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わんちゃんと新生活02

学問所に続くあぜ道をメルと一緒に歩く。

今日は初日だからメルと一緒だけど、明日からは一人で通うことになっていた。

「大丈夫ですか? 緊張されていませんか?」

と気づかわしげに言ってくるメルに、

「ありがとう。平気だよ」

と笑顔で答える。

僕の中にはたしかに緊張もあったけど、今はどちらかというと楽しみだという気持ちの方が大きかった。

そんなワクワクする気持ちを抱えて学問所に到着する。

僕は、

(いよいよだな)

と密かにやる気を漲らせながら、学問所の門をくぐった。

職員室に着き、

「おはようございます!」

と元気に挨拶をする。

すると、その場にいた先生たちからも、にこやかな、

「おはよう」

という声が返ってきた。

なんだか嬉しい気持ちになりながらニコニコしていると、そこへ所長のマーガレット先生ともう一人、ちょっと怖そうな男の人がやってくる。

僕はその男の人を見て、

(うわ。顔に傷跡がある……。昔、ケガでもしちゃったのかな?)

と心配したり怖く思ったりしながらも、

「初めまして、アルフレッドです。今日からよろしくお願いします」

と、きちんと挨拶をした。

そんな僕に、その怖い男の人が、

「ほう。お前がアルか。担任のグスタフだ。よろしくな」

とニッコリ笑って挨拶をしてくる。

僕は、

(顔はちょっと怖いけど、優しい人みたいでよかった)

と思いながら、

「よろしくお願いします。グスタフ先生」

と、もう一度元気に挨拶をした。

「うふふ。アルちゃんはお行儀がよくて偉いわね」

と言ってマーガレット先生が微笑みながら頭を撫でてくれる。

そんなマーガレット先生の笑顔に僕が少し照れてしまっていると、マーガレット先生が、

「じゃぁ、あとはグスタフ先生、お願いね。メルさんはこちらで手続きをいたしましょう。授業が始まったらちょっとだけ見学もしていってくださいね」

と言ってみんなを促がした。

僕はそこで一気に緊張し始めたが、そんな僕を見てグスタフ先生が、またニコッと笑って、

「なに。うちのガキはみんないいやつばっかりだ。安心していいぞ」

と少し乱暴に僕の頭を撫でながら心配無いというようなことを言ってくれた。

「はい」

と返事をしてから、メルに、

「じゃぁ、いってくるね」

と手を振ってグスタフ先生の後についていく。

そして、教室の前に着き、僕は緊張と興奮でドキドキする心臓を落ち着けるように、

「ふぅ……」

と、ひとつ深呼吸をすると、

「よーし。みんな席に着け。今日は新しい友達がきたぞ」

と大きな声で言うグスタフ先生の後について教室の中に入っていった。


「よし。じゃぁ、挨拶してみな」

と促されて、

「みなさん。はじめまして。今日から一緒に勉強することになったアルフレッドです。よろしくお願いします」

と挨拶をする。

すると、みんなからは、

「よろしくね!」

という声が次々と返ってきた。

その言葉とみんなの笑顔に安心して僕も微笑む。

「よし。じゃぁ、アルの席はあそこだ」

と言って指さされた空いている席を見る。

すると、一人の獣人の女の子が、

「こっちだよ!」

と言って手を振ってくれた。

「うん」

と答えてその女の子の方に向かう。

すると、その女の子は、

「あたしライラ! で、こっちがリリカね!」

と元気に自己紹介をしてきた。

「よろしくね」

と二人に微笑んで席に着く。

ライラは、

「うん。よろしく!」

と元気に挨拶をしてきたが、リリカと紹介された方の子は、少しはにかみながら、

「よろしくね」

と返事をしてきた。

「ははは。リリカ、ライラ、同じ一年生だから仲良くしてやってくれ」

と言うグスタフ先生の言葉に二人とも、

「はーい」

と返事をして、授業が始まる。

三年生と四年生は作文をすることになって、僕たち一年生と二年生はお絵描きをすることになった。

「あのね。クレヨンは後ろの道具箱にいっぱいあるから好きなのを選んでくるんだよ」

と言いさっそく僕の手を引き、教室の後ろにある道具入れの箱の方に連れて行ってくれるライラと一緒に教室の後ろに向かう。

「くれよんってなに?」

と聞く僕にライラがきょとんとしたような顔をして、

「クレヨンはクレヨンだよ!」

とニカッと笑って教えてくれた。

(あはは。それじゃ答えになってないよ)

