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奈落の月  作者: れのぺぱ
第二章 痴情の楽園
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第58話 困った時はてへぺろ☆ですよね③

【主な登場人物】

逢沖あいず 悠斗ゆうと 十七歳

本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。


七瀬ななせ 水月みずき 十七歳

人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。


九条くじょう 莉奈りな 十七歳

悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。


十文字じゅうもんじ かれん 自称二十歳

戒めの使徒。創世(そうせい)六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。


きらきら輝夜かぐや 自称十四歳

戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??


ルーナ(Luna)クレアーレ(Creare) 自称十九歳

戒めの使徒。創世四位〝天体の創造主〟。ラメドに所属し〝神の兵器〟を欲している。


◆シロマロ 二十二歳

ルーナの子分その一。がたいのいい男。


◆クロマロ 二十二歳

ルーナの子分その二。痩せ気味の男。


イリス(Iris)ベラルディ(Berardi) 五歳

預言の館に訪れた女の子。水月曰く、誘拐されるそうだが……?


◆千里眼 年齢不詳

ラメドに所属する人物。ルーナから危険視されている。

 

「アレとはいったい……⁉」


 自信に満ちた莉奈の言葉に悠斗が期待を寄せる。


「とても得難く、そして大切なもの──」


 莉奈が胸元で(てのひら)をぐっと握りしめた。


「富と権力よ!」


(かね)かよ!」


「いいじゃない、こんな時だからこそ、使えるもんは使っとかないとね!」


 否定はしないが、できればここはエモい感じのモノがきて欲しかったものだ。


 そんな悠斗の内心を知ってか知らずか、莉奈はどんどん話を進めていく。


「じゃーあ、お兄さんの名前、教えてくれる?」


「なまえはね、レムスっていうの!」


「レムス君かー、それじゃあレムス君は何歳かな? できれば誕生日もわかるといいんだけど」


「にいにいま、じゅうろくさい」


「十六? けっこう離れてるね……」


「おたんじょうびは……なながつななにち」


「わ! 七夕生まれなんだ! てことは、西暦がウチの玲奈と同じになるから二〇五四年生まれね」


 名前と生年月日は判明した。しかし、だからといって何が解決するというのか、悠斗にはまだ見当もつかない。


「それで何が分かるんだ?」


「ん? レムスの居場所」


「──はい?」


「にいにがどこにいるか、わかるの⁉」


「やったねイリス!」


 水月は全く疑っていないようだが、そんな事があり得るのだろうか。


「いやいや莉奈、そんなのできたらすご過ぎるだろ。幼馴染がチート持ちでしたとか、今更知りたくないんだけど」


「そ、すごいの! と言ってもすごいのはあたしじゃないんだけどね。ま、見てなさいって!」


 莉奈が誰かに電話をかけ始めた。


「──あ、もしもしセバスチャン? ちょっとお願いがあるんだけど──え? ……うん、元気だから心配しないで! でね、実は……例のお父様のアレ、使わせて欲しいんだけど──イイヨネ?」


 この『イイヨネ?』には、有無を言わせぬ圧力が込められている気がしてならない。


「なぁ水月、セバスチャン今脅されてるんじゃねぇの……?」


「だよね……こんなの絶対断れないよ……‼」


 そのあと、莉奈が電話口で何度か頷いただけで、話は思いのほかすんなりとまとまったようだ。


「ありがと♡ 理由と必要な情報は今送るから、よろしくねー」


 電話を切った莉奈が手際よくスマホで情報を入力していく。


「あ・と・は……これを送りつけて……と。────ほい、そーしん! さ、あとはちょっと待つだけで大丈夫かな」


「セバスチャンに何頼んだんだ?」


「ん~、何て言えばいいんだろ……」


 少し考えたあと、莉奈が辺りを見回した。


「近くに人もいないし、こっそり教えるぐらいならいいかな……ホントはダメだけど」


 悠斗達は思わず身を乗り出して莉奈の話に耳を傾けた。本当は知られてはいけないだとか、興味を引かないわけがない。


「今ってほとんどの国で国民一人一人の情報が細かく管理されてるでしょ? その個人情報にはね、数十年前から生体情報も含まれてるらしいの」


「え、じゃあおれも?」


「うん、たぶん生まれた時に細胞を拝借されてるんだと思う。そういう個人情報は当然、国で厳重に管理されてるわけだけど……実はお父様の会社がね、国家間で協力して進めてるプロジェクトに技術提供してて、その運用試験って名目なら個人情報にアクセスできるの」


「あのー莉奈さん? この話、おれら命狙われる案件になったりしない⁉ 大丈夫⁉」


「ふふっ、どうだろねー? もしそうなったら、あたしは悠斗に護ってもらうつもりだけど?」


「わたしもわたしも!」


「イリスも!」


「うぐっ……」


「冗談でも断ったりしないのが、ホントお人好しよねー。っといけない、話がそれちゃった。でね、そのプロジェクトで実用化に向けて進めてるのが、『宇宙からとある粒子を照射して人の居場所を特定する研究』なの」


「……どゆこと?」


「つまり、まず地球全体に向けて宇宙から粒子を照射する。その粒子は物質を透過する性質をもっている。それが人間を透過して生体情報と居場所を記録する。で、国が管理してる個人の生体情報と照らし合わせれば、誰がどこにいるか分かっちゃうってワケ」


 水月が唖然としながら莉奈を見つめている。


「──莉奈、天才なの?」


「あたしじゃなくて研究者の人達が、ね」


 その点については同意しかない。〝努力した天才〟でなければ、そんなもの実現不可能だろう。しかし、悠斗にはどうしても言いたいことが一つあった。


「プライバシーの欠片もないな……⁉」


「そ、だからこんなの完成したって……あんまり知られない方がいいし、本当に必要なときしか使えないようにしとかないとね」


 全くその通りだ。水月がこの技術を知らなかったということは、少なくとも完成してから公にはされていないのだろう。


「あ、セバスチャンから連絡きたみたい。結果のデータは個人で持ち歩くと危ないしすぐに消す。今しか見れないからね?」


 莉奈がスマホの画面をイリスに見せた。そこには特定された人物の顔写真が映っている。


「イリスのお兄さん、この人で合ってる?」


「うん、あってる!」


「えっと、居場所は……ドイツのベルリン、だって」


「イタリアですらないんかい」


「どいつの? ベルりん?」


 イリスはまだ地名をあまり知らないらしい。というか『ベルりん』って誰だ。


「レムス君、明日のお誕生日どうするんだろ?」


「ん~戻れない距離じゃないだろうけど……あれ、玲奈からもなんかきた。ちょっと待ってね」


 玲奈のメッセージに目を通すと、莉奈が何とも言えない表情で画面を見せてくれた。


 そこにはこう書いてある。


『お姉ちゃんあたしこの人知ってる! ドイツでプロポーズしてきた奴だよ!』




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