第40話 お嬢様だからってナメないでよね③
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 十七歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 十七歳
人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 十七歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。
◆十文字 かれん 自称二十歳
戒めの使徒。創世六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。
◆煌々 輝夜 自称十四歳
戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??
◆ルーナ・クレアーレ 創世四位〝天体の創造主〟
〝神の兵器〟を欲しているようだが、その目的は一体……?
◆シロマロ 二十二歳
ルーナの子分その一。がたいのいい男。
◆クロマロ 二十二歳
ルーナの子分その二。痩せ気味の男。
「お嬢様コワイ」
「お嬢様……ぎゃはは……はァ……」
「まあ、お前ら命があるだけよかった……んじゃないか?」
「ちょっと悠斗、あたしが殺そうとしたみたいに言わないでよ……最初から当てようなんて思ってないんだから」
シロマロとクロマロは間一髪〝神殺槍〟の手前で止まる事ができた。しかし〝ルーナにお届け大作戦〟は失敗に終わり、今は莉奈の前で正座させられている。ちなみに大切な事なのであえて言っておくが、二人はフリフリの裸エプロン姿のままだ。
悠斗達は結局エレベーターに乗り込み地下を目指していた。あれだけの騒ぎを起こした以上、あそこに留まれば警察や人々の目に留まり調査に支障が出ると判断したからだ。
それともう一つ────
「莉奈、かれんさんやっぱり……連絡つかない」
水月がスマホの画面を見つめながら心配そうな顔を見せた。
「そっか──ねぇ、あんた達が言う『ルーナ様』ってルーナ・クレアーレの事?」
「あァ⁉ オウオウねーちゃん、俺がそう簡単に口を割ると思っ……」
威勢を取り戻して悪態をつき始めたシロマロだったが、莉奈がスッとロザリオを取り出してチラつかせると、ビクついてピシィっと姿勢を正した。
「……思っていやがりますですかねぇ……?」
「まったく、下手なウソでもいいから『知らない』とか言えばいいのに……バカ正直なんだから。で? そのルーナ様とはどういう関係なの?」
「あー、神が隠した秘蔵のコレクションがすげぇから拝みたいだけの関係だな」
「え? 何ソレ……」
予想外に間抜けな答えが返ってきて莉奈は拍子抜けしたようだった。
「まあいっか。じゃあ──次はクロちゃん、そのルーナはどこにいるの?」
「ギャハハハ! 教えるワケね……」
莉奈がロザリオをスッとちらつかせた。
「地下五十階です」
クロマロがキリッとした表情で答えた。
「どうすんだよクロマロ……!」
「どうってそりゃおめェ……」
二人が割と聞こえる声でヒソヒソ話を始めた。
「でもよ、元々ルーナ様には拠点まで連れてこいって言われてたじゃねえか。このまま俺たちが連れて行かれりゃあ結果は同じだぜ?」
「あ? それもそうだな──たまにはイイこと言うじゃねぇか、ギャハハハ!」
「もっと褒めやがれぃバカヤロウっ! それにルーナ様ならもうコイツらの仲間をとっ捕まえてるんじゃねぇか?」
「はぁ⁉ お前ら今なんて……⁉」
「あ、やべぇ」
「どういう事⁉ ルーナって戒めの使徒でしょ⁉ なのに何で……」
シロマロの口にした不穏な言葉が悠斗たちの気持ちを急き立てた。
「ねぇユート! 急いで探しにいかなきゃ!」
「そうだな……急ごう!」
◇
「ルーナ様大変だァ‼」
「どうしたのだ、妾がおらぬ間に何かあったか?」
ルーナは地下五十階にあるもう一つの拠点に到着し、やっと一息つけると気を緩めたところだった。しかし到着早々、部下の一人がルーナを見るなり大慌てで駆け寄ってきたのだ。
「警戒するように言われてた〝千里眼〟がここに……‼」
「……そうか、奴は今どこにおるのだ?」
「奥の部屋に通しました」
ルーナは「ふむ」と頷き、少し考えてから再び歩みを進めた。
「お主はここで待っているがよい。妾一人で話をしてくるでな」
毅然とした態度を崩さないルーナだが、内心穏やかではいられなかった。
(これはどうも……雲行きがあやしくなってきたようじゃ)