宴会だ!」

と勢いよく宣言して楽しい食事が始まった。

「はっはっは! 相変わらずミュウのから揚げは美味いな。ビールによく合う」

「あら。ありがたいですけど、飲み過ぎないでくださいね」

「ふっ。無茶言うな」

「ははは。まぁ、いいじゃないか、今日くらい」

「そうだね。今日はアルが無事力を授かったお祝いだからね」

と言って大人たちが盛り上がっている一方で、僕たちも、

「本当にこのから揚げ美味しいね!」

「ええ。とっても。たくさんありますから遠慮なく食べてくださいね」

「わっふ!」(おかわり!)

「あらあら。スミレちゃんったら。ゆっくりおあがんなさい」

「わっふ」(はーい)

「みゃぁ!」(アル。お刺身取って?)

「うん。マグロでいいかな?」

「みゃぁ!」(鯛も!)

と言いながら楽しく食事を進めていく。

美味しいご飯と楽しい会話に笑顔の花が咲き、食卓をさらに彩り豊かなものにしていった。

そんな光景の中、メルが、

「やっぱりみんなで食べると美味しいですね」

と言い今にも弾けてしまいそうなほど満面の笑みを見せてくる。

僕も、本当にそうだな、と心の底から思い、満面の笑みで、

「うん!」

と元気よく応えた。

(明日からまた普通の毎日が始まるんだな。でも、なんだかそれが嬉しいや)

と思うと自然と胸を熱くなる。

そして、僕はこの楽しい日々がいつまでも続いて欲しいと思いながら熱々のから揚げにガブリとかじりついた。


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