第54話 幽霊さんでも焦りますよね②
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 十七歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 十七歳
人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 十七歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。
◆十文字 かれん 自称二十歳
戒めの使徒。創世六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。
◆煌々 輝夜 自称十四歳
戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??
◆ルーナ・クレアーレ 自称十九歳
戒めの使徒。創世四位〝天体の創造主〟。ラメドに所属し〝神の兵器〟を欲している。
◆シロマロ 二十二歳
ルーナの子分その一。がたいのいい男。
◆クロマロ 二十二歳
ルーナの子分その二。痩せ気味の男。
◆イリス・ベラルディ 五歳
預言の館に訪れた女の子。水月曰く、誘拐されるそうだが……?
◆千里眼 年齢不詳
ラメドに所属する人物。ルーナから危険視されている。
ルーナは今、何と言ったのか。
別に疑うつもりはないが、軽く信じられるものでもない。
「天使が──‼」
「舞い降りた──⁉」
となれば、する事は一つだけだ。
「サイン貰ってくる‼」
「かぐやも! かぐやちゃんへって書いてくれるかな⁉」
かれんと輝夜が連れ立って部屋を出ようと立ち上がった。
「待て待て、何故そうなる⁉ そんな気さくな天使がおったら、妾とてサイン貰っておるわ!」
「え~っ、でも頼んでみなきゃ分かんないし、そんなのいるなら会ってみたいに決まってるじゃん。ね、輝夜ちゃんっ!」
「うん! かぐや一度でいいから天使さんに会ってみたかったの!」
それを聞いたルーナは少し申し訳なさそうだ。
「いや、すまぬな……妾の言い方が悪かった。お主らが期待するような天使とは違っての、何と言い表せばよいやら……その、つまり〝つわもの〟なのじゃよ」
「え……マッチョで天使な神の使いってこと……⁉ 『我、天使、ツヨイ』みたいな?」
「どこの戦闘民族じゃ! ほれ、輝夜ががっかりしておるではないか!」
「かぐや、そんな天使さんイヤ……」
そもそも今の説明では全く想像が付かない。〝つわもの〟と言われても、余計に謎が深まっただけだ。
「そうじゃな、もう少し細かく言うと……」
頭を捻るルーナを見ていると、クイズのヒントを出されているような感覚に陥ってしまう。ルーナが思い浮かべる生き物を、ヒントを元に言い当てる──そんなゲーム。
「全身が真っ白での──」
「驚くほど俊敏じゃった」
「あれは獲物を狙う目に違いない……!」
「シュミの悪い金の腕輪をつけておったぞ」
「あと、毛は生えておらん」
今までのヒントをまとめるとこうなる。
全身白タイツを身に着け、鍛えた体で俊敏に動き回り獲物を狙う、悪趣味なスキンヘッドの……天使。
「天使の要素なくない⁉」
「──? お主、一体どんな天使を思い浮かべておるのじゃ?」
「いや~、人生二度目のツッコミしちゃうぐらい衝撃的な天使だったよー?」
「そんなのいたら、かぐや泣いちゃうかも」
「ふむ、まあよい。とにかく危険なのじゃ……気軽に会いに行くような存在ではない」
やれやれとでも言いたげな様子でルーナは腰に手を当てている。
「とはいえな、ここから出ること自体は賛成しておるぞ?」
「……ルーナ、やっぱり心配なんでしょ~」
「まぁ……多少は、ほんの少しぐらいなら……心配してやらんでもないかと思うとるだけじゃ」
ルーナがきまり悪そうに目を逸らした。
それを見たかれんの方は、ニヤニヤしてしまうのを押さえられずにいる。
「ラメドではなく妾を慕ってくれておるし、あ奴ら口は悪いが気のいい奴らじゃからのぉ」
「はいはい、それじゃーさっさと強行突破しにいくよ~‼」
「ルーナ、これあげる!」
輝夜が手渡したのは、食べずに我慢していた大切なマシュマロさんだった。
「これ食べたら元気でるんだよ?」
「──すまぬな、礼を言おう」
「いいってことよ!」
嬉しそうに「えっへん!」と笑ってみせる輝夜の笑顔は、マシュマロさんよりもよっぽど効き目がありそうだ。
シャン────
かれんの刀が鋼鉄の柵を斬り裂き、まるで鈴のような音色を奏でた。
「──お下がりください、千里眼様」
異変に気付いた従者の男が二人、主を守ろうとかれん達の前に立ちはだかる。
手にしたのは古風な西欧の両刃剣だ。
「私が相手をしよう、ルーナの戦い方はこの場所に向いていないからね」
「ほう、覚えておったのか? その二重人格も相変わらずじゃな」
「これは──そういうのではないと何度も言っただろう? モタモタしていると千里眼が逃げてしまうぞ」
「あ奴のことは放っておいて構わぬ」
そう言うと、ルーナが千里眼に向けて声を張った。
「世話になったな千里眼殿! あのイヤリングはくれてやるでな、大切にするがよいぞ!」
ルーナの言葉は届いている筈だが、千里眼はそれに対して何も反応しない。代わりに従者の耳元で何かを囁くと、踵を返してこの場を去っていった。
「……相変わらずつまらぬ男じゃ」
「いいのか? 捕えれば何かしら情報を得られただろうに」
「よいよい、それよりもシロマロとクロマロの方が心配でな。頼んだぞ?」
「言われなくても!」
威勢よく刀を構えるかれん。
従者の方も深く被っていた外套のフードを上げて戦闘態勢を取る。
一瞬で終わらせるつもりだった──しかし、初めて見る二人の顔にかれんは思考を奪われてしまう。
「二人共、顔が同じ──⁉」




