第38話 お嬢様だからってナメないでよね①
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 十七歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 十七歳
人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 十七歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。
◆十文字 かれん 自称二十歳
戒めの使徒。創世六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。
◆煌々 輝夜 自称十四歳
戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??
◆ルーナ・クレアーレ 創世四位〝天体の創造主〟
〝神の兵器〟を欲しているようだが、その目的は一体……?
「オウオウ兄ちゃんよォ! 大人しく連れ去られやがれぃ!」
「んなもん暴れるに決まってんだろ! ……こんのバカヂカラぁぁぁぁ!」
「ギャハハハハ! 楽勝だったなァおい!」
「おうよ! このままエレレーターまで走り抜けるぜぇ!」
「ちげえよバカ! エレメーターだ」
「あーそうだったか? エレメーチャーじゃねぇの?」
「全部ち・が・う・ん・だ・よ‼ いいから離せ──‼」
「ギャハハハ! 名前なんざ関係ねぇ! そうだろシロマロぉ‼」
「たりめーだクロマロぉ‼ オウオウどけどけどきやがれェい!」
「ねぇユート!」
「どうした⁉ 大丈夫か水月!」
「コイツ骨がゴツゴツしてて担がれ心地悪い……」
「あ、うん……思ったより平気そうな」
そんな水月を見ていると、悠斗は次第に落ち着きを取り戻してきた。この状況をどう切り抜けるのか──冷静になって考え始めた時、シロマロの言葉が悠斗の気を引いた。
「オウオウあぶねーぞピンク色のねーちゃんよォ!」
(ピンク色のねーちゃんってまさか……)
期待を込めて振り向くと、予想通りの人物がそこにいた。
「莉奈‼」
「──え?」
「莉ぃぃぃぃ奈ぁぁぁぁ‼ 助けてー‼」
「キャっ‼」
莉奈が咄嗟に身をかわしてクロマロとぶつかりそうになるのを避けた。
「すまねぇなねーちゃん! ま、謝らねーけどなァ! ギャハハハハ!」
「……悠斗⁉ 水月‼ 何やってんのよ⁉」
「莉奈! こいつらエレベーターに向かってる!」
「「……ア? 何だソレ?」」
シロマロとクロマロが同時に訊き返してきた。
「お前らマジでバカなの⁉」
騒ぎながら猛スピードで走り去る背中を見つめ、莉奈が深いため息をついた。
「ハァ……よく分かんないけど、やっぱ追いかけるしかないか!」
「ねぇユート! 莉奈が見えなくなっちゃう!」
「大丈夫だ! 莉奈ならこれぐらい問題ない!」
「え⁉ それってどういう……」
「ほら、もう来たぞ──」
「待ぁぁぁぁぁぁァァてぇぇぇぇぇぇェェ‼」
声のする方へ視線を向けると、水月は信じられないといった風に目を丸くした。
「莉奈⁉ すっっっごい迅いよ⁉」
「クロマロ! さっきのピンク色……追いかけてきやがる!」
「ナメんじゃないわよ‼ こっちは伊達に十七年間お嬢様やってないんだからね‼」
「ハァア⁉ ──あの女めちゃくちゃ迅ェじゃねェか‼」
二人がビビり始めたのを察して悠斗が追い打ちをかけに出た。
「あ、言い忘れてたけど、あいつ運動神経バツグンだから」
「やべぇぞ! あの女お嬢様だバカヤロウ!」
「ギャハハハ! お嬢様はやべぇなァ!」
「……ねぇ、おれの話聞いてる? てかビビるとこソコなの⁉」
莉奈の猛追により、その差はどんどん縮まっている。
うまくいけばエレベーター到達前にこの場を切り抜けられるかもしれない。
「チャンスだ水月! おれ達でこいつらを足止めしよう!」
「足止めってどうやって……攻撃するの⁉」
「いや、まだ素性がハッキリしないからな! まあ攻撃しなくてもできるだろ!」
「できるの⁉ そんなこと──」
「オウオウ兄ちゃん達よォ! イチャイチャしてねェで黙りやがれぃバカヤロウ!」
「うるせぇ! いい加減止まりやがれぃバカヤロウ!」
「ユート口調が! うつってるうつってる!」
「やべ、なんて影響力だコイツ……‼ いいか水月‼」
「何──⁉」
「今から魔眼でコイツらを止める‼」