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わんちゃんと新生活01

デイジーがお友達になってしばらく経つ。

僕はようやくこの家での生活にも慣れ、今日もみんなで楽しく裏庭で遊んでいると、そこにこの前とは全然違う恰好をしたユリウスさんがやってきた。

「よう。アル。元気にしてるか?」

「はい! あ、新しいお友達が出来たんですよ」

「お! そうなのか? ほう……。オコジョか。名前は?」

「はい。デイジーっていいます」

「そうか。デイジー。私はユリウスだ。よろしくな」

「きゅきゅっ!」

と挨拶を交わしながら、ふとユリウスさんの後を見る。

するとそこには、「はっはっ」と息をしながら少し興奮しているような感じの大きなわんちゃんがいた。

「えっと。そのわんちゃんは?」

とユリウスさんに訊ねる。

すると、ユリウスさんはちょっといらずらっぽいような感じで微笑み、

「ああ。新しいお友達だぞ」

と言ってそのわんちゃんを手招きしてくれた。

「わっふ」

と返事をしてそのわんちゃんが僕に近寄ってくる。

最初はあんまり大きいからちょっとだけびっくりしたけど、よく見るとすごく可愛らしい目をしていて、優しい子なんだなっていうのがよくわかった。

「初めまして、アルだよ」

と自己紹介をしながら挨拶をする。

「わん」

と嬉しそうに鳴いてくれるわんちゃんに、

「お友達になってくれる?」

と訊ねると、わんちゃんはさらに嬉しそうな顔で、

「わん!」

と鳴き、僕に頬ずりをしてきた。

「ははは。くすぐったいよ」

と言いつつそのわんちゃんのふわふわでもこもこの感触を全身で受け止める。

するとまたそのわんちゃんから「お名前つけて」とお願いされたような気がした。

「お名前つけていいの?」

と聞く僕に、そのわんちゃんは、

「わっふ!」

と期待のこもった目を向けてくる。

僕はその紫色に輝く綺麗な目を見て、

「じゃぁ、スミレなんてどうかな?」

と、わんちゃんに提案してみた。

「わっふーん!」

と大きく鳴いて、わんちゃんが僕に頭を擦り付けてくる。

僕はその僕よりちょっと大きな体を全身で受け止めた。

「えへへ。よろこんでもらえてよかった」

と言った瞬間、僕とスミレを紫色の淡い光が包み込む。

そして次の瞬間、スミレが、

「わん!」(アル、よろしくね!)

と言って僕にキラキラと輝く綺麗な目を向けてきた。

「うん! よろしく!」

と僕も応えてそのふわふわでもこもこの毛をわしゃわしゃと撫でてあげる。

するとスミレはさらに喜んで、

「きゃうーん!」

と鳴いた。

そこにサクラとデイジーがやって来る。

「みぃ」(わたしサクラ)

「きゅきゅっ」(私はデイジーよ)

「わっふ」(うん。わしはスミレ)

とお互いに自己紹介をしあってなにやら楽しくじゃれ合い始める。

そんな光景を見て、僕は、

「あはは。みんな仲良しになれてよかったね」

と微笑みかけると、みんながそれぞれに、

「みぃ!」

「きゅきゅっ!」

「わん!」

と元気に返事をしてくれた。

そこへ、

「そろそろご飯の時間ですよ」

とメルが声を掛けてくる。

「うん。わかった!」

と元気に声を掛けると、みんなも、

「みゃぁ!」

「きゅきゅっ!」

「わん!」

と返事をした。

それを聞いたメルが、

「あら。新しい子ですか?」

とスミレを見て、聞いてくる。

「うん。さっきお友達になったんだ! あのね、スミレっていうんだよ」

とスミレのことを紹介するとメルはなぜだか嬉しそうに目を細めて、スミレの前で腰を低くすると、

「アル様と仲良くしてあげてね、スミレちゃん」

と言ってスミレを優しく撫でてあげてくれた。

「わっふ」

とスミレが気持ちよさそうな顔をしながら、

(うん!)

と返事をする。

みんなの笑顔がはじけて幸せな空気が流れる。

そこにユリウスさんもまじって、

「お友達が増えてよかったな」

と言って僕の頭をいつものようにぐりぐりと撫でてくれた。


その日の晩ご飯はユリウスさんも一緒に食べる。

「で。どうだった?」

と聞くロロアさんに、ユリウスさんが、

「ん? ああ、子を託された以外はいつも通りだったよ。マシロも元気にしてたぞ」

と、美味しそうにクリームシチューを頬張りながら答える。

その話の意味は僕にはよくわからなかったけど、「いつも通り」とか「元気だった」と言っているからきっと平和だったってことなんだろうなと思って、僕も嬉しく思いながらクリームシチューをたくさん食べた。

そして、夕食後。

ロロアさんが、

「ああ。そう言えば届いたから部屋に運んでおいたよ」

と、何気なく僕に声を掛けてくる。

僕は一瞬、

(なんのことだろう?)

