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奈落の月  作者: れのぺぱ
第一章 魔眼覚醒
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第6話 誰か知らないけど裁いときますね③

【登場人物紹介】


逢沖あいず 悠斗ゆうと 17歳

本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡されたところから、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。妄想力には自信がある。


七瀬ななせ 水月みずき 17歳

人工魔眼を持つ少女。2100年に起きた出来事で無意識に魔眼を使い、2070年の世界を再構築した。その後、公園で一人泣いていたところを悠斗に助けられ、今は悠斗の家に居候中。


九条くじょう 莉奈りな 17歳

悠斗の幼馴染。大企業社長の娘でお金持ちのお嬢様だが飾る事がなく、割と庶民派。面倒見のいい性格で、悠斗と水月をいつも気にかけている。魔眼持ちのようだが……?


十文字じゅうもんじ かれん 自称20歳

眼科で悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。魔眼の使い方に詳しく、他にもまだ明かしていない素性があるようだ。


きらきら輝夜かぐや 自称14歳

かれんの屋敷に同居している女の子。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い。かれんと同じくまだ謎が多い人物。


「みんなお待たせ」


「どお? ゆっくりできた?」


 お風呂を済ませた水月(みずき)莉奈(りな)が尋ねた。


「うん! すっごく綺麗なお風呂だったよ」


「そうなの? あたしも使わせてもらえばよかったかな──と、それはひとまず置いといて」


 気を遣うような口調で莉奈が話を始める。


「あのね、一つ悠斗(ゆうと)と相談した事があるんだけど……」


「相談?」


「あたしもしばらく悠斗の家に泊まろうかと思うの。その方が水月のフォローもしやすいし。悠斗はオーケーしたけど……もし水月が抵抗あるなら他の方法考えようかなって」


「ううん、莉奈が一緒にいてくれたら嬉しい。わたしはそれでいいよ」


「よかった――でね、お節介かとは思ったんだけど、実は水月に似合いそうな服買ってきて……」


「──わたしに?」


「うん。でもよく考えたらさ、これ着て外出るとその……普通の人には服だけ浮いてるみたいに見えちゃうなって」


「あ、そっか……」


「ごめんね、なんか余計な事しちゃって」


「ううん、そんなことない。ありがとう莉奈、大好き」


 水月のまっすぐな感謝の気持ちに、基本ツンな莉奈が顔を赤くした。


「よし、じゃあ帰ろうか」


 悠斗達は屋敷の前でかれんに挨拶をして屋敷を後にする。


輝夜(かぐや)ちゃーん! みんなをよろしくね~!」


「う……うん! かぐやに任せて!」


 かれんに頼られた輝夜が嬉しそうに意気込み、悠斗達を先導して歩き出した。




 屋敷を出てからは特に危ない事もなく、悠斗と水月が出会った公園の前まで辿り着いた。悠斗がその時の事を思い出しながら歩いていると、急に輝夜が立ち止まる。


「どうしたんだ? 輝夜ちゃん」


「わ、わからないの……この先からね〝死〟の気配が……あ、歩いてくるの……」


 輝夜に引っ張られて公園の物陰に身を隠し、道路の方を伺っているとそれは現れた。


「な、なに? かぐや、あんなの見た事ない……」


「見るのは初めてなのか?」


「うん、何? あれ……」


 そこに現れたのは、先日悠斗達を襲った黒いモヤモヤだった。


「あの黒いモヤモヤ――四体もいるの⁉ それに……」


 莉奈の言葉の続きは、言わなくとも皆に伝わった。


 黒いモヤモヤを引き連れるようにして、一人の男がゆっくりと、気だるそうに歩いている。


 奴らに気付かれないよう背中を向けて息を殺す。


 その男は、少し長めの黒い髪で、男性用の執事服をアレンジしたような服を着ていた。目つきは死んでおり、肌は血が通っていないような青白さだ。


「あぁ……女王様も無茶いうぜぇ……この数の中から見つけて連れ戻してこいなんてぇ……あんだけ入ってきたんだ……もういいじゃねぇかぁ……」


 動作と同じく話し方も気だるそうで、言葉を引きずるようにゆっくりと、重たい声で何かを言っていた。近付いてくるにつれ、男の(まと)う〝死〟の気配によって首を絞められているような息苦しさを感じる。


 ようやく公園を通り過ぎ、なんとかやり過ごしたかと気を抜いた瞬間────


「あぁ……そこに隠れてる奴ら……持って帰れるなら()ってこい」


「――‼」


「ちょっと! あのモヤモヤこっち来る‼」


 水月と莉奈は抱き合って体を震わせていた。


 悠斗が皆を守る方法を必死に模索する。


 ──と、その時。


「かぐやに任せて!」


「え⁉ ちょっ……大丈夫なのか⁉」


 悠斗が止める間も無く、輝夜が黒いモヤモヤの前に飛び出した。


 どこから出したのか、いつの間にか白いワンピースの上に黒いコートを羽織っている。



「裁きの光に告げる――あの者を見極めよ」



 輝夜が右手を上に掲げながら唱えると、天上に現れた光が、まるで雷のように鋭く黒いモヤモヤを貫いた。


「やはり()しき者のようですね」


 光に貫かれた黒いモヤモヤは霧散し消えていく。


 悠斗達は皆、開いた口が塞がらなかった。


(やっぱ魔法少女じゃん……っ⁉ てかこの子も性格変わりすぎだし……今変な事言ったら絶対おれも裁かれる‼)


 黒いモヤモヤ四体を全て消し去ると、輝夜は次の狙いを男に定めた。


「裁きの光よ――闇を斬り裂く(やいば)となれ」


 輝夜が剣を持っているかの如く腕を振るうと、その動きに合わせて十メートル以上離れている男の元に光の刃が現れた。


 だが男はその攻撃を全て(かわ)し、相変わらず死んだような目のまま反撃する様子を見せない。


「しぶといですね……しかし相手は油断しています。今のうちにこれを――」


 輝夜がコートの胸ポケットから何かを取り出した。


 それを見た悠斗が期待の眼差しを向ける。


「もしかしてパワーアップアイテムか⁉」


「いえ、お腹が空いたので……おやつのマシュマロを」


(この子まじめに戦ってるの⁉)


 油断しているのは果たしてどちらなのか。


(かれんさん助けて……‼)



     ◇



 屋敷に残っていたかれんは今、輝夜による裁きの気配を感じて不安に駆られていた。


 その気配が一度ぐらいなら別段心配する必要もないのだが、今回はどうもおかしい。あの輝夜がこうも裁きを連発するなど、今までなかったことだ。


 実はかれんにとっても、黒いモヤモヤを見たのは昨日が初めてである。明確な悪意を感じて斬ってみると軽く倒せたので、何かあっても輝夜一人で対処できると判断していたのだが────


「何か……予想外の出来事でもあったのか?」


 その不安を取り除くべく、かれんは屋敷を出て悠斗達のもとへ向かった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 成る程、一度地球が滅びた世界ですか。 星がウォーズする映画のように、壮大な話ですね(笑)。 そして『戒めの使徒』。 これも厨二心擽るパワーワードですね!
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