第7話 宿題なので黒歴史作ってきますね①
【登場人物紹介】
◆逢沖 悠斗 17歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡されたところから、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。妄想力には自信がある。
◆七瀬 水月 17歳
人工魔眼を持つ少女。2100年に起きた出来事で無意識に魔眼を使い、2070年の世界を再構築した。その後、公園で一人泣いていたところを悠斗に助けられ、今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 17歳
悠斗の幼馴染。大企業社長の娘でお金持ちのお嬢様だが飾る事がなく、割と庶民派。面倒見のいい性格で、悠斗と水月をいつも気にかけている。魔眼持ちのようだが……?
◆十文字 かれん 自称20歳
眼科で悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。魔眼の使い方に詳しく、他にもまだ明かしていない素性があるようだ。
◆煌々 輝夜 自称14歳
かれんの屋敷に同居している女の子。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い。かれんと同じくまだ謎が多い人物。
◆謎の男
???
謎の男との遭遇に加え、謎の本気を出した輝夜によって、悠斗達は今まさに危機に瀕していた。黒いモヤモヤは次々と現れ、輝夜が何度裁きを下して倒しても際限なく現れる。
「あぁ……懲りないお嬢ちゃんだな……」
「あなたがその殺気を消さない限り、かぐやは手を止めませんよ?」
「……この殺気はぁ……消せるもんじゃあねぇんだが……」
状況が拮抗してきた頃、男の背後から声が聞こえてきた。
「おやおや……ウチの子と遊んでくれているのは、一体どこの誰なのかな……?」
「かれんさん!」
かれんと輝夜は適度な距離を保ちつつ、前後から男を挟み込むように位置を取った。
黒いモヤモヤは指示を待っているのか、男の傍らについて浮遊している。
「……お前らぁ……魂をどこに隠したぁ……人間じゃあねぇなぁ……?」
「貴様こそ何者だ。とても人間には見えないが?」
こんな状況でも冷静に、かれんは男を睨みつけた。
「不自然なのはお前達だろうがぁ……」
(不自然? こいつ何を言ってるんだ……?)
悠斗がその意味を考えていると――
「ちょっと! この前の黒いモヤモヤはあんたの仕業⁉」
背中に隠れながらだが、意外な事に莉奈が疑問をぶつけた。
「もう毎回モヤモヤモヤモヤ言いづらいんだけど⁉ 名前とかないわけ⁉」
隠れているとはいえ中々の度胸だ。
「あぁ……? お前らに……関わった覚えはねぇし……名前なんざこいつらにはねぇよぉ……」
「なっ、これだけよく出てくるくせに名前がないなんて……」
「あぁ……仕方ねぇ……よぉ…し……名を与えてやる……今からお前達の名はぁ……〝モヤモヤ〟だぁ……」
―――採用された。
命名〝モヤモヤ〟
「あぁ……ついでのつもりだったんだが……めんどくせぇ……お前らは放っといてもその内くるんだ……離れるぞぉ……」
「待て、お前は何者か答えろ」
「あぁ……俺はナムタル……女王様にこき使われるだけの……哀れな男だ……」
そう言ってナムタルとモヤモヤは黒い霧となり去っていった。
「莉奈すごい……よくあんな事言えたね」
水月は莉奈の度胸に感服したようだ。
「まぁ……なんというか勢いよ、勢い。ていうか名前つけてくれたのはいいけど結局何も変わってないじゃない!」
「またモヤモヤ言うしかないね。でも思ったより聞き分けのいい奴なのかな……?」
確かに水月の言う通り、あの場で命名するとは意外だった。
「あのナムタルってやつ、女王様がどうとか言ってたから……きっと莉奈の女王様気質に負けたんじゃないか?」
「しばくわよ?」
「ホラ、そういうとこー!」
そんなやり取りをしていると、輝夜とかれんが駆け寄ってきた。
「み、みんな大丈夫……だった……?」
「ああ、ありがとな輝夜ちゃん。おかげで助かったよ」
元の白いワンピース姿に戻った輝夜が、お礼を言われて嬉しそうな笑顔を見せた。
「あのナムタルという男、『ついで』と言っていた……狙われている訳ではなさそうだが……」
かれんが難しい顔をして考え込む。
「たまたまかもしれないが、こうも続けて奴らに遭遇する以上、少しでも対抗できる力を身に着けた方がいいな」
「──と言うと?」
悠斗が首を傾げる。
「魔眼と魔力子の使い方……覚えてもらおうか」