と思ってきょとんとしてしまったけど、すぐになんのことか思い当って、

「ほんと!?」

と叫ぶように言うと、すぐに自分の部屋へと駆け出していった。

「あ。アル様。走ると危ないですよ」

というメルの声が後ろから聞こえてくる。

でも僕はそんな声を無視して急いで部屋へと駆けこんでいった。

部屋の隅に、たくさんの本が置いてある。

ぱっと見た感じでも数十冊はありそうだ。

(え? こんなに?)

と思って驚きながらさっそく手近にあった本を手に取ると「古代史」と書いてある。

(あれ? この国の歴史ってこと? えっと、それってたしかけっこう上の学年になってから習うんじゃなかったけ?)

と考えていると、僕の後から、

「ああ。面倒だと思って学問所に通う間に使う教科書を全部取り寄せておいたよ。あと、ついでに、ちょっと難しい参考書なんかもね。どうだい? 興味は持てそうかい?」

とロロアさんが声を掛けてきた。

「うん! ありがとう。とっても楽しみです!」

と返事をする。

ロロアさんはそんな僕をなんだか嬉しそうに目を細めながら見つめると、

「お勉強も、稽古も、遊びも、全力で楽しんでくれ」

と言って僕の頭をぽんぽんと優しく撫でてくれた。

「さて。これで準備も整ったし、さっそく明日から通ってみるかい?」

と言ってくれるロロアさんの言葉に僕はめいっぱい明るい声で、

「はい!」

と元気に返事をする。

そんな僕に、ロロアさんが、

「ははは。よし。じゃぁ、明日から稽古は午後にして午前中は学問所で楽しく勉強しておいで」

と言ってくれて僕は明日から学問所に通うことになった。


その日の晩。

ワクワクする気持ちとドキドキする気持ちを両方感じながらベッドに入る。

(学問所ってどんな感じなのかな? お友達できるかな?)

と、いろんなことを考えていると、なかなか寝付けなかった。

そんな僕の横にサクラがやって来て、

「みぃ」

と鳴き、いつものように丸くなる。

するとデイジーも僕の枕元にやって来て、同じように丸くなった。

「うふふ。一緒に寝てくれるの?」

と言って二人を交互に撫でてやる。

すると、そこにスミレもやって来て、僕の隣にぐでんと横になった。

「あはは。スミレ。ちょっと重いよ」

と言いつつも嬉しくてスミレを撫でてあげる。

そうやってみんなに囲まれているうちに段々体がぽかぽかしてきて、僕はいつの間にかぐっすり眠ってしまっていた。


翌朝。

いつも通りすっきりした気持ちで目覚める。

まだまだ眠そうなみんなに、

「おはよう」

と静かに声を掛け、僕は急いで身だしなみを整えた。

やがて、メルが僕を呼びに来ると、みんな揃って朝ごはんを食べにいく。

今日の朝ごはんもいつも通りとっても美味しくて、僕はもりもり食べてしまった。

「うふふ。楽しみですね」

と言うメルに、

「うん!」

と元気に答える。

朝食を食べ終えると僕はまた急いで部屋に戻ってもう一度今日持っていく物の確認を始めた。

「筆箱、帳面、教科書、ハンカチ……」

と何度も確認していると、そこへメルがやって来て、

「ハンカチは持ちましたか?」

と聞いてきた。

「うん。大丈夫だよ」

と答えてニッコリ笑って見せる。

もしかしたら、ちょっとドヤ顔をしていたかもしれない。

そんな僕にメルは微笑んで、

「では、まいりましょうか」

と言ってくれた。

「うん!」

と元気よく返事をして鞄を背負う。

そして、メルと一緒に玄関に向かうとそこにはロロアさんとミュウさんがいた。

「はい。お弁当ですよ」

と言ってミュウさんが可愛らしい包に入ったお弁当を渡してくれる。

僕はそれをとっても嬉しく思いながら受け取ると、

「ありがとう!」

と笑顔でお礼を言った。

「ははは。楽しんでくるんだよ」

と言って頭を撫でてくれるロロアさんに、

「はい!」

と元気よく返事をし、見送りに出て来てくれたサクラ、デイジー、スミレにも、

「仲良くお留守番しててね」

と声を掛ける。

そして、僕はみんなの顔をしっかり見て、

「いってきます!」

と元気に言うと、やっぱり笑顔のみんなに見送られて、いざ、学問所へ向けて出発していった。


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