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「ねぇ、好きなんだけど」
ピンクもぬいぐるみもない、女っ気の一つも感じない自分の部屋に声が響く。いつか言うつもりだった幼馴染に向けた言葉。
この言葉を使うことはなくなったかもしれない。
「違う、違う、こんなんじゃない」
はぁとため息をついても何もならない。こうなったのはあいつのせい。いや、手をこまねいた私のせいだ。
事が起きたのは三日前。
いや、その事を報告されたのが三日前。本当の事は五日前。
あいつが彼女を作った。
私が居ながら。あ、黙ります。すみません。小心者で居心地の良い関係のままでいいや~とか思っていました。だって遊び出掛けたり、仲良くしてる女子の情報なんてなかったもん!
すみません、黙ります。2回目はないです、はい、すみません。幼馴染マウントの悪い癖です。
「なんでも知ってるんだから!」
とか鼻高々と言ったことあります!懺悔します!うぅぅ・・・
「えぇ~ということで私、羽取 美結、幼馴染であり私の想い人である、小鳥遊 揺士を寝取ることを誓います」
次は
「ま、私、彼女だから。揺士のことはなんでも知ってるの」
とか言いたい!いや絶対に言う!
深く息を吐く。
部屋に沈黙。だが、それにふさわしい風貌をした少女がいた。
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一日後、月曜日。いつもは忌み嫌っていた曜日だが、始まりの曜日と考えればとてもいい曜日だ。ありがとう、月曜日。ありがとう、始まり。
保育所、小学校、中学校、高校の一年半、続いていた一緒の登下校が消えた。
は!?意味分かんないんだけど!
こっちは毎朝待ってやってたのに、あんたが無遅刻、無欠席なのは私のおかげでしょうが!!
揺:一人で学校に行ってくれ。俺はもう出たから
ですって!はぁ!!なんでこっちが頼まれる立場なのよ。ふざけんな!
どうせ、明日には寝坊して彼女を待たせて、学校にも遅刻するんでしょ。そうなったら言ってやるわよ、ざまぁって!
学校にて、
・・・どうやって話してたっけ?
私はどうやってあの机に近づいていった?
頭がぐるぐると回っていく。友達に話しかけられても上の空。ご飯は箸からポロリと落ちていく。
学校はイチャイチャするとこじゃないでしょ!勉学に励めよ、バカが!
笑顔を保つのも苦しくなってきたのに、自然と顔は、揺士と彼女の方に目が行く。
なんで、あんな新参者にとられなきゃいけないのよ。昨日、消化したはずの気持ちがまた逆流してくる。
連撃をくらった美結は弱りに弱って何もできなかった。
ただ2人の会話を羨ましそうに眺めるだけ。こんな自分に動揺もした。知らなかった弱点を突きつけられて。
何にもできない。何にもない。だから、とられた。
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