第55話 幽霊さんでも焦りますよね③
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 十七歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 十七歳
人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 十七歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。
◆十文字 かれん 自称二十歳
戒めの使徒。創世六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。
◆煌々 輝夜 自称十四歳
戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??
◆ルーナ・クレアーレ 自称十九歳
戒めの使徒。創世四位〝天体の創造主〟。ラメドに所属し〝神の兵器〟を欲している。
◆シロマロ 二十二歳
ルーナの子分その一。がたいのいい男。
◆クロマロ 二十二歳
ルーナの子分その二。痩せ気味の男。
◆イリス・ベラルディ 五歳
預言の館に訪れた女の子。水月曰く、誘拐されるそうだが……?
◆千里眼 年齢不詳
ラメドに所属する人物。ルーナから危険視されている。
まるで人形のように整った顔立ちだった。理想を極限まで追求して造られたような完璧な造形。目元にほんの少しかかる前髪は、これまた狙ったように絶妙な長さで整えられている。
そんなモノを持ち合わせて生まれた人間が、目の前に二人並んでいた。
(双子のようにも見えるが……)
注視すれば、そうではないことがわかる。
但し、それは『双子のように限りなく似た顔だから』ではない。『双子では済まされない程に同じ顔だから』だった。
(最早これは、同一人物と言われた方が納得できそうだ。まったく、気味が悪い……)
かれんが構えを取ってから数秒が経過した。しかし相手は手にした剣を構えることなく、その場から動こうとしない。
「おい、戦う気がないのか? それなら武器を置いてこの場を去れ」
その問いかけに右のイケメン一号が答えた。
「それはできません」
続けて左のイケメン2号が説明する。
「あなたが神殿へ向かうのなら、手足を斬って止めるように言われています」
声も口調も同じだった。誰もが憧れるような男らしい声のおかげか、感情を抑えた平坦な話し方でも苛立たずに聞くことができる。
ちなみに、この呼び方は今テキトーに決めたものだ。
「そうか、では私は手足を斬られることになるな。しかし困ったものだ……私の中のね、イケない部分が囁くんだよ……」
見開いた目が、その視線で相手を射抜く。
「邪魔する奴は──斬り刻めとな‼」
かれんが地を駆り空気が揺れた。
一足飛びで敵の横に迫り、流れるような動きでイケメン一号に斬りかかる。
「ほう、これは防ぐのか」
「あなたを止めます」
「やってみろ」
剣を弾くと、かれんの背後にイケメン二号が回り込んできた。
背中を狙う殺気は感じられない──が、間違いなく迫っている攻撃を避けようと、宙を舞って背後に飛ぶ。
空を斬り裂くイケメン二号の剣。
(やりづらいな……この二人、感情が読めない)
しかしこれは既に好機だ。着地に合わせて斬りかかれば、今のイケメン二号では防御が間に合わない。
「ハァッ──‼」
着地してしゃがんだ体勢から素早く斬り上げる。
そして、ガィィン──と響く鈍い音。
「お前……腕に何か仕込んでいるな?」
防御不可能と思われた攻撃を、イケメン二号は背中を向けたまま左腕で受け止めていた。
かれんが一度距離を取って態勢を整える。
「何のことでしょうか」
「とぼけるな──この刀がナマクラでも、普通なら確実に斬っているぞ!」
敵に考える余裕は与えない。
すぐさま刀を構え直し、今度は二人の攻撃を同時に捌きながら立ち回る。
「かれんの奴、相変わらずとんでもない剣の腕をしておるな。あの猛攻を最小限の動作で軽くあしらうとは」
「ルーナ、ちょっと心配してるの……?」
「いいや? あ奴に刀で敵う者など誰もおらぬ。心配するだけ無駄というものじゃ」
敵の動きにも慣れてきた頃だ。
この二人の反応には、どうやら一定のパターンが存在している。
「速度を上げるぞ──」
頃合いを見てかれんが仕掛けに入った。
柄を手離した左手に握られた、もう一振の刀。この程度の相手なら魔力子で拵えたナマクラで十分だ。名刀〝紅雪〟を手にするまでもない。
二刀流で敵を圧倒し、瞬きする間もなく壁際に追い詰める。
「もう終わろうか……‼」
何の迷いもなく、かれんはその刀を振り下ろす────
「二刀流……悲恋の太刀‼」
舞い踊るように回転しながらの二連撃。
袈裟斬りにされたイケメン一号と二号が地面に崩れ落ちる。
「ちょ……お主、やり過ぎではないのか⁉」
ルーナと輝夜が目を見開いて駆け寄ってくる。
「いや、ようやく思い出してね。よく視てみるといい」
「……んん? これはもしや──」
「かぐやも思い出したかも!」
イケメン一号と二号の斬られた体からは機械の部品が見えていた。ショートした回路がバチバチと音を立てている。
「人型アンドロイド〝メルム・アニマ〟だ」
かれんが感覚で付けた呼び名がハマっていたのもこれ故だろう。
「しかしこれは、話が複雑になってしまったな」
「かれん……? このお人形さんたちって、今の世界には……」
「ああ、メルム・アニマに限らず、このクオリティの人型アンドロイド自体が現代ではまだ開発されていないからね」
「二一〇〇年になっても見ておらぬな」
「旧世界を知る者がラメドの深部に関わっているか──?」




