第37話 マシュマロさんも生きてるんですよね③
【主な登場人物】
◆逢沖 悠斗 十七歳
本作の主人公。眼科で『診断結果 魔眼覚醒』と言い渡され、世界の存亡をかけた戦いに巻き込まれていく。
◆七瀬 水月 十七歳
人工魔眼持ちの少女。〝天理逆行〟を引き起こし、2070年の世界を再構築した。今は悠斗の家に居候中。
◆九条 莉奈 十七歳
悠斗の幼馴染。お金持ちのお嬢様だが割と庶民派で面倒見のいい性格。〝秘跡の魔眼〟の持ち主。
◆十文字 かれん 自称二十歳
戒めの使徒。創世六位〝人間の創造主〟。悠斗に『診断結果 魔眼覚醒』と告げた人物。
◆煌々 輝夜 自称十四歳
戒めの使徒。創世一位〝光の創造主〟。恥ずかしがりやだが、戦うと結構強い…??
◆ルーナ・クレアーレ 創世四位〝天体の創造主〟
〝神の兵器〟を欲しているようだが、その目的は一体……?
かれんは輝夜と共に拠点の一室へと案内された。
その部屋はルーナが拠点にしているとは思えないほど狭く散らかっていて、空気は淀んで埃っぽい。窓がないのに加え、どうやら換気の機能がうまく働いていないようだ。照明もあるにはあるが、その光は弱々しく部屋の中は薄暗い。
そもそもこの建物自体が簡易的な造りになっていて、地下開発の作業員が寝泊まりする為のものをそのまま使い続けている、そんな印象だ。
「妾はもてなしの準備をしてくるでな、すまぬが少し空けるぞ?」
部屋を出たルーナが扉を閉め、足音が遠ざかっていく──それを確認してからかれんが口を開いた。
「輝夜、ルーナをどう思う?」
「どうって、かぐやは……」
色々な意味に取れる問いかけをされて、輝夜は戸惑い答えあぐねているようだ。
しかし、戸惑うという事はつまり──そういう事なのだろう。
────ゴゴォォォォン‼
その時、地鳴りと共に建物の外から大きな音が聞こえてきた。
「嫌な予感がするな」
急いで建物から出た二人が目にしたのは、この広い空間の天井まで届く堅牢な柵だった。
「どうやら……天井から降りてきた柵で、私達はこの拠点ごと閉じ込められたらしい」
拠点はこの空間の奥まった場所に建てられている。つまり拠点前方の柵以外は全て分厚い地層の壁だ。
柵の外側にいる人影に向けて、かれんは声を張った。
「ルーナ‼」
「おや? これはどうしたことか。お主ら、そこから出られんではないか」
ワザとらしくとぼけて近づいてくるルーナをかれんが睨みつける。
「お~怖い怖い、まるで人斬り様の眼じゃあ」
「何のつもりだ?」
「すまぬが……これがラメドのやり方での。しばらくそこで大人しくしておれ」
「かれん、この程度の柵、刀で斬って脱出しましょう」
「……いや、少し様子を見たい。中々実態を見せないラメドのやり方を見せて貰おうじゃないか──輝夜が嫌でなければ……だが」
「かぐやは構いませんよ? かれんがそれでいいのなら」
ルーナは「フフ」と軽く笑って踵を返すと、男を数人引き連れその場を離れた。
「さて、シロマロとクロマロは上手くやっておるだろうか──」
◇
行動を別にしていた悠斗達は、カミエシ地下大聖堂のある地下三十階から地上へ向けて行動していた。一人ずつ手分けして聞き込みを進め、地下二十階にある地下中央公園の〝痴情の噴水〟前で落ち合う予定になっている。
悠斗は噴水前で水月と既に合流し、莉奈も今ここへ向かっているそうだ。
「水月は何か手掛かり見つけたか?」
「ううん、全然──遺跡とかに興味ある人自体見つからないよ」
「そうだよな……やっぱ地上に近いほど観光目的の人が多いってことか?」
二人して腕組みしながら「う~ん……」と考え込んでいると、横から突然知らない男が話しかけてきた。
「──よぉ! そこのお二人さん! ちょっと俺らに捕まっちまってくれやがれぃ! ……いけね、捕まっちまってはくれませんかねぇ?」
がたいのいい男が変な言葉遣いでおかしな事を訊いてきた。
「何だ? お前ら」
水月を背後に庇って、悠斗が男を睨みつける。
すると、その横にいる痩せ気味の男が笑い始めた。
「ギャハハハ! 名乗るワケにはいかねえのさァ! なぁシロマロ!」
「おま、俺がシロマロってバレたらお前がクロマロってこともバレちまうだろ⁉ シロと言えばクロだろうがバカヤロウ!」
とりあえず、ガタイのいい方がシロマロで、痩せ気味の方がクロマロ、そして二人ともバカなのはわかった。
(こんな奴らに構ってたらロクなことなさそうだし……隙見て逃げるか)
悠斗が適当な場所をビシィッと指差した。
「な、なんだあれはァ‼」
「「ァア⁉」」
シロマロとクロマロが同時に後ろを振り向き、指差された方を見た。
(よし、バカで助かった!)
「水月! 今の内に……」
「アレってどれ⁉ ユート⁉ ねぇってば!」
「水月違うから! フェイクだよフェイク!」
悠斗の敗因──思ってたより水月が素直だった。
「オイオイ兄ちゃんよォ……」
モタモタしていると悠斗の体がふわっと持ち上げられて、いつの間にかシロマロの肩に担がれていた。
「ウソついちゃいけねえよなぁ!」
「何すんだこいつ……‼」
「──ちょっと! 離してってば‼」
「ギャハハハ! 大人しく担がれやがれ!」
「オイお前! 水月を離せ!」
「やなこったァ! このままトンずらだぜェ!」
人々の視線をかっさらいながら、シロマロとクロマロは走ってその場を去っていった。