と思いながら、その道具箱の中を見る。

するとそこにはいろんな色の小さなペンみたいな物がたくさん入っていた。

「うわぁ……」

と驚きながらその箱の中を見つめる。

そんな僕の後からリリカが、

「あのね。これでお絵描きするとね。きれいな色の絵がかけるんだよ」

と少しもじもじしながら使い方らしきものを教えてくれた。

「そっか。ありがとう。やってみるね」

と答えてさっそくみんなに混じっていろんな色のクレヨンを選んでいく。

いろんな色があって、僕はどれを選んでいいのか迷いながらも、僕はピンクと黄色と紫のクレヨンを選んだ。

さっそく席に戻って、

「ねぇねぇ。なに描くの?」

と聞いてくるライラに、

「えっとね。僕はお友達の猫とオコジョと犬の絵を描こうと思ってるんだ」

と、これから書くつもりの物を教える。

するとライラは少しきょとんとした顔になって、

「犬と猫はわかるけど、オコジョってなに?」

と聞いてきた。

そう言われてちょっと困る。

「えっと。小さくて長細くて、……えっと、イタチってわかるかな?」

とちょっとしどろもどろに答える僕に、ライラが余計ちんぷんかんぷんと言った表情を見せてくる。

僕が説明に困っていると、横からリリカが、

「あ。私イタチなら知ってるよ。あのね。図書館の図鑑で見たの。とってもかわいかった」

と言ってくれた。

「え? そうなの? やっぱりリリカって物知りだね!」

と言ってライラがニカッと笑う。

そんなライカにリリカが、

「えへへ」

とはにかんで僕たちはさっそくお絵描きを始めた。

(ライラちゃんは明るくて、リリカちゃんはちょっと恥ずかしがり屋さんなのかな?)

と思いながら、家で待ってくれているみんなのことを想像しながらクレヨンを紙に擦り付ける。

生まれて初めて触ったクレヨンはすっごく不思議な感じがしたけど、動かす度に綺麗な色が紙に移っていく様はものすごく楽しくて、僕はいつの間にか夢中になって絵を描いていた。

やがて、グスタフ先生の、

「よし。じゃぁ、そこまでにしよう。絵はお互い見せあいっこな。作文は俺のところに持ってきてくれ。途中でもかまわんぞ」

という言葉でお絵描きを切り上げる。

「あたし、お姉ちゃん描いたの!」

「私はお庭のお花」

「僕は家にいるお友達の猫とオコジョと犬を描いたよ」

と言ってみんなで絵を見せあいっこしながら、

「これがオコジョ?」

「うん。そのつもりで描いたんだけど、なんだかちょっと似てないや」

「うふふ。でも猫ちゃんは上手に描けてるね」

「うん。サクラっていう名前なんだよ」

と話しながらお互いの絵を見せあいっこしていると、そこにグスタフ先生がやってきて、

「お。なかなか上手に描けてるじゃないか。よし。帰ったらおうちの人にも見せてあげるんだぞ」

と声を掛けてきた。

「「「はーい」」」

と返事をしてまたみんなで絵を見比べる。

みんなでおしゃべりしながらいろんな話をする時間がとっても楽しくて、気が付けばグスタフ先生が、

「じゃぁ、今日はここまで。お弁当の子は手を洗ってこい」

とみんなに告げて今日の授業が終わってしまった。


「アル君はお弁当なの?」

と聞いてくるリリカちゃんに、

「うん」

と答えるとリリカちゃんは嬉しそうに、

「じゃぁ、お昼もみんな一緒だね」

と微笑みながらそう言ってくれた。

「そうなんだ。じゃぁ、みんなで一緒に食べよう」

と誘うと、二人とも嬉しそうな顔で、

「「うん!」」

と言って、さっそくお弁当を広げた。

ミュウさんの持たせてくれたお弁当には僕の大好きな甘い卵焼きやミートボール、それに小さなおにぎりが入っている。

僕はそれをみて、目を輝かせながらさっそく、

「いただきます」

と言っておにぎりを頬張ると、僕の横でライラちゃんとリリカちゃんも、

「「いただきます」」

と言って、それぞれにお弁当を頬張り始めた。

「みんなで食べると美味しいね」

と言う僕に、二人も、

「「うん!」」

と答えてくれる。

僕は生まれて初めてお友達と食べるお弁当の美味しさを噛みしめながら、リリカちゃんやライラちゃんと楽しくお話をし、時々おかずを交換しながら楽しいお昼ご飯を終えた。


お昼の後、

「また明日!」

と言って教室の前でみんなと別れる。

そして、学問所の玄関をくぐると門のところでメルが待っていてくれた。

「メル。待っててくれたの!?」

と、ちょっとびっくりしながら駆け寄っていくとメルは、

「はい。初めての学問所はいかがでしたか?」

と少し心配そうな表情で聞いてきた。

「大丈夫。とっても楽しかったよ。お友達も出来たんだ!」

と笑顔で報告すると、メルが安心したように微笑んで、

「それはようございましたねぇ」

と言って頭を撫でてくれる。

僕はそんな行為を少し恥ずかしく思いつつ、

「えへへ……」

とはにかんでメルに、

「じゃぁ、一緒に帰ろうか」

と明るく声を掛けた。

「はい」

と言って微笑むメルと一緒にまた長閑なあぜ道を通って家に戻っていく。

帰り道、

「あのね。今日みんなと一緒にお絵描きしたんだよ。サクラとデイジーとスミレのことを書いたからあとでみんなと一緒にみようね」

とメルに言うと、メルはまた嬉しそうに、

「はい」

と微笑んでくれた。


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